雨のち晴れ

朔羅那弥

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身内

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今日一日で、何徹もしたくらいの疲れが出た…。

こういう日は、蓮さんのとこへ行く。
お世話になりっぱなしで申し訳ないけど…。

蓮さんの家のチャイムを鳴らした。
中からバタバタした音が聞こえた直後に、ドアが開く

「おっ、やっぱり来たね。おかえり。」
「ただいま、蓮さん。やっぱりって何?」
「うん?あぁ、琉生から連絡あったし、話を聞いてあげてってね。」
「琉生伯父さんには、バレたわけか。」
「アハハ。でも、心配してたよ。無理させちゃったなとも話してた」
「そう思うなら、商談中に呼ばないで欲しい」
「君の会社に貢献したいんだよ。伯父バカなんだよ。」

いろいろ話しながら、部屋の中へと入っていく。
蓮さんは琉生伯父さんの番だ。幼い頃からお世話になっていた。日常生活の基礎を教わったりと第二の母みたいな人だ。

「…で、どうしたのさ。」
「疲れた……。αの人達の押しの強さが疲れる」
「そんなにグイグイ来たの?透に迫るとか珍しいね」 
「そうなんだよ。仕事の時は、大抵ゴマをするか、下手な感じで話す人が多いし。多分βと思われているようだし。」
「大概はそんな感じだね。透は何か感じたりしなかったの?」
「胡散臭いしか……。」
「アハハ、ハッキリ言うね。αは取り繕うのが上手いからね。自分を隠そうとすることにも長けているだろうね。そんな大企業にいるなら。」
「まぁ、そうだろうね。秘書の人も、一癖二癖もありそうだった。」
「…ふーん、そっか。Ωとして、何か感じるものも無かったの?」
「…特段何も感じなかったかな。αだろうなぁってしか思わなかったな。」
「相変わらずだな。もしかすると、相手の方が気づいたのかな?うーん。」
「そんな深く考えなくていいって。蓮さんと違って、Ωの機能はないんだからさ。」

何ともないように蓮さんに話すと、蓮さんはちょっと不機嫌な顔をする。

「透はちゃんとしたΩだよ。ちゃんと愛してもらえる可愛い子だよ?」
「身内贔屓はいらないよ。でも、気持ちは嬉しいよ。」
「全然伝わらないね。まぁ、それが透の良さかな。」
「ねぇー、今日泊まってもいい?そういえば、琉生伯父さんは?」
「もちろん、泊まっていいよ。琉生はもう少ししたら、帰ってくるよ。」
「…あれ?玲生れいは?」
「今日は合宿でいないよ。バレーに夢中な男子高校生ですから。」
「親バカだね。蓮さんも。」
「透だって、僕の可愛い子供だよ?」
「迷惑ばっか掛けてるけどね。」
「玲生も透も良い子だよ。」

伯父夫夫の子は俺よりも10個下の16歳。
あの騒ぎにも、物怖じしなかった強者でもある。今は、バレーボールに夢中らしい。

蓮さんと遅めの夕食を取りながら、談笑する。

「蓮さんは、俺の体質のこと、正直どう思う?」
「うん?ただの体質。」
「それだけ?変とか珍しいとかないの?」
「ないよ。Ωだって、十人十色でしょ?僕だって、発情期は重めだけど、薬は合うものがあるし。人それぞれだよ。たまたま、フェロモンが出ない、発情期が軽いだけでしょ?もしかしたら、透の体質は運命の番にしか効かないのかもだし。運命の番と出会える人生だから、その体質かもしれないよ?」

にこやか笑う蓮さん。ホント、似た者夫夫。この2人には助けられてばかりだ。

「僕だって、琉生と結婚するのは躊躇ったんだよ?子供はできにくい体質だって言われてたしね。琉生は無類の子供好きでしょ?絶対に子供は欲しいと言ってたしさ。でも、体質のことを話したら、透が居るから気にしくていいよ。って言われたんだよ?」
「えっ?俺?」
「僕と出会う前から、君は琉生の特別な子だったんだよ。透にとっては、お節介な伯父にしか思えなかっただろうけどね、透が生まれた時には、この子には絶対寂しい思いはさせたくないって思ったらしいよ?自分の子じゃないのにね。ってな照れながら話してたよ。」
「Ωの子だからかな?琉生伯父さん、αだし。」
「まぁ、何か感じるものはあったんだろうね。弟さんの発情期の辛さも近くで見ていた人だしね。」
「ホント、父さんとは違うね。琉生伯父さんは。」
「教育者として、いろんな子がいるのを見ているし、弟さんのこと溺愛してたしね。」
「そうなの?ブラコンなの?」
「そうでしょ?じゃなきゃ、透を世話をしようとしないでしょ。」
「それもそうか。毎回発情期には迎えに来てくれたしね。」
「だから、弟さんが精神的に病んだ時の琉生は見ていられなかったよ。」
「俺でも無理だった。だから、パートナーを作るのが怖い…。」
「…大丈夫だよ。透はいい子だから、透を理解してくる人が必ずいるよ。」
「…見つかるかな。」 

遠くを見るしかない。苦笑いの蓮さん
そうしていると、玄関から

「ただいま!」

明るい元気な琉生伯父さんの声が聞こえた。

暖かい身内にありがたさを感じた日だった。
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