上 下
426 / 545
最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

第二十四話 神殺し、再び(26)

しおりを挟む
 これを敵は大盾で防御。
 だが、次の着地先であったはずの木の枝は光の刃の嵐によって斬り飛ばされていた。 
 なすすべも無く、重力のままに落下。
 その落下地点にデュランは走り込み、

「シィィッヤ!」

 落ちてきた敵を拾い上げるように光る大剣を振り上げた。 
 この一撃に対し、敵は大盾を構えたが、

「っ!」

 その一撃は落下中という不安定な姿勢で受け止めるにはあまりにも重く豪快すぎた。
 直撃と同時に刃から魔力が放たれ、大盾を弾き飛ばす。
 大盾を弾いてなお勢いは衰えず、武骨な刃は敵を縦に両断した。
 同時に放たれた巨大な三日月が敵の真後ろにあった木に直撃し、砕けて光の嵐と化す。
 その光がデュランを照らし、降り注ぐ血の雨と混じって薄赤いカーテンとなった。
 直後、

「危ない!」

 アルフレッドの警告の声が響いた。
 それよりも数瞬早くデュランは地を蹴っていた。
 あまりにも派手な登場。ゆえに敵の攻撃意識が一斉にデュランに集まったのだ。
 それを感じ取ったデュランは赤いカーテンを振り払うように走り出した。
 弾き飛ばした大盾に向かって手を伸ばす。
 直後に銃声がデュランに向かって響いた。
 拾った大盾から火花が散る。
 銃声は止まらない。絶え間の無い集中射撃。
 しかしデュランは木の裏で足を止めたりはしなかった。
 その理由はアルフレッドを守っている大盾兵の一人が叫んだ。

「アイツが何か仕掛けてくるぞ!」

 大盾兵は攻撃意識を感じ取ったわけでは無かったが、それはそうとしか見えない動きだった。
 大神官の上にいたヨグ=ソトースが少し前に出てきたからだ。
 そしてヨグ=ソトースはマントのように体に巻き付けていた羽を大きく開いた。

「「「……っ!」」」

 そしてそのマントの裏側を見た大盾兵達はみな怖気を抱いた。
 マントの裏側には大量の人の顔が隙間無く並んでいた。
 絶望した顔、恍惚とした顔、怒りに荒ぶる顔など、その表情は様々。
 しかし穏やかな顔は一つも無い。
 どれもこれも激しく異常な表情をしている。
 そしてその顔はすべて発光していた。
 だからその顔が抱いている感情が波となって伝わってきていた。
 吐き気をもよおしそうな感覚だが、頭上にいるドラゴン達が様々な波を放って相殺してくれている。だからもよおしそうな程度で済んでいる。
 後方にいるデカブツと同じ類の攻撃だろうが、この程度の規模ならば問題無い、大盾兵達はそう思った。
 しかしそれは甘すぎる考えであった。

「「「!」」」
 
 顔はもがき苦しむようにうごめき始め、そして次々と飛び出し始めた。
しおりを挟む

処理中です...