アオいハルの練習曲

長野 雪

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Film07.想いの糸は難解に ―IPPEI’S EYE―

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(いったい、誰があんな手紙を書いたんだ!)

 おれは自分の部屋で独り悶々としていた。あんなにかわいそうなぐらい内気な梶原を脅すような真似をするなんて、人間のやることじゃねぇっ!

『或いはあれはラブレターだったのかもよ?』

 自分で言った気休めがふと浮かび上がって来た。なおりんは、そんな物好きがおれの他にいるとは思えないとか何とか言っていたけれど、もしかすると……
 呼び出しの手紙 = ラブレター ⇒ 告白
 おれの頭にそんな図式が出て来て、余計な混乱を誘う。違うと思う、思いたい。

(もし、手紙の主と梶原が会っていたら……)

 悪意のある呼び出しにしても、告白にしても、おれにとっていい方向には向かない。気の優しい梶原のことだ、告白なんてされたらきっと、きっと承諾してしまう!

(ってことは、おれがコクっても……)

 脳裏に浮かんだどうしようもない光景をおれは慌てて打ち消した。いつかそんな日が来たらいいとは思うが、その承諾が梶原の本意でなければどうしようもないんだ!

(いや待てよ? 付き合ってから好きになってもらえば……)

 とりあえず、おれは手紙の件がいったいどうなったのかを確認するために、ケータイを取り出した。だが、さすがに直接かけるわけにもいかない。

「お嬢にかけるか……」

 3コールでお嬢の不機嫌な声が届く。

『イッペー、いい加減にしてよね。直接聞けばいいじゃないの。あたくし、毎度毎度さゆりの話するのにも限界があるのよ』

 どうやら、電話の用件は、ばっちりバレてるらしい。

「そんなこと言うなよ、お嬢。何か聞いてないのか?」

 わざと情けなさそうな声を上げて頼み込む。こうやってプライドをくすぐれば、お嬢はたいていオちるはずだ。

『あたくしだって、そんなに多くを知っているわけではないのよ。九十九に手紙を取り上げられて、さらに九十九が問題の場所に行ったってぐらい。その後は知らないわ』
「さんきゅ。……そう言えば、なおりんも口が悪いよなぁ。わざわざあんなこと言う必要もなかったろうに」

 あんなこととは、もちろん昼間の梶原に対する暴言のことである。梶原のことを失礼なヤツ扱いしやがって。これでも、おれに対しては話してくれるようにまでなったんだぞ? 他のヤツには声かけられても答えられないぐらいの恥ずかしがり屋なんだから。
 何か、気のせいかな? 梶原に八つ当たりしてるような気もするんだけどなぁ。

『! 遅かれ早かれ誰かが言うことでしょう? さゆりのことを言われたからって、そんなに……ふん、じゃぁね!』

 なぜか怒り始めたお嬢に、一方的に電話を切られ、おれはケータイを持ったまま部屋の中で唖然としてしまった。

「なんだよ、お嬢のやつ……」

 梶原と何かあったのかもしれないと心配するおれを嘲笑うかのように、ケータイが鳴り始めた。

「はい、もしもし?」

 電話の相手を確認することもなく、おれは応対する。それはいつものように唐突な朝練の通知だった。

『明後日は朝練やるから、七時に体育館に集合な』

 おれは外見の通りにバスケをやっている。外見の通りというのいは、とあるバスケ漫画に感動して、その主人公と同じ髪型にしているのだ。
 「ダンクストリート」というその漫画は、ニューヨークのスラム街でストリートバスケをする日本人の話で、彼――梅木尾道は刈り上げた髪を赤く染めて、とてもシンプルなピアスをしている。
 おれはあとはタッパさえあれば、バッチリ尾道そのものだと思っているのだが、いかんせん、バスケの腕と身長はどうしようもない。尾道の身長は二メートル弱。おれは……まぁ、ほんの三、四十センチくらい足りないかな。

(明後日はなおりんと学校行けないってわけか……)

 おれがバスケ部、なおりんが帰宅部な関係上、通学時間がかぶるのがどうしても朝だけになってしまう。しかも学校までのラスト四駅のみだ。その間に昔の梶原のことを聞き出そうと思っていたんだけど、こりゃぁ、明日の朝にかけるしかないなぁ。
 とりあえず明後日はいっしょに行けないことを知らせなきゃなぁ。そう思いつつ、おれは、なおりんにあびせかける質問をいくつか頭の中でリストアップした。
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