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51 死なない

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◻︎◇◻︎

 セオドールとの邂逅を終えたアザリアは、アルフォードに与えられた部屋にある大きなカウチにドレスやアクセサリーを除けることなくぐでっと寝っ転がっていた。


(今日の任務は失敗ね。
 ………明らかに踏み込みすぎたわ)


 知った真実の重さに、大きさに、背筋がゾッと凍りつく。

 こんな感覚、暗殺者になってからですらほとんど味わったことがないレベルだ。

 脳内に常に危険を知らせる警鐘が鳴り響き、一応機能している理性が早く逃げろと叫んでいる。

 逃げなければならないとちゃんと分かっている。
 分かっているはずなのに、逃げられない。自らのちっぽけなプライドと信条がそれを許さない。

 命あってこそだと分かっているのにできない自分に、嫌気がさしてくる。


(赤の一族、か………。
 ………………国王にはもう聞かない方が良さそうね。

 それに———、)


 前に感じた違和感の正体に薄々気がつき始めたアザリアは、この美しい王宮に蠢く恐ろしい残忍さに、冷酷さに、全身がひりつくのを感じた。
 寸暇の油断すらも許されない空間であることに気づくまでに、1年も必要としてしまった。


(情けなさすぎるわ………、
 気を使えば、神経を研ぎ澄ませば、こんなにも分かりやすいのに)


 全身に組まなくまとわりついてきている殺気、死の気配、

 そして、

 ———僅かな死の香り。

 今この瞬間も、おそらく近くで誰かが死んでいっている。


 恐ろしくて、怖くて、全身が震える。
 意味がわからないくらいに呼吸が苦しい。

 エメラルドのペンダントを握りしめ、アザリアはゆっくりと呼吸を落ち着けていく。

「………大丈夫。
 わたくしは大丈夫。

 何があっても、———死なない」

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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

 
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