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第六章 アランの力は遂に一つの頂点に
第四十六話 暴風が如く(3)
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「ぐうううっ!」
走る女に容赦なくアランの左手から生まれた赤い蛇が食らい付く。
光る盾で受けているが、伝わる熱が容赦無くその身を焦がす。
そこへさらに右手の刀による三日月の追撃が加わる。
これは受けられない。反復横跳びの要領で左右に鋭く進路を変更して回避する。
しかし蛇は食らいついたまま離れない。完全に移動を読まれている。
それはすなわち、至近距離になれば三日月も必中になるということ。
既に後一度の大きな踏み込みで刃が届く距離。
つまり、次が勝負どころ。
そう判断した女は、
「疾ッ!」
気勢と共に進路を一本の直線に変えた。
同時に、アランの刀から三日月が放たれる。
合わせ方、狙い共に完璧。
三日月は避けられる。しかし濁流は回避不能。
であったが、直後に女は叫んだ。
(避けられないのであれば!)
受ける? それは違う。足を止めては意味が無いのだ。
高速演算による緩慢とした時の流れの中で心の声を響かせながら、剣を握る手に力を、魔力を漲らせる。
そして女はその答えを見せた。
それはアランと同じ三日月。
これが女の答え。すなわち相殺狙い。
そして、女が放ったこの三日月もまた完璧であった。
二人の動きは、完璧に対称であった。
まるでアランが鏡に向かって三日月を放ったかのように。
動作、放たれた三日月の大きさ、速度、軌道、その全てが鏡合わせ。
鏡に吸い込まれるかのように、寸分違わず二つの三日月がぶつかり合う。
そして生まれた濁流もまた然り。
鏡合わせとなった濁流、すなわち完璧な対称性を持った濁流は、上から見ればまるで一輪の花のようであった。
まるで白く輝くつぼみが開いたかのように。
「雄ォ!」
そして女はその白い芸術に向かって叫びながら飛び込んだ。
まるで花に包まれようとするかのように。
鋭い花弁が、花びらが女の体に赤い線を引いていく。
だが、問題は無いことは分かっている。致命傷にはならないことは計算済みだ。だから飛び込めた。
そして女は、
「ォォ雄ッ!」
叫び声をそのまま叩きつけるかのように、アランに向かって斬りかかった。
その叫びにアランは、
「ォ応ッ!」
応えると同時に一閃。
二つの刃がぶつかり合う。
その音を合図に再び始まる斬撃の応酬。
突き、袈裟、唐竹、逆風、なぎ払い、様々な型が、様々な形で交錯する。
されど、その交錯の繰り返しに速さは無い。
女の手は依然一撃離脱。
その距離が変わっただけだ。
濁流を撃たれ無い程度に小さく後退して反撃をやり過ごし、すぐにまた踏み込む、その繰り返し。
読み合いで圧倒しているのは依然アラン。
女はいまだに解読出来ていない。
だが、女は新たな事実を掴んでいた。
アランが斬撃を放つ際、「機械的な動作」を時々行うようになったのだ。
ある単語、信号を切っ掛けとして、いくつかの魂が反応して行動を起こす、その流れ自体はこれまでとあまり変わらないが、それがあまりに杓子定規であることが何度かあったのだ。
どの魂が反応するのか、そして行動する順番と時間、その際にやり取りされる信号と単語、それら全てが完全に同じになっていることがある。
だから「機械的」だと思った。
もしかしたら、本当にそうなのかもしれない。計算速度で圧倒されている今の自分の切り替え直後のように、隙があるのかもしれない。
これも、確かめる手は一つ。
「破ッ!」
その時が来るまで斬り合うしか無い。
こちらの特定の動作に反応して行われている可能性など、様々ある。しかし情報が無い現状はとにかく動き、動かすしかない。
「でぇや!」「せぇや!」
気勢と共に剣閃が交錯する。
幾重にも折り重なる光の線。
されど、その時は来ない。
そうなった理由は明らかに一つ。
(思考を読まれた?)
そしてそれを機にその手を一切使わなくなった、ということは、
(警戒している? それはつまり、)
弱点であるということを晒したようなもの。
(だが、)
女の疑問は続く。
(なぜ、この状況でそんな弱い手を使った?)
この苛烈な命のやり取りの中で、あえて弱い選択肢などを選ぶ必要性など――
(いや、)
一つだけある、と、女は気付いた。
(もしや、)
今の私と「同じ」なのでは? と。
当然答えは返って来ない。相手の心も読めない。
これを確かめる手も、やはり一つ。
「疾ッ!」
動き、そして相手を動かす。つまり、これまでと何も変わらないということ。
そしてその効果は存外早く表れた。
女はそれを言葉にした。
(アランの中にいる魂達の活動が、)
星々の輝きが鈍くなっているのだ。
そして女は叫んだ。
(間違い無い!)と。
つまり、これは最終奥義と同じなのだ。
使う臓器が違うだけ。
私は工夫によってその限界活動時間を延ばした。
しかしその習得には月日が必要だった。
だが、今のアランはどうだ?
アランにはそんな時間は無かった。完全な一発本番だ。
つまり、この戦いの決着を左右するものは、
(技の「効率化」が出来ているか否か!)
錬度のぶつけ合い、それに気付いた女は、
(シャロン!)
