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27,知る必要
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翌朝。起床した蓮はダイニングのテーブルに座り、ワンスが用意した惣菜パンにかぶりついていた。
「昨日は心配したよー!さすが回復早いねー」
向かいに座ったイールがそれを見ながら話し
「茶、飲むか?」
ワンスは温かいお茶をカップに入れて、蓮の前に置く。
「ヨイチー、レン君の体調良さそうだよ。今日は出かけないの?」
と、イールはリビングのソファーに座るヨイチに声をかける。
ヨイチはまだ昨日のことを気に病んでいるようで、蓮に触れることもせず、イールとワンスが世話するのを傍観していた。
「行くんだろ」
もぐもぐとパンを食べる蓮が口を開き、ヨイチははっとして顔を向ける。
「玉子焼き、買ってねーし」
ぼそっと言って、またパンにかぶりつく。
「…そうだったな」
その一言で、ヨイチはすべてを許されたように感じた。ふっと笑み、立ち上がる。
「ゆっくり食べていろ、レン。着替えを用意しておく」
蓮の黒髪をなで上げ、額にキスをしてから、リビングを出て行った。
「ありがとね、レン君」
イールがにっこり笑って礼を言い、ワンスも笑みを浮かべる。
「…何が」
蓮はぶすっとして、目を反らした。
その後数日間、ヨイチは蓮を連れて毎日外出した。高級レストランで豪華な食事をさせるだけでなく、劇場で芝居や映画を見たり、流行りのカフェに行ったり、ただ公園を散歩したり。
端から見れば、恋人同士のデートと変わらなかった。帰り際にはマンション近くの屋台で、厚焼き玉子を買うのがお決まりになっていた。
そして、彼らと生活を共にして4週間が過ぎる頃。昨夜から降り始めた冷たい雨が濡らす窓を、蓮はぼうっと眺めていた。雨の日は身体を冷やすだろうと、ヨイチは蓮を部屋に残し、嫌がるイールを連れて買い物に行っている。
蓮の右腕はまだ固定されているが吊ってはおらず、体力も充分で、部屋にいても退屈でしかない。蓮はベッドから立ち上がり、部屋を出た。
ふと、目に入ったのは隣の部屋。この部屋だけはまだのぞいたことがない。イールとワンスが連れ込んだ女(たまに男)と鉢合わせしたくないので、あえて避けていた。昨夜も派手なあえぎ声が聞こえてきたのを思い出す。だが、今は人の気配を感じない。誰もいないなら大丈夫だろうと思い、蓮はドアを開けた。造りは蓮の部屋とほぼ同じだが、クイーンサイズの大きなベッドが中央に置いてある。
そのベッドを見て、蓮はひゅっと息を飲む。裸の女が横たわっていたのだ。気配を感じなかったのに。ぴくりとも動かない、白い四肢。それは、つまり…。
「何をしている?」
背後からの声に、びくっと身体を強ばらせる。
「あまりうろつくな。部屋に戻れ」
と、ワンスがリビングから出てくる。彼はイールより信用されているのか、何かあったら蓮の世話をしろとヨイチに言われ、部屋に残っていたのだ。
「あの、女…死んでる、のか…」
蓮は部屋内を凝視したまま、独り言かのようにつぶやく。
「…ああ、もう1日もつかと思ったが、ダメだったか。今日中に片付けておく。買った女だ。気にするな」
ワンスは蓮の頭越しに部屋内をのぞき、慌てることもごまかすこともなく話す。
「もうすぐヨイチが帰ってくるぞ。部屋に戻っていろ」
そう促しても、蓮はそのまま動こうとしない。
「…レン」
名を呼んでも反応しない。ワンスはため息を抑え、少しためらいながら蓮の背に手をやる。やっと動いた蓮にほっとし、背を軽く押して部屋に連れ戻した。
その夜。
「レン君、どうしたのかと思ったら、見ちゃったんだ」
「ああ…まずかったか?ヨイチ」
淡い灯りの部屋の中で、ワンスは蓮に女の死体を見られてしまったことを話した。蓮は用意した食事に一切口をつけず、言葉も発せず、気絶するように眠ってしまっていた。
