雨のち晴れ

朔羅那弥

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居酒屋

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不思議なメンツで、いつもの居酒屋へと向かう。
飲むと決めた時は、必ず徒歩で行くようにしているが…、こんな足取りが重いのは初めてだ。

目の前にいる二人のオーラが怖い…。

「へぇ、去年副社長になられたんですか。若いのにすごいですね。」
「そんなことありませんよ。世襲制みたいなもんですから。」
「親の七光りって奴ですか?でも、神宮寺グループは実力がないと難しいって聞きますが。」
「まぁ、実力主義ではあるので、若手でも役職にはつけますね。」
「へぇ、尚更神宮寺さんは実力者ってことですか。」
「そういうわけではないですが。」

二人の会話に入る隙もない。葛城は何か棘があるような…。

なんとか行きつけの居酒屋に着いて、
ちょっとした個室みたいなテーブルへと案内される。

いつもの様に葛城と向かい合って座ろうかと考えていると、葛城が俺の隣に座る。向かい側に神宮寺さんが座った。

「とりあえず、何から頼みます?」

メニュー表を見ながら、聞いてくる神宮寺さん。

「神宮寺さんって居酒屋に行くんですか?」
「へっ?なんですか?普通に行きますよ。」
「なんか高級ホテルとかで食事をするイメージだったので。」
「高級なとこは行きませんよ。舌が安上がりなんで」

イメージが違う感じに思えた。

「まぁ、接待とかでは使いますよ。それに学生時代は他の学生と同じような生活をしろと祖父に言われたので、バイトで生活してましたし。」
「「へぇ、意外。」」
「息ぴったりですね。二人は。」
「まぁ、大学からの付き合いですから。」
「葛城くらいしか話しかけて来なかったよ。」
「えー、同じ大学だったら、俺も話しかけてますよ?」
「今とはまた違うから、それは無いですね。」
「今は垢抜けたもんなー。」

とりあえず話をしながら、互い好きな飲み物と食べ物を注文する。

「梅酒だなんて、可愛いものを飲むんですね。」
「最初は軽いやつがいいだけです。」
「?梅酒って軽いやつでしたっけ?」
「椎名は酒豪ですよ。こっから、日本酒だの焼酎だの行きますから」
「ギャップがすごいですね。」
「教授に付き合うと強くなりますよ」
「それ、椎名だけだから。俺は無理」
「仙城教授…。」
「あの人は、飲兵衛だからな。」
「で、神宮寺さんは強い方ですか?」

からかい口調の葛城。

「そこそこですかね。酒での失敗はないですね。」
「へー。強くないと接待とか大変そうですよね。」
「まぁ、そうですね。」
「で、神宮寺さんは狙ってるんですか?」

変な質問をする葛城に、空気が張り詰める。

「…狙ってないと言ったら、嘘になりますね。」
「なっ!」
「そうですか。それは興味本位ですか?本気ですか?返答次第で、」
「本気です。」
「…コイツを傷つけたら、死ぬ方がマシって思うような復讐しますからね。」
「葛城!?神宮寺さん!?」

本人を置いて、勝手に睨み合っている。

「二人して、何の話をしてるんですか!」
「お前のことだろ!」
「あなたのことですよ!」
「はぁ?」
「鈍すぎる…。」
「危機管理能力はどこに?」
「元々ないですよ。研究一筋なんで、周りなんか見えないですから。」
「よく、無事でしたね。」
「何の話ですか?」
「そのままでいて欲しいような、そうじゃないような。」
「その気持ちはよく分かります。」

急に仲良くなったような二人に、ずっと疑問しかない。

「お待たせしました!ビール2つと梅酒になります!」

店員さんが注文したものを運んできたことで、一旦話が中断する。

「とりあえず、飲みますか。」
「ですね。」

二人に置いてけぼりにされるが、黙って運ばれた梅酒を飲む。

いつの間にか意気投合している二人を他所に黙々と食べたり飲んだりした。
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