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1章. 出逢いと影
5. 庇護欲 ※
先程俺がいた場所は患者用のものだったようだから、今は移動してカレルがいつも寝ている寝台の上にいる。視えないせいで彼の混乱している顔とか、恥ずかしがっている顔が視れないのは、何だか勿体無いというか──いや、ではなくて、俺だけ醜態を晒したのは不平等だから、勝手に押し倒している。
「ん、……ルイス、」
「いいから口を開けて」
「う」
彼の口の位置がわからないから、指を滑らせて唇に当てる。……ここか。ついでに、彼は眼鏡をしているようだったから外しておいた。ちゅ、と彼の唇に口付けて、バードキスを何度かした後そのまま舌を滑らせた。男同士だからといって、別に気にしない。軍人の仲間同士で抜いたことくらいあるし、戦闘ばかりの生活をしていると溜まるものは溜まるから、男と寝たことなど幾らでもある。勿論、上でも下でもだ。
「ぁ、……」
「ん」
存外にカレルが可愛らしい声を漏らすものだから、興が乗った。話してみて人として悪い奴ではないのは十分わかったし、味覚の件がなくても同じ男として気持ち良くさせてやってもいいと、柄にもなく思う。
自分の舌で彼の逃げようとする舌を追って、ゆるゆると優しく撫でるように舐めた。いつも誰かと寝る時ならさっき飲んでいた飲み物とか、苦い煙草の味がすることが多いのだが、今は味覚がないから何の味もしない。
「……大丈夫か?」
「……。は、はあ……。はい……、というか、おれは男ですが……?」
「俺は軍人だぞ? 戦闘ばかりしていて溜まらない軍人がいると思うか? 手っ取り早く欲を発散するには男相手が都合が良い。だから慣れてる。……が、カレルは医者だし男は慣れていないか?」
なら、悪かった。と謝りつつも、彼の耳を撫でるように触れる。それだけでびくりと反応するのだから、男どころか女性相手も慣れていないな、と理解した。
「なくは、ないですが……」
「特に気持ち良くはなかった? 挿れられる側だったのか」
「そう、ですね……。挿れる側なら、まあ気持ち良いんでしょうが……。という訳で、おれを抱いても楽しくないと思いますよ……?」
「それは俺が決める。それに、そう言われると気持ち良くしたくなるぞ、俺は」
お前のセックスがいまいちだと言われるのはやはり男としていただけないし、負けず嫌いだからそう言われると何が何でも気持ち良いと言わせたくなる。下腹部付近まで手を滑らせてみたが、カレルは白衣のようなものを着ているらしく、邪魔なのでひとまずそれを脱がせにかかった。
「ええ、本気ですか……?」
「あまり乗り気にならないなら、今俺は味覚がないし舐めたって構わな……。……十分、ここは乗り気のようだが?」
「……」
白衣を脱がせて下腹部に触れると、誤魔化しようがなく彼のものは勃っていた。羞恥からか抵抗されないのをいいことに、そのままズボンと下着を下げて、熱くて硬いそこに触れる。
「手だけなのもな、……何だか俺が無理に進めていて悪い気がするし、舐めるぞ? 噛んだことはないから、心配するな」
「え、ちょ、……あ、っ」
手だけだと痛いかもしれない、と思いまずは全体を唾液で濡らすように舐めた。あとは彼のいいところを探るように、優しく、時には強く押すように舐めていく。
「う、……はあ、っ……、う、そ……」
「ぅ、ん。何がだ?」
「排泄するところ、ですよ、そこ……、あ」
「萎えるようなことを言うな。だから、俺は今味覚がないからどうとも思わない。申し訳ないと思っているなら、早く感じて気持ち良くなって、イけ」
「あ、……っ。う、ま、すぎて……」
「……は、……でそう?」
そりゃあ男なんだから男の気持ち良いところはわかるだろ。あとやはり今味覚がないから、躊躇なく舐めれることが大きいんだろうな。余裕のなさそうなカレルの声を聞いて、できる限り舌と口と、あと手も使って扱いてやる。