「ヨイチ、レン君には僕たちのことをちゃんと話した方がいいんじゃない?」
蓮から聞かれた訳ではないが、イールは自分たちの素性を隠しておくのは限界だと思った。
「レンが知る必要はない」
椅子に座り、眠る蓮を見つめるヨイチは拒否する。
「あるよ。もう色々気づいているだろうし、多分このままじゃ誤解しちゃってるよ。それに、ヨイチがレン君を連れてきたのって、このため…なんでしょ?」
「黙れ。出ていけ」
ヨイチはイールの方を見もしない。
「ヨイチ…っ!」
「イール、行くぞ」
かっとしてヨイチにつかみかかろうとするイールを、ワンスが止める。
「あーもーっ!少しくらい人の言うこと聞いた方がいいよ!」
イールは地団駄を踏むように言いながら、ワンスと共に部屋を出る。
ヨイチはじっと蓮の寝顔を見つめ、哀しげに顔を歪めた。
翌朝。3人が拍子抜けするくらい、蓮はいつもと変わらず目覚めると、用意された朝食を平らげた。杞憂だったかと彼らは安堵したが、蓮がまったく気にしていないとも思えない。
「ヨイチ」
イールはいつものように蓮を連れて外出するヨイチに、玄関で声をかけた。
「レン君、大丈夫そうだし、タイミング見計らって話しちゃいなよ?」
「…話すつもりはない」
こそこそと耳元でささやくが、やはり拒否される。
「もう~っ!何で…っ!」
「?」
「何でもない、レン。行こう」
何の話かと首をかしげる蓮の手をとり、ヨイチは玄関を出る。
「帰って来たら、僕が話すからね!ヨイチ!」
イールは閉まるドアに向かい、大声で言った。
「気分はどうだ?レン」
「ん…フツー」
蓮のいつもと同じ返答に、ヨイチはふっと笑む。自分の選んだ服を着て、左手でこの右腕をつかみ、共に歩く。この日常が気に入っているのだ。それを壊すようなことを、蓮が知る必要はない。
ヨイチはあることを思いつき、今日の行き先を決めた。
「ここで待っていろ。動くなよ、レン」
大通りから外れた路地にある、アクセサリー店。何か買いたいものがあるらしく、ヨイチは蓮を店の前に待たせて店内に入って行った。またガキ扱いしやがってと思いながら、蓮は店のひさしの下から動く。
昨日の雨模様が嘘のように、今日は朝から晴天だ。それでも日陰は寒く、暖かい太陽を見たかった。空を見上げた、その瞬間。
蓮は背後に悪意ある気配を感じたと思うと、口をふさがれ、背中に激痛が走った。頭から爪先まで、ビリビリと強い電流が突き抜ける。
「ぐ、ぅ…っ」
たまらずがくんと膝をつく。
「よし、急げ!」
すると、背後の男が蓮の脇を抱え上げ、もうひとりが両足を持ち上げる。蓮は彼らに見覚えがない。背後の男の手にはスタンガンのようなものが握られていた。人を気絶させられる強力なもののようだが、あいにく蓮はそのくらい耐えられるように鍛えている。
それより、油断していたとは言え、彼らの気配に早く気づけなかったことが悔しい。
「早く!こっちだ!」
他にも仲間がいるらしく、路地奥にあるワゴン車から急かす声が聞こえる。理由はわからないが、蓮をその車に乗せてどこかへ連れて行きたいらしい。
「クソが…っ!」
「うぎゃっ?!」
もちろんそうはさせまいと、蓮は足を抱える男のあごを蹴り上げた。彼は蓮の足を離し、伸びてしまう。
「なっ?!何で…ぐあっ!!」
蓮が気絶していないことに驚く背後の男の顔にも、後頭部で頭突きをくらわせる。彼も鼻血を吹き出して卒倒した。
「何をやっているんだ?!」
異変に気づいた仲間が4人、ワゴン車から降りてくる。彼らは全員拳銃を手にしていた。
「どうせ怪我人だ!撃て!!」
いきなり蓮の足元を狙い、ためらいなく発砲する。
「マジか」
まさか発砲するとは、死ななければいいくらいに思っているのか。蓮は跳んで避け、発射された弾はすべてアスファルトや道端の看板にめり込む。
弾丸を避けた上、蓮の跳躍は頭上を越え、彼らは驚愕する。
「ぎゃっ!!」
「うが?!」
そして、呆然としているうちに構えていた拳銃を蓮に蹴り落とされていた。
