婚約破棄が始まりの鐘でしたのよ?

水鳥楓椛

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「貴様っ!!」

 国王の、否、元国王の情けない声に、オリヴィアは視線だけを蔑みのものへと変化させ、元国王を睨みつける。

「………わたくしは、元々は陰から王家を支え続け、潰れかけているこの王国に光を取り戻させようと考えていましわ。けれど、その考えは早々に捨てることになった。何故かわかりますか?」

 眉を顰め罵詈雑言を吐き続ける国王に、オリヴィアは心底失望する。
 コレが、その昔明君と呼ばれた男であるなど、ほんの僅かでも考えたくもなかった。

 小さく息を飲み込んだオリヴィアは、諦観を称えた表情で国王を見つめる。

「———あなたがわたくしのお兄さまを殺したからですわ」

 5年前のちょうど今日、オリヴィアの兄であるリオネルは王宮の庭園の奥深くで、国王によって殺された。

 優秀すぎるリオネルは、国王が国内に違法薬物をばら撒き、奴隷商への投資をしていたことに気がついてしまった。
 そして、優しすぎる、否、正義感が強すぎるリオネルは、我慢ができなかった。

 国王を敬愛していたリオネルは、国王の所業に関する調査結果を信じることができなかった。できなかったからこそ、国王に問い詰め、そして、あっけなく殺された。抵抗すらしなかった。

 オリヴィアは、兄リオネルのようすぐが少しおかしいことに気がついて、その日、アレクと共に探検気分で兄の後ろをこっそりとつけてしまった。

 そして、見てしまった。
 
 兄が、大好きな兄が、国王の剣によって貫かれるその瞬間を。

 発狂しそうだった。
 狂ってしまいたかった。

 でも、できなかった。

 刺されたその瞬間、リオネルはオリヴィアの存在に気がついた。
 そして、くちびるにしぃっと人差し指を当てた。

『生きろ』

 そう呟いた時のリオネルの泣きそうな表情が、オリヴィアの脳内に刻み込まれている。

 だから、オリヴィアとアレクは無我夢中で逃げて、隠れて、時を待つことにした。

「ごめんね。ごめんね、リヴィア。父上が、ごめんなさい」

 そう言って泣きながらオリヴィアの口元を押さえて身体を抱きしめて逃げてくれたアレクは、オリヴィアのヒーローだ。

 オリヴィアとアレクは、正しい大義名分と絶対的な戦力を持ってして、国王への復讐をすることを誓った。
 リオネルを慕うふたりは、この瞬間、それなりに仲のいい婚約者同士から、同じ復讐心を胸に抱く同志となった。

 共に魔術を学び、剣術を学び、ありとあらゆる勉学を学んだ。
 国王や王弟として必要とされる内容以外も、何が復讐に役立つかわからないために、積極的に学んだ。

 そして、2人は文字通り血の滲む努力の末に、完璧な能力を手に入れた。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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