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4 彼との再会
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次の日の朝、つまり旅を開始してから6日目の朝、ネージュはこれでもかというほどにうずうずふらふらとしていた。侍女のエリアンヌはそんな主人を微笑ましそうに眺めていて、その視線に気がつくたびにネージュは頬を赤く染めた。
[そんなに殿下がお越しになるのが楽しみなのですか?]
[そ、そんなんじゃないわ]
プイッと横を向いて、ネージュは扉の入り口をじっと見つめる。
自由気ままな奔放王子さまがやってくることが楽しみだなんて、そんなことあるわけがない。ネージュはいじいじと部屋中満タンに置かれているプレゼントボックスを撫でながら、そわそわとしていた。
とんとんとエリアンヌによって唐突に肩を叩かれた。
「?」
首を傾げると、彼女は手話で扉にノックがあったと伝えてくれる。
ネージュは決めていた。彼との再会は、ネージュの声を皮切りに開始すると。だから、ネージュはここ数年で必死になって練習した声を上げる。
「どうぞ」
上手にできるか分からなくて怖くて、声が震えた気がした。
扉がゆったりとしたタイミングで開かれ、ふわっと光が入り込んでくる。きらきらと輝く陽光に照らされて、眩しい光を纏った青年が入ってくる。
太陽を反射する見事なまでにくすみのない金髪に、幼き頃よりも深くなってルビーよりもガーネットに近くなった切長の瞳。均等に鍛え上げられた肉体は細くしなやかだ。
《久しぶり、ネージュ》
ふわっと微笑んだ彼は本当に美しくて、眩しくて、ネージュの瞳からぽろっと一筋の涙がこぼれ降ちた。
くちびるの動きでなんて言ったのかは分かるが、それでもやっぱり彼の声を聞きたかった。彼と会いえた嬉しさと彼の声が聞こえない悲しさに苛まれながらも、ネージュは必死になって笑う。
彼はネージュのアクアマリンの瞳からこぼれ落ちた雫を拭き散った。
[ネージュは泣き虫だなぁ]
「!?」
両手を丁寧に動かした彼に、ネージュは慣れた仕草でぱぱっと両手を動かして返した。
[オリーは手話を使えるの!?]
「は、早いと分かんないよ………」
[あ、ごめん………]
ゆっくりと手を動かして返すと、オリオンはほっとしたようにくちびるを動かした。そんなオリオンににっこりと笑って、ネージュは部屋中にあるお土産をぐるっと指差した。
「これ、オリーへのお土産よ」
「!!」
悪戯っぽく笑って声を出すと、オリオンは驚いたように目を見開いた。お互いにお互いを驚かせ合うことを繰り返しながら、ネージュとオリオンは10年という会えなかった月日を埋めるようにお互いを教え合う。
[ネージュ、やっぱり話せるんだ!!さっきの『どうぞ』ってネージュの声だよね!?]
「うふふっ、そうだよ」
[やっぱり、耳が聞こえてないなんて分かんないくらいにに上手だよ!!]
「ありがとう」
にっこりと笑ってネージュは色々なお土産を彼の前に自ら運んでいく。可愛らしいラッピングのものから味気ない紙の包み、素朴な木箱や陶器の壺なんかもある。
[す、すごい量だね]
[そう?オリーが送ってきていたものに比べたら、どうってことないと思うけれど………]
彼が贈ってくるものはそもそも桁が違うのだ。
大粒のルビーやガーネット、アクアマリン、黄金やプラチナ、その他高価な品物ばかりが贈られてきていた。贈り物の値段に触れるのは好きではないが、やっぱり彼はお金遣いが荒い。
そんなことを考えていたら、オリオンは全ての品物を空けて身につけられるものを限界まで身につけていた。
(成金………?)
自分で選んだプレゼントを渡しておいてなんだが、全部身につけたら成金にしか見えない。
でも、顔がいい故に許されるように見えてしまった。
惚れた弱みとはこのことかと考えながら、神妙な顔をしてしまう。
こんなにイケメンな彼が、どうして難聴のネージュと婚約し続けてくれているのかと不思議に思ってしまう。
だからだろうか、ネージュは声に出してしまった。
[………それにしても、よく難聴の私なんかと婚約し続けられたわね]
[そんなのは当たり前だよ。だって、僕にはネージュだけなんだよ。僕にとってネージュは全てであり、ネージュがいない世界に僕の居場所なんてないからね。だから、ーーー逃げようなんて思わないでね?]
穏やかな微笑みなはずなのにどこか不穏な色を宿した瞳でオリオンはぎゅっとネージュのことを抱きしめる。まるで逃がさないとでも言いたげに強く抱きしめてきたオリオンをネージュは大丈夫だと伝えるように抱きしめ返す。
[そろそろ出発しましょう。日が暮れてしまうわ]
にっこりと笑うとオリオンは穏やかに頷いてネージュを馬車にエスコートしてくれた。もちろん、宿のお部屋を出る前に成金の格好は辞めさせて必要最低限の物だけを身につけてもらった。
アクアマリンのアクセサリーばっかりを身につけていたのは、ネージュはこの際何も考えないことにした。
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読んでいただきありがとうございます🐈🐈⬛🐈
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