「チッ…」
蓮はさすがになまったなと、この程度動いただけで痛む身体に舌打ちする。
「ひ…っひぃい…っ!!」
それでも、彼らに恐怖を与えるには十分だったようで、4人とも痛む手を押さえ、半分腰を抜かしていた。腕を負傷している見た目かわいらしい少年が、武器を持つ複数の大人に怯まず、驚異的な強さで攻撃してきたのだから当然だ。
「俺を、どうするつもりだった?」
「わ、悪かった!殺さないでくれっ!!」
何故わざわざ蓮を狙い、連れて行こうとしたのか。地べたに座りこんでいる彼らにじりっと一歩近寄って聞くが、必死に命乞いされる。
「どうする、つもりだった?」
「ひっ?!話す、話すから、許してくれ!」
イラッとしてにらみつけ、もう一度聞くと、青ざめてようやく話し出す。
「こ…っこの辺りで、最近、かわいい子どもがよく歩いているって聞いて…!拐って売れば、高値がつくだろうって…っ」
ミカビリエの一部では人身売買が盛ん。彼らはめぼしい子どもを街で見つけては拐い、それを生業としている犯罪組織に売っていたのだ。似たような者たちが他にも多数存在し、ヨイチが数日前に言っていたことは大げさではなかった。
「…子ども」
俺のことか?
蓮はウェア王国で王と一緒にいると、幼く扱われがちだが、単独でそう見られているとはショックだった。
「ひぃい?!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「もう二度としない!!」
いっそう目付きが悪くなる蓮を見て、彼らはまた必死に命乞いをし始める。今回ばかりは狙った相手が悪かった。そこへ
「レン!!」
銃声に気づき、アクセサリー店を出たヨイチが走って来る。
「何をしている?!動くなと言っただろう!!」
蓮の肩をつかみ、怒鳴りつけた。
「あ…アイツらが、俺を連れて行こうとしやがったから…」
初めて見るヨイチの剣幕に驚きながら、蓮は地面を這って逃げようとしている彼らを指す。
「…お前に、触れたのか」
「あ?」
「俺のものに、触れたのか…!!」
ヨイチはゆらりと彼らの方を向くと、左目の眼帯を取った。
「昨日は心配したよー!さすが回復早いねー」
向かいに座ったイールがそれを見ながら話し
「茶、飲むか?」
ワンスは温かいお茶をカップに入れて、蓮の前に置く。
「ヨイチー、レン君の体調良さそうだよ。今日は出かけないの?」
と、イールはリビングのソファーに座るヨイチに声をかける。
ヨイチはまだ昨日のことを気に病んでいるようで、蓮に触れることもせず、イールとワンスが世話するのを傍観していた。
「行くんだろ」
もぐもぐとパンを食べる蓮が口を開き、ヨイチははっとして顔を向ける。
「玉子焼き、買ってねーし」
ぼそっと言って、またパンにかぶりつく。
「…そうだったな」
その一言で、ヨイチはすべてを許されたように感じた。ふっと笑み、立ち上がる。
「ゆっくり食べていろ、レン。着替えを用意しておく」
蓮の黒髪をなで上げ、額にキスをしてから、リビングを出て行った。
「ありがとね、レン君」
イールがにっこり笑って礼を言い、ワンスも笑みを浮かべる。
「…何が」
蓮はぶすっとして、目を反らした。
その後数日間、ヨイチは蓮を連れて毎日外出した。高級レストランで豪華な食事をさせるだけでなく、劇場で芝居や映画を見たり、流行りのカフェに行ったり、ただ公園を散歩したり。
端から見れば、恋人同士のデートと変わらなかった。帰り際にはマンション近くの屋台で、厚焼き玉子を買うのがお決まりになっていた。
そして、彼らと生活を共にして4週間が過ぎる頃。昨夜から降り始めた冷たい雨が濡らす窓を、蓮はぼうっと眺めていた。雨の日は身体を冷やすだろうと、ヨイチは蓮を部屋に残し、嫌がるイールを連れて買い物に行っている。
蓮の右腕はまだ固定されているが吊ってはおらず、体力も充分で、部屋にいても退屈でしかない。蓮はベッドから立ち上がり、部屋を出た。
