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69.R18Gな混線(前)
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「……っ!!」
私はがばっと勢いよく上半身を起こした。心臓がまだバクバクと言っている。というか、むしろ吐きそう。
「まさかのR18G……」
いやいや、なんでよ。なんでさ。生まれてこの方、そんなのに遭遇したことないのに。血沸き肉躍るとかそんなレベルじゃなくて、文字通り内臓飛び肉片舞い散る映像を高解像度4Kでお送りしますじゃないっての。
「あーるじゅうはちじー?」
「ひぃぁっ」
情けない悲鳴が出た。あぁ、そうだ。ここ、ヨナの部屋だった。
「なんだそれは?」
「いいの、気にしなくていいから。ちょっとグロい夢みただけだから、はいはい、おやすみおやすみ、ねんねんころりー」
「グロ……?」
頼んでもいないのに、隣のヨナがのっそりと上半身を起こす。
「汗が滲んでいるな」
「だからちょっと、あー、なんていうか、バイオレンスな夢見ちゃっただけだから、気にしなくて大丈夫よ?」
窓の外はまだ薄暗い。ようやく夜が明けるかといった時間なんだろう。時計も読めない暗さだから分からないけどさ。
「具体的には?」
「は?」
なに、あのグロい夢を思い出せと? 鬼畜か?
「少し気になることがある。具体的に話せるか?」
「……具体的にって言われてもね、人間の体が細切れ肉片になるような夢だったとしか」
「……」
ちょっと、どうしてそこで考え込むのよ。
まさか、私の精神性がどうのとか言い出すんじゃないわよね? そんなこと言おうものなら、問答無用で右ストレートだからね。何なら素振りでもしようか?
「混線……? いや、俺の方から繋いだラインが残っていたと考える方が自然か?」
「ちょっと、一人でぶつぶつ呟いてないで、説明できるもんならしてよ? あんな夢見るのなんて初めてなんだから」
う、思い出したら、また吐き気が。
前世のゾンビ映画も真っ青のレベルで、ついさっきまで生きていた人間が肉片になるっていう、そりゃトラウマものの夢よ? 心当たりがあるならキリキリ吐いて欲しいもんだわ。
「――――以前、リリアンの夢に入ったことがあっただろう」
「あぁ、あの覗き見どころじゃない魔法ね」
「そのとき繋いだラインが残っていた可能性がある」
「もうちょっと分かりやすく」
「あのとき使った魔法のせいで、俺の夢をリリアンが覗き見ることになった……かもしれない」
ヨナの話を理解するのに、2秒程かかった。寝起きというのもあるんだろう。
「はぁ? ちょっと何私の安眠妨害してるの? っていうか、なんて夢見てんのよ!」
理不尽な怒りと言うなかれ。はっきり言ってグロ耐性などないところに、アレな夢を見せられたんだ。怒っていいと思う。
「なんて夢……と言われてもな。実際に近いことがあったせいとしか言えないな」
「実際……」
ちょっと確認するぞ、とヨナが私に魔法をかけるのをどこか遠くで聞きながら、私は情報を整理していた。
「あぁ、やっぱり消し損ねた魔力経路が残っているな」
「……ヨナ、聞きたいことがあるんだけど」
「惜しいがこれは消すか。……なんだ?」
「もしかして、あの生きている人間を肉片にしたのって」
ヨナの魔法? とは口に出せなかった。それは、人を殺したことがあるのか、という問い掛けに等しい気がして。
「俺の魔法だな。盗賊の根城を潰したときか、南の蛮族を追い返したときか、その辺りだろう」
私の躊躇を踏みつぶしてさらりと答えたヨナは、私の頭に手を置き、何事かを呟く。
「……できるの、そんなこと」
「仕事だからな。昨日だって似たような仕事だった」
あっさり答えたヨナは、私の肩を抱いて再びベッドに倒れ込んだ。一緒に倒れた私は、回された腕をどうしたらいいのか分からないまま、目を瞑った。
でも、考えてみれば、十分にあり得る話か。希代の魔法使いと言葉では飾り立てられているけれど、それは国にとって十分な武力になり得る。
「怖くなったか、俺のことが」
「……そうね」
びく、と私の頭の下に敷かれた腕が震えた気がした。ん? もしかして、何か質問されてた? 考え事してたからよく聞いていなかったのだけど。
「迂闊だったとしか言えないわ。ちょっと考えれば、分かる筈だったのに。これだけ強い力があるのなら、反抗的な内乱分子や、周辺諸国への抑止力になり得るものね……」
「リリアン、俺から離れるつもりか?」
その問い掛けに、私は思わずヨナの顔を見上げた。暗くて分からないけど、声の響きが随分と沈んでいるように感じる。
私はがばっと勢いよく上半身を起こした。心臓がまだバクバクと言っている。というか、むしろ吐きそう。
「まさかのR18G……」
いやいや、なんでよ。なんでさ。生まれてこの方、そんなのに遭遇したことないのに。血沸き肉躍るとかそんなレベルじゃなくて、文字通り内臓飛び肉片舞い散る映像を高解像度4Kでお送りしますじゃないっての。
「あーるじゅうはちじー?」
「ひぃぁっ」
情けない悲鳴が出た。あぁ、そうだ。ここ、ヨナの部屋だった。
「なんだそれは?」
「いいの、気にしなくていいから。ちょっとグロい夢みただけだから、はいはい、おやすみおやすみ、ねんねんころりー」
「グロ……?」
頼んでもいないのに、隣のヨナがのっそりと上半身を起こす。
「汗が滲んでいるな」
「だからちょっと、あー、なんていうか、バイオレンスな夢見ちゃっただけだから、気にしなくて大丈夫よ?」
窓の外はまだ薄暗い。ようやく夜が明けるかといった時間なんだろう。時計も読めない暗さだから分からないけどさ。
「具体的には?」
「は?」
なに、あのグロい夢を思い出せと? 鬼畜か?
