ほたる祭りと2人の怪奇

飴之ゆう

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4章:出逢える場所

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ふ、と目を覚ました螢は、自分が布団に入っていることに気付いた。傍らには菊鯉がスヤスヤと眠っていた。
慌てて飛び起きると、それに気付いた菊鯉もガバッと起き上がると「起キタ!」と言い抱きついてくる。受け止めると、菊鯉は直ぐに、他の人達を連れてくると言い襖を勢いよく開けて走って行った。

「あ……何も言う間もなく行っちゃった……。台風みたいな子だな……」

会いたい人に会えなかった夢に少し疲れて、見渡した部屋はもの悲しかった。
螢は皆が来るまで、夢の中での出来事を思い返す。さよならも告げられずに失った記憶。あの少年、昊に幼い頃会って過ごした日々を彼自身によって消された。

「よぉ螢。気分はどうだ」
「信乃、黒曜さん達も……!」

ひょっこりと部屋に入ってきた信乃の後ろから、黒曜、雨女、白兎と黒兎、鯉達が続くように現れる。
「螢さん、無事のお目覚め何よりです」
「私……。」

一緒に記憶を戻されたはずの信乃が普通に起きていて、自分は布団に寝かされている、という状況に首を傾げる螢に、しばらく目覚めなかったのだと告げる。

「そう、ですか……。黒曜さん、皆さんもお騒がせしました。信乃もごめん、ありがとう」

信乃は別に構わないと手を振った。黒曜は微笑むと、螢に記憶は戻ったのか聞く。螢は頷くと、先程見ていた夢の話を信乃達に聞かせた。信乃は少し驚いていたが、ある程度覚悟の上だったため直ぐに冷静になった。

「そう、か……でもなんで記憶を消したにも関わらず、螢を襲うなんてことを?」
「うーん……妖怪ってのはねー、中々面倒なんだよー」
「面倒って?」
「あのね、妖怪達は理不尽なんだよー。聞いたことあるだろうけど……『人間』の闇や畏れによって僕らが生まれたんだー。だから、心変わりは結構あるよー?でも聞いてる限り、その妖怪の根本は人間が好きそうだから~……さっきアンタが言った様に、その昊ってヤツ……取り憑かれているって線は濃厚だろうねー」

妖怪達にとってそれは珍しくもないものだと黒兎は言う。
螢が引っ越した後に昊は変わった。螢は急にハッと顔を上げる。何か分かったのかと信乃が聞いた。

「うん。そう言えば、私が引っ越す二ヶ月前……『たまに、動きがままならない』って言ってた気がする」
「動きが……、どういうことだ?」
「それは分からない……けど──」

螢が話そうとしたとき、襖が開き、見知らぬ少女が二人、入ってきた。
ウェーブした赤毛に眼帯のどこかギャルを彷彿とさせる少女と、逆に地味な印象の眼鏡をかけた三つ編みお下げの少女だ。二人とも同じセーラー服を着て、同じ鞄を持っている。学校が同じだったのか。
こちらを見る赤毛の少女が「やっほー」と明るく螢と信乃に手を振る。螢と信乃はとりあえず頭を下げるが、誰なのかと疑問符を浮かべる。それに気づいた黒曜が「赤毛の子がキヨさん、眼鏡の子がアリサさんです」と紹介してくれた。

「どーもー、一応貴方達と同じく迷い込んで、しぶとく生きている人間よ」
「……それで雨女、話って何?こんなモノで呼び出すなんて」

アリサはそう言うとポケットから紙人形を取り出した。雨女は特に気にすることはなく「彼女のことよ」と螢を指さす。螢を見たキヨとアリサは納得したように視線を合わせた。

「なーるほど、じゃあアタシ達はあの子達といればいいのね。タメでいいよ。よろしくね~」 

楽しそうにキヨは螢の近くに座る。

「あぁ、もう。キヨったら……」

そんなキヨを見てアリサは頭を抱え呆れたようにため息を吐いた。

「デハ、我々ハココカラ別行動デスネ。……良イデスカ、菊鯉」

鯉乃進が立ち上がり緋鯉もそれにならい立ち上がるが、菊鯉がこっそり黒曜の後ろに隠れようとしているのを見つけ首根っこを引っ張る。菊鯉はふてくされながらも従った。

「ジャア、マタ後デナー!」
「行キマスヨ、菊鯉」

菊鯉を引きずりながら鯉達は早々に立ち去っていく。
白兎と黒兎も螢が眠っている間に用事を済ませたようで、帰ると言い、雨女も「私もやることがあるから、お大事に」と部屋を出て行った。

「あらら、アタシ達だけね、残ったの」
「キヨさん達はこれからどうするのですか?私も彼等と同様に用がありますのでこれでお暇しないといけないのですが……」
「あー……それなら問題ないわ! アタシとアリサはこの子達とちょーっちお話があるから」
「気にしないで下さい。黒曜さんは水無月様の元へ」
「分かりました、くれぐれも気をつけて下さいね。螢さん、信乃くん」

そう言うと、黒曜は立ち上がり一礼して出て行った。

「じゃあ、アタシ達は外に行きましょう!」
「えぇ……」

キヨは螢が寝ていた布団を剥ぎ取り、もの凄い勢いで二人とアリサを玄関まで引っ張って行った。
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