完 暗殺姫は、今日も溺愛王子を殺せない

水鳥楓椛

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78 負けられない戦い

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 アルフォードの叫びに、殺気に、アザリアは身を縮こませた。


(………わたくしは、彼の苦しみの一端にさえも、触れていなかったのね………………)


 自分が彼の悲しみに関係があるとなんとなく気がついたアザリアは、彼らを見ていられなくて、目線を下に下げた。


「許さない。
 あんただけはッ!絶対に許さない!!」


 ———きいぃっ!!


 剣の刃が擦れる耳障りな音が響く。

 優秀な暗殺者であり殺気にも慣れているアザリアでさえも怖気付いてしまう殺気は、あり得ないぐらいに濃密だ。


「はっ!
 あんたが愚王だって言う情報はやっぱり誤りだったようだ」

「………それしきのことで引くのか」

「いいや、愛する人を、俺のリアを2回も殺そうとしたんだ。
 その対価、命をもって払ってもらう」


 1歩も引かぬ戦い。
 圧倒的実力の鬩ぎ合い。

 僅かな狂いさえも許されないような戦いに、アザリアは静かに魅入った。

 けれど、次の瞬間にはうまいこと鍵開けをした手足の高速から抜け出し、ナイフを握っていた。


「っ、させないっ!!」


 アザリアが武器を握る先は、ハンドラー、否、紅鬼。

 崇高な戦いに立ち入ろうとする無礼者に、アザリアはナイフを握りしめる。


「へぇ~、あれの鍵を開けてみせるとは。ここ1年で随分と強くなったようだ」


 そう言ったハンドラーから繰り出される攻撃は、信じられないほどに重い。

 受け止めるだけでも両手両足が痺れる。


(まけ、られない………!!)


 視界の端で汗を垂らしながら必死に戦いアルフォードを見て、アザリアは彼との“殺し愛”を思い出し、攻撃の精度を上げていく。

 1つ1つ攻撃を繰り広げる度、技を繋げる度、耳元では、彼の優しいアドバイスが聞こえてくる。


(わたくしは、———負けない)


*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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