「ぅ、あ」
呻くような、喘ぐような声を聞いている限り、ちゃんと気持ち良くなっているらしい。視えていない分、彼が痛くならないように、歯が当たらないように、触覚と聴覚をしっかり使って、彼の熱を高まらせていく。
「で、る……。ぁ、ルイス……!」
「出していい。俺だってイくところを見られたんだ、……ん、は。ほら、はやく」
「っ、……! あ、──」
「ぐ、」
気遣う割に俺の頭を自分のものに押し付けるな、全く。若干呆れつつも気持ちはわかるから、口で彼の精液を受け止めて、──そのまま彼の影に手を突っ込んだ。
「ん──っ?!」
「やっぱり、イくときに干渉できるんじゃないか。……なあ、思った以上に影の中にものがごろごろ転がっててわからないんだが? どれだ……」
「い、たい。い、……! ルイス……っ」
「わ、悪い──あ」
あまりに悲痛な声を出すものだから、あと、俺も影に入られる時死ぬほど痛かったことを思い出して思わず彼の影から手を抜いてしまった。……もう入れなくなってる。やってしまった。
でも、感覚は掴んだ気がする。何となく、俺の味覚らしき気配を見つけた。……自分で何を言っているかわからなくなってきたな。何だか、こう、青い、ような──?
「う、……う……」
「わ、ちょ。な、泣いてるのか……? 悪かった、痛かったよな。もう今日はしないから……」
ぐすぐすと泣き始めるカレルを宥めるようにして、そっと身体を寄せる。そして、何となく──優しく、触れるだけのキスをした。
「ん。そう、じゃなくて。人にイくところを見られる気持ちも、影に入られるのが、どれだけ気持ち悪くて痛いのかも、わかって……っ」
「……もしかして、俺のことを心配してくれているのか?」
「うん……っ」
うん、うんって。かわい──いや、子供みたいだな。どうにもカレルに泣かれると調子が狂う。逆に言うと、俺が泣いた時もカレルはこんな気持ちだったということだろうか。……それは……、心配するな、確かに。
「いいよ。怒ってないし、俺も貴方に同じことをしてしまったから。ごめん、悪かった。泣かないでくれ。な?」
「う~~、ルイスの味覚、かえってきてない……」
「そんなものは後で──」
「う~?!」
「そ、それは後でいいから」
何だこの人は。泣くとこうなるのか……?! やめてくれ、庇護欲が凄く湧く。この存在に無体を働いたと思うと死にたい気持ちになってくる。よしよし、と優しく髪を撫でて、指で涙を拭う。支えるようにして起き上がらせて、あやすように抱き締めた。……はあ、仕方ないな。
「次は貴方がしていいから──、何かもう、いい。今更だ。俺を使え、それで気持ち良くなっていいから」
「やだ。……嫌です」
「はあ?! もう、どうしろと──」
「おればかりされるのは嫌です。どうせおれがイかないと貴方に味覚を返せないなら、貴方も気持ち良くなって欲しい」
「な……」
頭を抱えた。どうしたらいいんだ、このお人好し。すっきりしたらオッケーの男共の方が余程扱いやすいぞ。……はあ。溜息が何度も漏れて、仕方がない。
「わかった、わかったから。でも次は、だぞ。次は俺を貴方がしたいようにしていい。申し訳ないって言うんなら、優しく抱いてくれ。……だが、俺だってやられっ放しは嫌だ。交代もしたい。……それでいいか?」
「……はい。……ありがとう」
「いいや、大丈夫。……ご飯でも、食べるか?」
焦ったって仕方がないしな。味覚がないにせよ、食べないと身体は保たない。こくり、と彼が頷くのを感じて、またぐしゃり、と髪を撫でてから、できる限り右足に負担がかからないように立ち上がった。
~*~
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