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04.オススメ本の想い人
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「星検のこと、教えてもらってありがとう」
「そっか、先週末に試験やったんだっけ。どうだった?」
「うん、地学で習ったことがたくさん出てきたから、手応えはあるよ」
むん、と両手を握って力を込めるアピールをすると、七ツ役くんは微笑んでくれた。
「それなら3級は大丈夫そうだね」
「七ツ役くんは、3級と2級併願で受けたんだよね? どうだった?」
「うーん、さすがに2級は厳しかったかな。でも、次のも受けようと思ってるし、もう一度、勉強のやり直しだよ」
「2級ってそんなに難しかったの?」
話題になっているのは、七ツ役くんが教えてくれた星空宇宙天文検定だ。なんでも、地学天文部の人たちは受けるのが風習になっているらしく、私も教えてもらうまではそんな検定があるのすら知らなかった。気象予報士とは直接関係ないけれど、地学つながりだし、何より七ツ役くんとの話題作りになるからと、受けてみることにしたのだ。
「ほら、これ問題集なんだけどさ」
書棚から引っ張り出したのは、検定を主催している協会が出しているテキストだった。
「……うん」
だめだこれ。もう色々問題からして謎が謎を呼んでる。メシエ番号って何? それに変光? 星の色が変わるの?
そんな率直な感想をぐっと心にしまい込み、私は曖昧な笑みを浮かべた。
「これは厳しいね」
「でしょ」
自分でも頑張って勉強したつもりなんだけどな、なんて笑って話す七ツ役くんに、勢いよく「つもりなんてそんなそんな! 七ツ役くんはめちゃくちゃ頑張ってるじゃん!」なんて言いたいけれど、あまりがっつくのもよくない。というのは梓ちゃんの教えだ。
「2級でこれだったら、1級はどうなっちゃうんだろうね」
「そうだね。でも、うちの部の先輩で、一人、1級に受かった人がいるんだ」
「ホントに?」
「ちなみにその人、あだ名が『変人』なんだけどね」
「ふふっ、それほど情熱がないと無理ってこと?」
「そうだね。でも『星に欲情する変態』って罵られてもいるよ」
「そこまでは、ならなくてもいいかな」
「そうだね」
やばい。鼻血出そう。
だって今、私、めっちゃ七ツ役くんと普通におしゃべりしてる。本屋だからって声量に気を遣う七ツ役くんとの距離が自然と近くなるし、何より七ツ役くんの顔がキラッキラしてるのが眩しい。あぁもう、どなたか濃度80%、偏光率99%のサングラスをお持ちの方いらっしゃいませんかー? このままだともれなく私の目が潰れる危険が危ないです。あまりの衝撃にもはや日本語崩壊だね。
「あ、ごめん。別役さんもなんか本を探しに来たんだよね」
「うぅん、面白そうな本がないかなって思っただけだから」
嘘です。本当は七ツ役くんがいないかなって思っただけだから。
「よくこの辺りで見かけるけど、やっぱり天文とか興味あるの?」
「あー。えーと」
興味あるのは七ツ役くんなんだけど、とか言えるわけがない。
「あ、もしかして、聞いたらまずい話だった?」
「うぅん、その、ちょっと恥ずかしいんだけど、ほら、来年のコース希望出したじゃない? 色々自分なりに考えて、将来は気象予報士目指してみるのもありかなーって思ったりして、ね」
ごめんなさい七ツ役くん! 今、私、めっちゃ嘘ついてる!
本当は七ツ役くんを見ていたいから同じ理系コース希望してるし、可能なら進学先も一緒になりたいから、同じように気象予報士目指す予定なんて言えない! おはようからおやすみまで七ツ役くんの暮らしを見つめ……るのはさすがに変態ちっくだから、いやでも見つめたいに決まってるじゃん!
内心の葛藤をよそに、私は「まだ決めてるわけじゃないから、内緒だよ」とできるだけ可愛く見えるように付け加えた。
「そうなんだ。それじゃ俺と一緒だな」
「え?」
もちろん知ってますよ何か?な私だけど、ここは初耳を装う必要があるのだ。だって、本人の口から聞いたわけじゃないからね。
「気象予報士目指してるんだ。もし、本気で別役さんも目指すなら……あ、これこれ」
書棚から七ツ役くんの少し節ばった指が、一冊の本を抜き出す。うん、指フェチなわけじゃないけど、七ツ役くんのものなら指だって大好きさ。
「これなら、基本的なところから丁寧に解説してあるし、オススメだよ」
どうやら気象学の入門書らしい。七ツ役くんがせっかくオススメしてくれた本だから、即決で買いたいところだけど、今月は……ぐぐぐ。いや、あの雑誌をちょっと諦めれば何とかなるかな?
渡された本をパラパラめくり、ふんふんと頷きながら中身を眺め、最後にさりげない仕草で値段を確認する。うん、サンゼンエン。
なんていうかさ、いや、専門書だから仕方ないと思うんだけど、どうしてこういうのって、可愛くない値段なんだろうね? いいよ。頑張るよ。こんなときのためにと思って金券ショップで買っておいた図書カードが火を噴く出番だよ。図書カードの次弾装填の目処は立ってないけど、本人から直接オススメされたのに、買わないって選択肢はないよね。ない。買う一択でしょ!
「へぇ、分かりやすそうだね。買って勉強してみようかな」
「……ぷっ」
ん? 七ツ役くん、いま、吹き出さなかった?