ふと、目に入ったのは隣の部屋。この部屋だけはまだのぞいたことがない。イールとワンスが連れ込んだ女(たまに男)と鉢合わせしたくないので、あえて避けていた。昨夜も派手なあえぎ声が聞こえてきたのを思い出す。だが、今は人の気配を感じない。誰もいないなら大丈夫だろうと思い、蓮はドアを開けた。造りは蓮の部屋とほぼ同じだが、クイーンサイズの大きなベッドが中央に置いてある。
そのベッドを見て、蓮はひゅっと息を飲む。裸の女が横たわっていたのだ。気配を感じなかったのに。ぴくりとも動かない、白い四肢。それは、つまり…。
「何をしている?」
背後からの声に、びくっと身体を強ばらせる。
「あまりうろつくな。部屋に戻れ」
と、ワンスがリビングから出てくる。彼はイールより信用されているのか、何かあったら蓮の世話をしろとヨイチに言われ、部屋に残っていたのだ。
「あの、女…死んでる、のか…」
蓮は部屋内を凝視したまま、独り言かのようにつぶやく。
「…ああ、もう1日もつかと思ったが、ダメだったか。今日中に片付けておく。買った女だ。気にするな」
ワンスは蓮の頭越しに部屋内をのぞき、慌てることもごまかすこともなく話す。
「もうすぐヨイチが帰ってくるぞ。部屋に戻っていろ」
そう促しても、蓮はそのまま動こうとしない。
「…レン」
名を呼んでも反応しない。ワンスはため息を抑え、少しためらいながら蓮の背に手をやる。やっと動いた蓮にほっとし、背を軽く押して部屋に連れ戻した。
その夜。
「レン君、どうしたのかと思ったら、見ちゃったんだ」
「ああ…まずかったか?ヨイチ」
淡い灯りの部屋の中で、ワンスは蓮に女の死体を見られてしまったことを話した。蓮は用意した食事に一切口をつけず、言葉も発せず、気絶するように眠ってしまっていた。
「ヨイチ、レン君には僕たちのことをちゃんと話した方がいいんじゃない?」
蓮から聞かれた訳ではないが、イールは自分たちの素性を隠しておくのは限界だと思った。
「レンが知る必要はない」
椅子に座り、眠る蓮を見つめるヨイチは拒否する。
「あるよ。もう色々気づいているだろうし、多分このままじゃ誤解しちゃってるよ。それに、ヨイチがレン君を連れてきたのって、このため…なんでしょ?」
「黙れ。出ていけ」
ヨイチはイールの方を見もしない。
「ヨイチ…っ!」
「イール、行くぞ」
かっとしてヨイチにつかみかかろうとするイールを、ワンスが止める。
「あーもーっ!少しくらい人の言うこと聞いた方がいいよ!」
イールは地団駄を踏むように言いながら、ワンスと共に部屋を出る。
ヨイチはじっと蓮の寝顔を見つめ、哀しげに顔を歪めた。
翌朝。3人が拍子抜けするくらい、蓮はいつもと変わらず目覚めると、用意された朝食を平らげた。杞憂だったかと彼らは安堵したが、蓮がまったく気にしていないとも思えない。
「ヨイチ」
イールはいつものように蓮を連れて外出するヨイチに、玄関で声をかけた。
「レン君、大丈夫そうだし、タイミング見計らって話しちゃいなよ?」
「…話すつもりはない」
こそこそと耳元でささやくが、やはり拒否される。
「もう~っ!何で…っ!」
「?」
「何でもない、レン。行こう」
何の話かと首をかしげる蓮の手をとり、ヨイチは玄関を出る。
「帰って来たら、僕が話すからね!ヨイチ!」
イールは閉まるドアに向かい、大声で言った。
「気分はどうだ?レン」
「ん…フツー」
蓮のいつもと同じ返答に、ヨイチはふっと笑む。自分の選んだ服を着て、左手でこの右腕をつかみ、共に歩く。この日常が気に入っているのだ。それを壊すようなことを、蓮が知る必要はない。
ヨイチはあることを思いつき、今日の行き先を決めた。
「ここで待っていろ。動くなよ、レン」
大通りから外れた路地にある、アクセサリー店。何か買いたいものがあるらしく、ヨイチは蓮を店の前に待たせて店内に入って行った。またガキ扱いしやがってと思いながら、蓮は店のひさしの下から動く。
昨日の雨模様が嘘のように、今日は朝から晴天だ。それでも日陰は寒く、暖かい太陽を見たかった。空を見上げた、その瞬間。
