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2章. 消えた一族
9. 姿
「いっ、……!!」
痛がるカレルに申し訳ないと思いつつも、石のように硬い、丁度手のひら1つ分くらいのサイズのそれを、片手で持ち上げる。思ったよりでかいな。女性や子供の手のひらじゃない、大人の男の手だぞ?……五感の1つである味覚が丸ごと奪われたら、こんなサイズになるのか。他の石のようなものはこんなに大きくなかったから、恐らくバレない程度に摘み喰いされた体力や精神力だろう。
「一応取り出せた、が……何だこれは。青色の鉱石……? みたいな形をしているな。これを俺の中にどうやって戻せと……?」
蝋燭の揺らめく炎のようにぼんやりと青く光っているそれは、触れると何だかあたたかい感じがした。そして、自分のものであるということが何故だかひしひしと伝わってくる。……戻し方が全くわからない。まあいいか、ひとまず取り出すことはできたのだから、それよりも。
「カレル。大丈夫か?」
「ん……? な、……っ、……」
「どうした?」
「う……! きもち、わるい……」
「な、……貴方の能力は貴方自身には使えないのか?」
「使えな、……ぅ、え」
「カレル!」
酷く気分の悪そうな顔で、目を閉じてしまったカレルを抱き締めて、上半身を起こしてやる。もし吐きそうなのだとしたら、寝ている姿勢だと喉に詰まらせるかもしれないからだ。身体を冷やさないように、近くにあったブランケットを下半身に掛けた。上半身は、悪いが俺の体温で我慢してもらおう。
「すみま、せ……」
「いい、無理して喋るな。……耐えられるか? 無理しなくていい、味覚はしばらく預けていてもいいんだぞ」
そうして喋っていると、カレルの影が揺れ動くようにしてまたあのバケモノのような形になっていくのが見えた。まずい。やはり味覚を失くした飢餓感に耐えられないのか?
「……いえ、……大丈夫、です。というか、あの……もしかして、そこにおれの影、います?」
「! 視えるのか?」
「目を凝らせば凄くぼんやりと……?」
「本当か。しかし急にどうして……。なあ、お前。カレルに姿を視せることはできないのか?」
俺がそう言うと、カレルの影がどことなく嫌そうな目つきになった気がする。意外に感情ありそうだな、こいつ。目と口だけしかないからよくわからないが。……一つ目になったり二つ目になったりするし、いつも目と口の位置が違うし。
「お前自身の意思で隠れてるなら、もうカレルはお前の存在を知ってしまったし、もう今ぼんやりと見えているらしいし、出てきたらどうだ?」
影は暫く逡巡した後、瞬いた。わかった、ということだろう。カレルが近くに現れた影を見てか、酷く驚いたような顔をしてびくりと跳ねる。……本当に影自身の意思で隠れていたんだな。じゃあ、やはりどうして俺だけには見えていたのか疑問が残るが……今知る術が無い以上、後々わかるだろう。
「わ、わ。こんなのなんですか……?! おれの影! ええ……??」
そう言われた影は不満げな目で、触手のように伸ばしたものでカレルの頬をぺちりと叩いた。
「……いたい」
「こんなのとか言うからだ」
頬を押さえているカレルを見て、俺は呆れたように笑った。そして影は、今度は何かを訴えるように俺を見てくる。
「どうした?」
問うと、急に大口を開けるものだからびっくりした。カレルも俺の横で驚いた顔をしている。こんな間近で口を開けられると、ちょっと怖いよな、流石に。……やはり腹が減っているのだろうか。
「……今から精力を渡そうとしていたんだが、それで間に合いそうか? 優しく気持ち良くしてやりたいから、もう少しだけ待ってくれると嬉しいんだが」
「る、ルイス……言い方……」
「ん?」
「いえ……何でもないです……」
何か変な言い方をしただろうか。首を傾げつつ影を視ると、わかった、というようにまた瞬いた。最初の時のように無理矢理奪って来ようとしないのを鑑みるに、今日の昼くらいに体力を半分渡していたから、味覚がなくなったとはいえ少しだけ待つ余裕はあるのだろうか。
「終わった後、それでも足りないようだったら精神力を半分渡すよ。それでいいか?」
「ルイス、そんなに……」
「暴走されるよりよっぽどいいだろう?」
「それは、まあ、そうなんですが……。ううん、口はあるけど喋れないんですね、おれの影」
「そうみたいだな。雰囲気でしか言いたいことがわからない」
俺とカレルを交互に視た後、影はしゅるしゅると、まるで蛇のような動きでカレルの元に戻って行った。……さてこの雰囲気で、どうセックスしろと? するしかないのはわかってるんだが、勃つのか、俺は。
「……。……し、します、……か?」
恥ずかしいのか耳まで紅潮したカレルが、意図してはいないようだがこちらを上目遣いで視てきているのが目に入る。──あ、全然いけるな、これ。
「する。なんだかんだ、俺も貴方のことが好みみたいだ」
単純な自分の思考に苦笑しつつも、ズボンの中でゆるく勃ち上がった俺自身のものを、ぐり、とブランケットを剥いでカレルのものと合わせる。貴方で興奮しているのだと、ちゃんとわかるように。
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