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52 あってはならないこと
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———コンコンコン、
「………どうぞ」
入ってきたアルフォードは何かを言うでもなく、アザリアの方に一直線にやってきて、アザリアをぎゅっと抱きしめた。
人肌の暖かさに、アザリアは安堵の息をこぼす。
「………何か、あったのか?」
彼がどこまで知っているのか分からない以上、アザリアは深く踏み込めない。
今は、何が地雷で何が大丈夫なのかでさえも曖昧で、一瞬の選択ミスが命に関わる可能性すらも大いに存在している。
けれど、無知もあまりにも危険だ。
だからこそ、アザリアは慎重に、慎重にくちびるを湿らせて、凍りついた喉で声を出す。
「王家には、………大きな、大きな秘密が、ありますわ」
声が、カスカスに震えている。
「国家の存亡に関わるほどに、大きな」
瞳孔が開く。
身体が、極限の緊張状態に置かれる。
「ガーネットには、お気をつけて、ください。
あの色を見たら、あの色に関わる事象には、手を出さない方がいい」
アザリアの物言いに不信感を抱いたであろう。
怖いもの知らずの暗殺姫がここまで怯えることが、普通のことではないと、賢い彼ならばちゃんと理解してくれることであろう。
だから、アザリアは深いことを話さない。
どこで、誰が聞いているかも分からない今この状況で、危ないことを口にできるほど、アザリアの肝は据わっていない。
「アザリア」
耳元で優しく囁かれた言葉に、甘やかすかのように丁寧に丁寧にアザリアの薔薇色の癖っ毛を梳くしぐさに、くちびるが歪な形を描く。
意味が分からないほどの安心感が逆に怖い。
初めて会った時から、そうだった。
暗殺者と暗殺対象という歪で醜く、不安定な関係性なのにも関わらず、アザリアは彼の隣にいる瞬間に信じられないほどの安心感と多幸感を抱いてしまった、
そんなこと、———あってはならないのに。
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
「………どうぞ」
入ってきたアルフォードは何かを言うでもなく、アザリアの方に一直線にやってきて、アザリアをぎゅっと抱きしめた。
人肌の暖かさに、アザリアは安堵の息をこぼす。
「………何か、あったのか?」
彼がどこまで知っているのか分からない以上、アザリアは深く踏み込めない。
今は、何が地雷で何が大丈夫なのかでさえも曖昧で、一瞬の選択ミスが命に関わる可能性すらも大いに存在している。
けれど、無知もあまりにも危険だ。
だからこそ、アザリアは慎重に、慎重にくちびるを湿らせて、凍りついた喉で声を出す。
「王家には、………大きな、大きな秘密が、ありますわ」
声が、カスカスに震えている。
「国家の存亡に関わるほどに、大きな」
瞳孔が開く。
身体が、極限の緊張状態に置かれる。
「ガーネットには、お気をつけて、ください。
あの色を見たら、あの色に関わる事象には、手を出さない方がいい」
アザリアの物言いに不信感を抱いたであろう。
怖いもの知らずの暗殺姫がここまで怯えることが、普通のことではないと、賢い彼ならばちゃんと理解してくれることであろう。
だから、アザリアは深いことを話さない。
どこで、誰が聞いているかも分からない今この状況で、危ないことを口にできるほど、アザリアの肝は据わっていない。
「アザリア」
耳元で優しく囁かれた言葉に、甘やかすかのように丁寧に丁寧にアザリアの薔薇色の癖っ毛を梳くしぐさに、くちびるが歪な形を描く。
意味が分からないほどの安心感が逆に怖い。
初めて会った時から、そうだった。
暗殺者と暗殺対象という歪で醜く、不安定な関係性なのにも関わらず、アザリアは彼の隣にいる瞬間に信じられないほどの安心感と多幸感を抱いてしまった、
そんなこと、———あってはならないのに。
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