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23 帰還

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 時を遡るとしたら、多分1週間前の出来事がアザリアがこの場に来る原因だろう。

 もう少しでこの暗殺に失敗し続けて1年を迎えるアザリアは、最近少しばかり焦っていた。
 彼に多くの時間を割くことによって、お小遣い稼ぎの額が微々たる額しか手に入らなくなってしまっているからだ。

 任務を降りることも何度も何度も考えた。
 けれど、アザリアは自らの経歴に泥を塗るという判断を下せず、この任務から降りるということをできなかった。

 ちっぽけなプライドが自らの首を真綿でゆっくりと締め付けていることには気が付いていた。
 けれど、引き下がれないものは引き下がれないし、引き下がりたくないものは引き下がるたくない。

 だからだろうか、アザリアは誤って国王の前に一瞬姿を現してしまった。
 そして、女好きと名高い国王に気に入られてしまったらしい。

 謁見の場で大量の機密情報をそれなりに手に入れ、無事王子の元に帰還したアザリアは、面倒臭そうに欠伸をしながらナイフを握り、王子に切り掛かった。

 至高の暗殺姫とまで呼ばれるアザリアですら殺せない暗殺対象第2王子アルフォード・クライシスは今日も華麗にアザリアの攻撃を避け続ける。


「リアはやっぱり筋がいいね。去年来てから5倍くらい強くなってる」

「ならっ!大人しくっ!殺されなっ!さいよっ!!」


 毒をたっぷりと塗り込んだナイフは美しい軌跡をたどりながら、彼の命を狙わんと急所のあたりを無邪気に通り過ぎる。


「というか、あなたさまのせいで。わたくし色々なことに巻き込まれているのだけれどっ!?
 暗殺者として顔は割れたくないのだけれどっ!!」


 ナイフを振るうたびに上がる呼吸に任せて、アザリアは武器を握り続けた。


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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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