蓮は背後に悪意ある気配を感じたと思うと、口をふさがれ、背中に激痛が走った。頭から爪先まで、ビリビリと強い電流が突き抜ける。
「ぐ、ぅ…っ」
たまらずがくんと膝をつく。
「よし、急げ!」
すると、背後の男が蓮の脇を抱え上げ、もうひとりが両足を持ち上げる。蓮は彼らに見覚えがない。背後の男の手にはスタンガンのようなものが握られていた。人を気絶させられる強力なもののようだが、あいにく蓮はそのくらい耐えられるように鍛えている。
それより、油断していたとは言え、彼らの気配に早く気づけなかったことが悔しい。
「早く!こっちだ!」
他にも仲間がいるらしく、路地奥にあるワゴン車から急かす声が聞こえる。理由はわからないが、蓮をその車に乗せてどこかへ連れて行きたいらしい。
「クソが…っ!」
「うぎゃっ?!」
もちろんそうはさせまいと、蓮は足を抱える男のあごを蹴り上げた。彼は蓮の足を離し、伸びてしまう。
「なっ?!何で…ぐあっ!!」
蓮が気絶していないことに驚く背後の男の顔にも、後頭部で頭突きをくらわせる。彼も鼻血を吹き出して卒倒した。
「何をやっているんだ?!」
異変に気づいた仲間が4人、ワゴン車から降りてくる。彼らは全員拳銃を手にしていた。
「どうせ怪我人だ!撃て!!」
いきなり蓮の足元を狙い、ためらいなく発砲する。
「マジか」
まさか発砲するとは、死ななければいいくらいに思っているのか。蓮は跳んで避け、発射された弾はすべてアスファルトや道端の看板にめり込む。
弾丸を避けた上、蓮の跳躍は頭上を越え、彼らは驚愕する。
「ぎゃっ!!」
「うが?!」
そして、呆然としているうちに構えていた拳銃を蓮に蹴り落とされていた。
「チッ…」
蓮はさすがになまったなと、この程度動いただけで痛む身体に舌打ちする。
「ひ…っひぃい…っ!!」
それでも、彼らに恐怖を与えるには十分だったようで、4人とも痛む手を押さえ、半分腰を抜かしていた。腕を負傷している見た目かわいらしい少年が、武器を持つ複数の大人に怯まず、驚異的な強さで攻撃してきたのだから当然だ。
「俺を、どうするつもりだった?」
「わ、悪かった!殺さないでくれっ!!」
何故わざわざ蓮を狙い、連れて行こうとしたのか。地べたに座りこんでいる彼らにじりっと一歩近寄って聞くが、必死に命乞いされる。
「どうする、つもりだった?」
「ひっ?!話す、話すから、許してくれ!」
イラッとしてにらみつけ、もう一度聞くと、青ざめてようやく話し出す。
「こ…っこの辺りで、最近、かわいい子どもがよく歩いているって聞いて…!拐って売れば、高値がつくだろうって…っ」
ミカビリエの一部では人身売買が盛ん。彼らはめぼしい子どもを街で見つけては拐い、それを生業としている犯罪組織に売っていたのだ。似たような者たちが他にも多数存在し、ヨイチが数日前に言っていたことは大げさではなかった。
「…子ども」
俺のことか?
蓮はウェア王国で王と一緒にいると、幼く扱われがちだが、単独でそう見られているとはショックだった。
「ひぃい?!ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「もう二度としない!!」
いっそう目付きが悪くなる蓮を見て、彼らはまた必死に命乞いをし始める。今回ばかりは狙った相手が悪かった。そこへ
「レン!!」
銃声に気づき、アクセサリー店を出たヨイチが走って来る。
「何をしている?!動くなと言っただろう!!」
蓮の肩をつかみ、怒鳴りつけた。
「あ…アイツらが、俺を連れて行こうとしやがったから…」
初めて見るヨイチの剣幕に驚きながら、蓮は地面を這って逃げようとしている彼らを指す。
「…お前に、触れたのか」
「あ?」
「俺のものに、触れたのか…!!」
ヨイチはゆらりと彼らの方を向くと、左目の眼帯を取った。
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