「そっか、先週末に試験やったんだっけ。どうだった?」
「うん、地学で習ったことがたくさん出てきたから、手応えはあるよ」
むん、と両手を握って力を込めるアピールをすると、七ツ役くんは微笑んでくれた。
「それなら3級は大丈夫そうだね」
「七ツ役くんは、3級と2級併願で受けたんだよね? どうだった?」
「うーん、さすがに2級は厳しかったかな。でも、次のも受けようと思ってるし、もう一度、勉強のやり直しだよ」
「2級ってそんなに難しかったの?」
話題になっているのは、七ツ役くんが教えてくれた星空宇宙天文検定だ。なんでも、地学天文部の人たちは受けるのが風習になっているらしく、私も教えてもらうまではそんな検定があるのすら知らなかった。気象予報士とは直接関係ないけれど、地学つながりだし、何より七ツ役くんとの話題作りになるからと、受けてみることにしたのだ。
「ほら、これ問題集なんだけどさ」
書棚から引っ張り出したのは、検定を主催している協会が出しているテキストだった。
「……うん」
だめだこれ。もう色々問題からして謎が謎を呼んでる。メシエ番号って何? それに変光? 星の色が変わるの?
そんな率直な感想をぐっと心にしまい込み、私は曖昧な笑みを浮かべた。
「これは厳しいね」
「でしょ」
自分でも頑張って勉強したつもりなんだけどな、なんて笑って話す七ツ役くんに、勢いよく「つもりなんてそんなそんな! 七ツ役くんはめちゃくちゃ頑張ってるじゃん!」なんて言いたいけれど、あまりがっつくのもよくない。というのは梓ちゃんの教えだ。
「2級でこれだったら、1級はどうなっちゃうんだろうね」
「そうだね。でも、うちの部の先輩で、一人、1級に受かった人がいるんだ」
「ホントに?」
「ちなみにその人、あだ名が『変人』なんだけどね」
「ふふっ、それほど情熱がないと無理ってこと?」
「そうだね。でも『星に欲情する変態』って罵られてもいるよ」
「そこまでは、ならなくてもいいかな」
「そうだね」
やばい。鼻血出そう。
だって今、私、めっちゃ七ツ役くんと普通におしゃべりしてる。本屋だからって声量に気を遣う七ツ役くんとの距離が自然と近くなるし、何より七ツ役くんの顔がキラッキラしてるのが眩しい。あぁもう、どなたか濃度80%、偏光率99%のサングラスをお持ちの方いらっしゃいませんかー? このままだともれなく私の目が潰れる危険が危ないです。あまりの衝撃にもはや日本語崩壊だね。
「あ、ごめん。別役さんもなんか本を探しに来たんだよね」
「うぅん、面白そうな本がないかなって思っただけだから」
嘘です。本当は七ツ役くんがいないかなって思っただけだから。
「よくこの辺りで見かけるけど、やっぱり天文とか興味あるの?」
「あー。えーと」
興味あるのは七ツ役くんなんだけど、とか言えるわけがない。
「あ、もしかして、聞いたらまずい話だった?」
「うぅん、その、ちょっと恥ずかしいんだけど、ほら、来年のコース希望出したじゃない? 色々自分なりに考えて、将来は気象予報士目指してみるのもありかなーって思ったりして、ね」
ごめんなさい七ツ役くん! 今、私、めっちゃ嘘ついてる!
本当は七ツ役くんを見ていたいから同じ理系コース希望してるし、可能なら進学先も一緒になりたいから、同じように気象予報士目指す予定なんて言えない! おはようからおやすみまで七ツ役くんの暮らしを見つめ……るのはさすがに変態ちっくだから、いやでも見つめたいに決まってるじゃん!
内心の葛藤をよそに、私は「まだ決めてるわけじゃないから、内緒だよ」とできるだけ可愛く見えるように付け加えた。
「そうなんだ。それじゃ俺と一緒だな」
「え?」
もちろん知ってますよ何か?な私だけど、ここは初耳を装う必要があるのだ。だって、本人の口から聞いたわけじゃないからね。
「気象予報士目指してるんだ。もし、本気で別役さんも目指すなら……あ、これこれ」
書棚から七ツ役くんの少し節ばった指が、一冊の本を抜き出す。うん、指フェチなわけじゃないけど、七ツ役くんのものなら指だって大好きさ。
「これなら、基本的なところから丁寧に解説してあるし、オススメだよ」
どうやら気象学の入門書らしい。七ツ役くんがせっかくオススメしてくれた本だから、即決で買いたいところだけど、今月は……ぐぐぐ。いや、あの雑誌をちょっと諦めれば何とかなるかな?
渡された本をパラパラめくり、ふんふんと頷きながら中身を眺め、最後にさりげない仕草で値段を確認する。うん、サンゼンエン。
なんていうかさ、いや、専門書だから仕方ないと思うんだけど、どうしてこういうのって、可愛くない値段なんだろうね? いいよ。頑張るよ。こんなときのためにと思って金券ショップで買っておいた図書カードが火を噴く出番だよ。図書カードの次弾装填の目処は立ってないけど、本人から直接オススメされたのに、買わないって選択肢はないよね。ない。買う一択でしょ!
「へぇ、分かりやすそうだね。買って勉強してみようかな」
「……ぷっ」
ん? 七ツ役くん、いま、吹き出さなかった?
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