もう一人の自分を呼んだ。
よくよく考えてみれば、女が人格を分けているのも同じ理由。
女は脳の機能、回路の多くを魂で補っている。ゆえに常に魂の力を消費している。
一人でなんでも出来る万能型の戦闘用人格を作ろうとしたことは当然ある。が、消耗が重く、実現出来なかったのだ。
(だから私は――)
女がその言葉を紡いだ直後、シャロンが起動し、二人の声は重なった。
((だから私達は二人に別れた))
走る女に容赦なくアランの左手から生まれた赤い蛇が食らい付く。
光る盾で受けているが、伝わる熱が容赦無くその身を焦がす。
そこへさらに右手の刀による三日月の追撃が加わる。
これは受けられない。反復横跳びの要領で左右に鋭く進路を変更して回避する。
しかし蛇は食らいついたまま離れない。完全に移動を読まれている。
それはすなわち、至近距離になれば三日月も必中になるということ。
既に後一度の大きな踏み込みで刃が届く距離。
つまり、次が勝負どころ。
そう判断した女は、
「疾ッ!」
気勢と共に進路を一本の直線に変えた。
同時に、アランの刀から三日月が放たれる。
合わせ方、狙い共に完璧。
三日月は避けられる。しかし濁流は回避不能。
であったが、直後に女は叫んだ。
(避けられないのであれば!)
受ける? それは違う。足を止めては意味が無いのだ。
高速演算による緩慢とした時の流れの中で心の声を響かせながら、剣を握る手に力を、魔力を漲らせる。
そして女はその答えを見せた。
それはアランと同じ三日月。
これが女の答え。すなわち相殺狙い。
そして、女が放ったこの三日月もまた完璧であった。
二人の動きは、完璧に対称であった。
まるでアランが鏡に向かって三日月を放ったかのように。
動作、放たれた三日月の大きさ、速度、軌道、その全てが鏡合わせ。
鏡に吸い込まれるかのように、寸分違わず二つの三日月がぶつかり合う。
そして生まれた濁流もまた然り。
鏡合わせとなった濁流、すなわち完璧な対称性を持った濁流は、上から見ればまるで一輪の花のようであった。
まるで白く輝くつぼみが開いたかのように。
「雄ォ!」
そして女はその白い芸術に向かって叫びながら飛び込んだ。
まるで花に包まれようとするかのように。
鋭い花弁が、花びらが女の体に赤い線を引いていく。
だが、問題は無いことは分かっている。致命傷にはならないことは計算済みだ。だから飛び込めた。
そして女は、
「ォォ雄ッ!」
叫び声をそのまま叩きつけるかのように、アランに向かって斬りかかった。
その叫びにアランは、
「ォ応ッ!」
応えると同時に一閃。
二つの刃がぶつかり合う。
その音を合図に再び始まる斬撃の応酬。
突き、袈裟、唐竹、逆風、なぎ払い、様々な型が、様々な形で交錯する。
されど、その交錯の繰り返しに速さは無い。
女の手は依然一撃離脱。
その距離が変わっただけだ。
濁流を撃たれ無い程度に小さく後退して反撃をやり過ごし、すぐにまた踏み込む、その繰り返し。
読み合いで圧倒しているのは依然アラン。
女はいまだに解読出来ていない。
だが、女は新たな事実を掴んでいた。
アランが斬撃を放つ際、「機械的な動作」を時々行うようになったのだ。
ある単語、信号を切っ掛けとして、いくつかの魂が反応して行動を起こす、その流れ自体はこれまでとあまり変わらないが、それがあまりに杓子定規であることが何度かあったのだ。
どの魂が反応するのか、そして行動する順番と時間、その際にやり取りされる信号と単語、それら全てが完全に同じになっていることがある。
だから「機械的」だと思った。
もしかしたら、本当にそうなのかもしれない。計算速度で圧倒されている今の自分の切り替え直後のように、隙があるのかもしれない。
これも、確かめる手は一つ。
「破ッ!」
その時が来るまで斬り合うしか無い。
こちらの特定の動作に反応して行われている可能性など、様々ある。しかし情報が無い現状はとにかく動き、動かすしかない。
「でぇや!」「せぇや!」
気勢と共に剣閃が交錯する。
幾重にも折り重なる光の線。
されど、その時は来ない。
そうなった理由は明らかに一つ。
(思考を読まれた?)
そしてそれを機にその手を一切使わなくなった、ということは、
(警戒している? それはつまり、)
弱点であるということを晒したようなもの。
(だが、)
女の疑問は続く。
(なぜ、この状況でそんな弱い手を使った?)
この苛烈な命のやり取りの中で、あえて弱い選択肢などを選ぶ必要性など――
(いや、)
一つだけある、と、女は気付いた。
(もしや、)
今の私と「同じ」なのでは? と。
当然答えは返って来ない。相手の心も読めない。
これを確かめる手も、やはり一つ。
「疾ッ!」
動き、そして相手を動かす。つまり、これまでと何も変わらないということ。
そしてその効果は存外早く表れた。
女はそれを言葉にした。
(アランの中にいる魂達の活動が、)
星々の輝きが鈍くなっているのだ。
そして女は叫んだ。
(間違い無い!)と。
つまり、これは最終奥義と同じなのだ。
使う臓器が違うだけ。
私は工夫によってその限界活動時間を延ばした。
しかしその習得には月日が必要だった。
だが、今のアランはどうだ?
アランにはそんな時間は無かった。完全な一発本番だ。
つまり、この戦いの決着を左右するものは、
(技の「効率化」が出来ているか否か!)
錬度のぶつけ合い、それに気付いた女は、
(シャロン!)
もう一人の自分を呼んだ。
よくよく考えてみれば、女が人格を分けているのも同じ理由。
女は脳の機能、回路の多くを魂で補っている。ゆえに常に魂の力を消費している。
一人でなんでも出来る万能型の戦闘用人格を作ろうとしたことは当然ある。が、消耗が重く、実現出来なかったのだ。
(だから私は――)
女がその言葉を紡いだ直後、シャロンが起動し、二人の声は重なった。
((だから私達は二人に別れた))
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