「少し気になることがある。具体的に話せるか?」
「……具体的にって言われてもね、人間の体が細切れ肉片になるような夢だったとしか」
「……」
ちょっと、どうしてそこで考え込むのよ。
まさか、私の精神性がどうのとか言い出すんじゃないわよね? そんなこと言おうものなら、問答無用で右ストレートだからね。何なら素振りでもしようか?
「混線……? いや、俺の方から繋いだラインが残っていたと考える方が自然か?」
「ちょっと、一人でぶつぶつ呟いてないで、説明できるもんならしてよ? あんな夢見るのなんて初めてなんだから」
う、思い出したら、また吐き気が。
前世のゾンビ映画も真っ青のレベルで、ついさっきまで生きていた人間が肉片になるっていう、そりゃトラウマものの夢よ? 心当たりがあるならキリキリ吐いて欲しいもんだわ。
「――――以前、リリアンの夢に入ったことがあっただろう」
「あぁ、あの覗き見どころじゃない魔法ね」
「そのとき繋いだラインが残っていた可能性がある」
「もうちょっと分かりやすく」
「あのとき使った魔法のせいで、俺の夢をリリアンが覗き見ることになった……かもしれない」
ヨナの話を理解するのに、2秒程かかった。寝起きというのもあるんだろう。
「はぁ? ちょっと何私の安眠妨害してるの? っていうか、なんて夢見てんのよ!」
理不尽な怒りと言うなかれ。はっきり言ってグロ耐性などないところに、アレな夢を見せられたんだ。怒っていいと思う。
「なんて夢……と言われてもな。実際に近いことがあったせいとしか言えないな」
「実際……」
ちょっと確認するぞ、とヨナが私に魔法をかけるのをどこか遠くで聞きながら、私は情報を整理していた。
「あぁ、やっぱり消し損ねた魔力経路が残っているな」
「……ヨナ、聞きたいことがあるんだけど」
「惜しいがこれは消すか。……なんだ?」
「もしかして、あの生きている人間を肉片にしたのって」
ヨナの魔法? とは口に出せなかった。それは、人を殺したことがあるのか、という問い掛けに等しい気がして。
「俺の魔法だな。盗賊の根城を潰したときか、南の蛮族を追い返したときか、その辺りだろう」
私の躊躇を踏みつぶしてさらりと答えたヨナは、私の頭に手を置き、何事かを呟く。
「……できるの、そんなこと」
「仕事だからな。昨日だって似たような仕事だった」
あっさり答えたヨナは、私の肩を抱いて再びベッドに倒れ込んだ。一緒に倒れた私は、回された腕をどうしたらいいのか分からないまま、目を瞑った。
でも、考えてみれば、十分にあり得る話か。希代の魔法使いと言葉では飾り立てられているけれど、それは国にとって十分な武力になり得る。
「怖くなったか、俺のことが」
「……そうね」
びく、と私の頭の下に敷かれた腕が震えた気がした。ん? もしかして、何か質問されてた? 考え事してたからよく聞いていなかったのだけど。
「迂闊だったとしか言えないわ。ちょっと考えれば、分かる筈だったのに。これだけ強い力があるのなら、反抗的な内乱分子や、周辺諸国への抑止力になり得るものね……」
「リリアン、俺から離れるつもりか?」
その問い掛けに、私は思わずヨナの顔を見上げた。暗くて分からないけど、声の響きが随分と沈んでいるように感じる。
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