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1章:逢魔時
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「ふーん、変な夢だな」
電車で今日あった夢の話を、仲のいい幼馴染みの雨瀬信乃に話した。夢というのは存外覚えていられるらしい。
信乃にその話をしてみると思ったより反応が薄く、螢はいろんな意味で呆れて脱力してしまった。
「いや、なんで呆れてんだよ……なら、どういう反応すればいいのさ」
信乃はペットボトルのお茶を飲みながら不機嫌そうに言う。それを見た螢は肩をすくめた。
「あはは、ごめんごめん。……いや~なんか対策した方がいいのかなーって」
思ってさ、と螢は努めて明るく言う。そんな螢を信乃は内心、心配していた。螢はずっと、いいのか悪いのか区別もつかないわけ分からない夢を気にしていたらしく、学校でもぼーっとしている事が多かった。
「それ聞いてると、なんか悪夢とはまた違うとは思う……。はぁ、せっかく休みなんだし、暗いのはナシにしようぜ」
信乃は早々に話を切り上げた。
休日である今日、螢と信乃は辰野で行われるほたる祭りに向かっている。たまたま二人の都合が合い、一度映像では無く実物のホタルを見てみよう、という事になり参加を決めたのだ。
螢は幼い頃、辰野に住んでいたことがあったが、何せ幼い頃の事なので『そこに住んでいた』程度しか覚えていない。
「そうだね」
「……まだ着かないし、俺はちょっと寝る」
そう言い信乃はペットボトルを鞄にしまう。彼の言葉に、螢はスマホで時刻表を確認した。確かに後三十分以上は時間がある。
同じ長野県内でも中々遠いな、としみじみ思う。信乃は生まれも育ちも、螢は小学校低学年のあたりから、長野市に住み、今は市内にある同じ高校に通っている。
「分かった、着きそうだったらそのままにして先に行くね」
「おい! マジで止めろ、洒落にならん!」
冗談を言った螢に慌ててアラームをセットし始めた信乃が面白く、くすくす笑う。
「ごめんて、大丈夫、ちゃんと起こすから。おやすみ~」
じとりと螢を睨んだ信乃は、「起こすよ」と笑い混じりに繰り返した螢を信じ、アラームのセットを止め今度こそ素直に眠った。
そんな信乃がまた面白く気付かれないよう静かに笑みを深めた。
すぅすぅと気持ちよさそうな信乃の寝息を聞きながら、時間つぶしに持ってきた小説を鞄から取り出す。
しかし先程信乃が言った『悪夢とはまた違う』という事が気にかかりなかなか集中できない。気を取りなおすように小さく頭をふると、少しでも紛らわそうと文字を目で追った。
夢で何故あの『人』に対して懐かしく感じたのか。それは今はまだ分からない。
電車で今日あった夢の話を、仲のいい幼馴染みの雨瀬信乃に話した。夢というのは存外覚えていられるらしい。
信乃にその話をしてみると思ったより反応が薄く、螢はいろんな意味で呆れて脱力してしまった。
「いや、なんで呆れてんだよ……なら、どういう反応すればいいのさ」
信乃はペットボトルのお茶を飲みながら不機嫌そうに言う。それを見た螢は肩をすくめた。
「あはは、ごめんごめん。……いや~なんか対策した方がいいのかなーって」
思ってさ、と螢は努めて明るく言う。そんな螢を信乃は内心、心配していた。螢はずっと、いいのか悪いのか区別もつかないわけ分からない夢を気にしていたらしく、学校でもぼーっとしている事が多かった。
「それ聞いてると、なんか悪夢とはまた違うとは思う……。はぁ、せっかく休みなんだし、暗いのはナシにしようぜ」
信乃は早々に話を切り上げた。
休日である今日、螢と信乃は辰野で行われるほたる祭りに向かっている。たまたま二人の都合が合い、一度映像では無く実物のホタルを見てみよう、という事になり参加を決めたのだ。
螢は幼い頃、辰野に住んでいたことがあったが、何せ幼い頃の事なので『そこに住んでいた』程度しか覚えていない。
「そうだね」
「……まだ着かないし、俺はちょっと寝る」
そう言い信乃はペットボトルを鞄にしまう。彼の言葉に、螢はスマホで時刻表を確認した。確かに後三十分以上は時間がある。
同じ長野県内でも中々遠いな、としみじみ思う。信乃は生まれも育ちも、螢は小学校低学年のあたりから、長野市に住み、今は市内にある同じ高校に通っている。
「分かった、着きそうだったらそのままにして先に行くね」
「おい! マジで止めろ、洒落にならん!」
冗談を言った螢に慌ててアラームをセットし始めた信乃が面白く、くすくす笑う。
「ごめんて、大丈夫、ちゃんと起こすから。おやすみ~」
じとりと螢を睨んだ信乃は、「起こすよ」と笑い混じりに繰り返した螢を信じ、アラームのセットを止め今度こそ素直に眠った。
そんな信乃がまた面白く気付かれないよう静かに笑みを深めた。
すぅすぅと気持ちよさそうな信乃の寝息を聞きながら、時間つぶしに持ってきた小説を鞄から取り出す。
しかし先程信乃が言った『悪夢とはまた違う』という事が気にかかりなかなか集中できない。気を取りなおすように小さく頭をふると、少しでも紛らわそうと文字を目で追った。
夢で何故あの『人』に対して懐かしく感じたのか。それは今はまだ分からない。
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