婚約破棄が始まりの鐘でしたのよ?

水鳥楓椛

文字の大きさ
5 / 8

5

「貴様っ!!」

 国王の、否、元国王の情けない声に、オリヴィアは視線だけを蔑みのものへと変化させ、元国王を睨みつける。

「………わたくしは、元々は陰から王家を支え続け、潰れかけているこの王国に光を取り戻させようと考えていましわ。けれど、その考えは早々に捨てることになった。何故かわかりますか?」

 眉を顰め罵詈雑言を吐き続ける国王に、オリヴィアは心底失望する。
 コレが、その昔明君と呼ばれた男であるなど、ほんの僅かでも考えたくもなかった。

 小さく息を飲み込んだオリヴィアは、諦観を称えた表情で国王を見つめる。

「———あなたがわたくしのお兄さまを殺したからですわ」

 5年前のちょうど今日、オリヴィアの兄であるリオネルは王宮の庭園の奥深くで、国王によって殺された。

 優秀すぎるリオネルは、国王が国内に違法薬物をばら撒き、奴隷商への投資をしていたことに気がついてしまった。
 そして、優しすぎる、否、正義感が強すぎるリオネルは、我慢ができなかった。

 国王を敬愛していたリオネルは、国王の所業に関する調査結果を信じることができなかった。できなかったからこそ、国王に問い詰め、そして、あっけなく殺された。抵抗すらしなかった。

 オリヴィアは、兄リオネルのようすぐが少しおかしいことに気がついて、その日、アレクと共に探検気分で兄の後ろをこっそりとつけてしまった。

 そして、見てしまった。
 
 兄が、大好きな兄が、国王の剣によって貫かれるその瞬間を。

 発狂しそうだった。
 狂ってしまいたかった。

 でも、できなかった。

 刺されたその瞬間、リオネルはオリヴィアの存在に気がついた。
 そして、くちびるにしぃっと人差し指を当てた。

『生きろ』

 そう呟いた時のリオネルの泣きそうな表情が、オリヴィアの脳内に刻み込まれている。

 だから、オリヴィアとアレクは無我夢中で逃げて、隠れて、時を待つことにした。

「ごめんね。ごめんね、リヴィア。父上が、ごめんなさい」

 そう言って泣きながらオリヴィアの口元を押さえて身体を抱きしめて逃げてくれたアレクは、オリヴィアのヒーローだ。

 オリヴィアとアレクは、正しい大義名分と絶対的な戦力を持ってして、国王への復讐をすることを誓った。
 リオネルを慕うふたりは、この瞬間、それなりに仲のいい婚約者同士から、同じ復讐心を胸に抱く同志となった。

 共に魔術を学び、剣術を学び、ありとあらゆる勉学を学んだ。
 国王や王弟として必要とされる内容以外も、何が復讐に役立つかわからないために、積極的に学んだ。

 そして、2人は文字通り血の滲む努力の末に、完璧な能力を手に入れた。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

婚約破棄された私と侯爵子息様〜刺繍も私も、貴方が離さない〜

ナナミ
恋愛
「ディアナ!お前との婚約を破棄する!」  ディアナ・コヴァー伯爵令嬢は、婚約者である伯爵子息に断罪され、婚約破棄されてしまった。  ある子爵令嬢に嫌がらせをしていたと言うことである。彼女には身に覚えのない冤罪であった。    自分は、やっていない、と言っても、婚約者は信じない。  途方に暮れるディアナ。そんな時、美形の侯爵子息であるフレット・ファンエスがやって来て……。  伯爵令嬢×美形侯爵子息の恋愛ファンタジー。

殿下をくださいな、お姉さま~欲しがり過ぎた妹に、姉が最後に贈ったのは死の呪いだった~

和泉鷹央
恋愛
 忌み子と呼ばれ、幼い頃から実家のなかに閉じ込められたいた少女――コンラッド伯爵の長女オリビア。  彼女は生まれながらにして、ある呪いを受け継いだ魔女だった。  本当ならば死ぬまで屋敷から出ることを許されないオリビアだったが、欲深い国王はその呪いを利用して更に国を豊かにしようと考え、第四王子との婚約を命じる。    この頃からだ。  姉のオリビアに婚約者が出来た頃から、妹のサンドラの様子がおかしくなった。  あれが欲しい、これが欲しいとわがままを言い出したのだ。  それまではとても物わかりのよい子だったのに。  半年後――。  オリビアと婚約者、王太子ジョシュアの結婚式が間近に迫ったある日。  サンドラは呆れたことに、王太子が欲しいと言い出した。  オリビアの我慢はとうとう限界に達してしまい……  最後はハッピーエンドです。  別の投稿サイトでも掲載しています。

ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。

ねお
恋愛
 ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。  そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。  「そんなこと、私はしておりません!」  そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。  そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。  そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。

【完結】転生悪役っぽい令嬢、家族巻き込みざまぁ回避~ヒドインは酷いんです~

鏑木 うりこ
恋愛
 転生前あまりにもたくさんのざまぁ小説を読みすぎて、自分がどのざまぁ小説に転生したか分からないエイミアは一人で何とかすることを速攻諦め、母親に泣きついた。 「おかあさまあ~わたし、ざまぁされたくないのですー!」 「ざまぁとはよくわからないけれど、語感が既に良くない感じね」  すぐに味方を見つけ、将来自分をざまぁしてきそうな妹を懐柔し……エイミアは学園へ入学する。  そして敵が現れたのでした。  中編くらいになるかなと思っております! 長い沈黙を破り!忘れていたとは内緒だぞ!? ヒドインが完結しました!わーわー!  (*´-`)……ホメテ……

婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?

鶯埜 餡
恋愛
 バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。  今ですか?  めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?

「やはり鍛えることは、大切だな」

イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」  その日、一つのお見合いがあった。  ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。  クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。  そして互いに挨拶を交わすその場にて。  ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。  けれども……――。 「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」

王宮で虐げられた令嬢は追放され、真実の愛を知る~あなた方はもう家族ではありません~

葵 すみれ
恋愛
「お姉さま、ずるい! どうしてお姉さまばっかり!」 男爵家の庶子であるセシールは、王女付きの侍女として選ばれる。 ところが、実際には王女や他の侍女たちに虐げられ、庭園の片隅で泣く毎日。 それでも家族のためだと耐えていたのに、何故か太り出して醜くなり、豚と罵られるように。 とうとう侍女の座を妹に奪われ、嘲笑われながら城を追い出されてしまう。 あんなに尽くした家族からも捨てられ、セシールは街をさまよう。 力尽きそうになったセシールの前に現れたのは、かつて一度だけ会った生意気な少年の成長した姿だった。 そして健康と美しさを取り戻したセシールのもとに、かつての家族の変わり果てた姿が…… ※小説家になろうにも掲載しています