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Ep.1 調査隊の船から回収した記録(7)

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   ◆◆◆

 声の発生源、それは物置部屋と思わしきドアの向こうからであった。
 貼り付けられている札には「用具置き場」と書かれている。
 ランベルトはそのドアの前で手信号を使って二人に指示を出した。
 レイモンドがドアの真横に張り付き、シェリーがランベルトに並んで銃を構える。
 そしてレイモンドは静かにドアノブに手をかけ、もう片方の手を大きく開いて二人のほうに向けた。
 それは「5」を意味していた。
 レイモンドが指を一つ折ってカウントを「4」に進ませる。
 さらにもう一本。3、2、1、

「両手を見えるように上げてひざまずけ!」

 レイモンドがドアを開けると同時に、ランベルトは叫んだ。
 しかしそこには、叫ぶにふさわしい脅威の姿は無かった。
 いたのは、床に倒れたままうめき声を漏らす一人の男だけだった。
 少し大きめのクローゼットと呼べる程度の広さ、ゆえに安全確認は即座に完了し、ランベルトはマイクの向こうにいる隊長に対して声を上げた。

「生存者を一名発見!」

 ヘルメットに装備されているカメラから同じものが見えているゆえに、隊長は即座に尋ねた。

“容態は?”

 それに応えるべく、シェリーが男のそばに駆け寄る。
 そして男の体を軽く調べた後、シェリーは答えた。

「目だった外傷は見当たりません。ですが……」

“どうした?”

 シェリーは男の腕をマッサージするように触りながら答えた。

「筋肉が弛緩(しかん)しています」

 これにランベルトが反応した。

「神経毒か?」

 毒、正解だと思えるその推測に、レイモンドがさらなる推測を重ねた。

「ってことは、化学兵器が使われたんですかね?」

 これがテロによるものだと考えるならばそうかもしれない。
 だが、その考え方だと一つの疑問が浮かぶ。
 なぜこんな殺傷力の低い毒を使ったのか? という点だ。
 あえて住人を生かす理由は今のところ思いつかない。自分の仕事の成果を見せたがる異常犯の仕業とも思えない。
 情報が足りない、ゆえに隊長は仕事を進ませるために無線で指示を出した。

“それを調べるためにも検査が必要だ。シェリー、小型艇でその生存者をこちらに連れてきてくれ。二人はドローンを使ってバリケードの奥の調査を続行してくれ”

 これに三人は同時に「「「了解」」」と答え、各々の仕事にとりかかった。

 だが、シェリーは気付けなかった。後頭部のそれに。
 それは、やや長めの髪の下に隠れていた。
 まるで大きなクワガタかムカデにでも噛まれたかのような、二つ並んだ丸い刺し傷がそこにはあった。
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