上 下
495 / 545
最終章 そして戦士達は人類の未来のための戦いに挑む

第二十五話 愛を讃えよ(29)

しおりを挟む

   ◆◆◆

 アゼルフスが倒されたことはすぐにクトゥグアに伝わった。
 アゼルフスは手間をかけて作り上げた強者。戦力的損失は小さくない。
 が、

(鍵が誤作動を起こしたか……しかし大事に至らなかったのは幸いか)

 クトゥグアの意識は別のところに注がれていた。
 作業しながらクトゥグアは安堵していた。

(やはり暗号化を含む安全装置をつけるべきだったか? ……しかしこの仕掛けにおいて最も重要なのは速さ。この事故をもってしてもその確信と優先性は揺るがない)

 そんなことを考えているうちに作業は終わった。
 クトゥグアはそのことをヘルハルトに伝えた。

“終わったぞ”

 これに、ヘルハルトは声を上げた。

“ようやくか!”

 そのやる気と力強さに対し、クトゥグアは正反対と言える淡々とした調子で言った。

“この武装の使い方はすでに思考回路に直結済みだ。すぐにでも手足のように使えるはず。だが、念のため突撃する前に確認しておくように”

 クトゥグアはそう忠告したが、

“わかった!”

 ヘルハルトは本当にわかっているのかどうか怪しい返事だけを返し、すぐさま突撃を開始した。

   ◆◆◆

「巨人が来るぞ! 迎撃しろ!」 

 森にルイスの声が響き渡る。
 三頭の巨大ドラゴン達は即座にその指示に従った。
 巨大光弾を練成し、近づいてくる巨人ヘルハルトのほうに向ける。
 そして三頭は一斉に光弾を放った。
 対し、ヘルハルトは足を止めた。
 横に回避? いや、違った。
 ヘルハルトは光弾を掴み止めようとするかのように、右手を前へ突き出した。
 いや、突き出された時点でそれは手では無かった。変形し始めていた。
 それは太い筒であった。
 太さを維持したまま長く長く伸びていく。
 それを見た誰かが思った。
 あれは銃だ、と。
 成形はある長さで止まり、そして銃身は銀色に輝き始めた。
 内部の空洞にでは無い。銃身そのものに魔力がめぐらされている。
 何のために?
 その答えも誰かが思った。
 光魔法同士の反発力を加速に使うためだ、と。
 そして既に射程内だ、と。
 だからルイスは叫んだ。

「避けろ!」
しおりを挟む

処理中です...