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32,恨み
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「それでも断られたら、知らねーぞ…」
承諾してしまったが、体力を食われることは恐怖にかわりない。蓮は少し後悔しつつ、ぼやく。
「大丈夫!僕がフォローするから!」
「あ、そ…」
自信ありげに言うイールにげんなりする。
「なら…ひとつ、知りてーことあんだけど」
蓮はふと思い出し、交換条件のように聞いてみた。
「おや、今日はあのかわいい男の子は一緒じゃないのかい?」
マンション近くの惣菜を売る屋台。店主はいつものように厚焼き玉子を買いにきたヨイチに、気軽に話しかける。
「…ああ」
蓮のことを、たとえ何の下心がなくてもたずねられるのが気に入らず、ヨイチは不機嫌に返事をする。
「そうそう。ついさっき、あの子を探しているって人らが来たよ」
「っ!!…いつ、だ?」
その話に、心臓が跳ねるかと思うほど動揺する。
「つい2時間前くらいかな。民族衣装みたいな格好のふたりだったよ。外国人じゃないかな?外国人に知り合いいるのかい?…おっと、知らせるなって言われたんだった。内緒にしといて」
店主は悪びれもせず話す。
「…っ」
ヨイチは後ずさりながら周りを見渡し、その気配を探る。そして、自分の気配をひそめると走り出した。
「あ、おぅい?玉子焼きはいいのかーい!」
店主の呼び止める声も聞かず、マンションにいる大事な『自分のもの』のことだけを考えていた。
「僕たちがウェア王国に行った理由…ね。話してもいいかな?」
蓮が知りたかったこと。彼らと共にいると決めた蓮にはどうでもいいことではあるが、彼らの素性を知って、聞いておこうと思ったのだ。イールは少しためらって、背後のワンスを見上げる。
「かまわんだろ。隠しておく意味もない」
「そうだね。いいよ。さっきの話の続きにもなるし」
ワンスがうなずき、イールもうなずいて蓮の方に向き直る。
「僕たちは色んな国を転々とした。なんか、あの国の実験に参加したって時点で、死んだことになってたんだよね。死人じゃ故郷の国にも帰れないし、パスポートも作れないし、そうするしかなかった。ただ、ヨイチがあの島から金眼をいくつか持ち出しててさ、一生遊んで暮らしても余るくらいの金額で売れてお金には困らなかったよ」
蓮は謎だった彼らの収入源がわかり、納得する。
「で、ようやく落ち着いたのがここ、ミカビリエだった。不法滞在ではあるけどね。大きい国だからいい意味で人との関わりが希薄だし、人身売買が盛んで食料にも困らないし」
捨てる場所もあるんだよと、イールは便利グッズの紹介をするかのように話す。
人を『食糧』と自然に言うあたり、やはり蓮は受け入れ難い。それに、ウェア王国では数十人が行方不明になっただけで大騒ぎになる。森を隔てただけの隣国なのに、ひどい差だと思う。
「ある日ね、ヨイチが突然言い出したんだよ。『最高の糧を食ってみたくないか』って。あのウェア王国に入って、金眼保有者を拐ってこようってさ。もちろん、冗談だと思ったよ。金眼保有者って普段コンタクトレンズで隠しているから見分けつかないでしょ?それ以前にウェア王国に入るのも不可能じゃないのって」
普通の人はそう思うよねと、イールは笑う。
「あの深い国境の森に入るなんて考えもしなかったけど、意外とイケてさ。ヨイチは前からたまにウェア王国に入ってたらしくて、この目の力を使えば、金眼保有者だけ行動を操れるって気づいたんだって。僕とワンスはうまく使えないけどね。ちなみに金眼保有者はホント最高だったよ。みんな美人だし、すぐ死んじゃわないしさ~」
うっとりするイールを蓮はじとっとにらむ。
「ただ、不特定多数に向けてだと誘き寄せられなくて、暴走しちゃったりして安定しないみたい。最初はその保有者の暴走でウェア王国があわてふためいているのを見てるのも楽しかったけど、だんだん落ち着いてきちゃったしねー。それに、相当金眼の力を消耗するし、ウェア王には通用しないしで、その頃のヨイチはかなりイライラしてたよ」
イールはため息をつく。
「ヨイチはあの国を恨んでいたからな。故郷に見捨てられた祖母と母から引き継いだウェア王国への恨み…それを晴らすため、あの国を混乱させたかったんだと思うぞ。俺たちには糧を拐うという名目をたててな」
ワンスが話を付け足す。
「ふーん…」
蓮は彼らがウェア王国に来て混乱をもたらした理由は大体わかった。国そのものに恨みを持つ心理は理解出来ないが、ヨイチの祖母と母親には同情したくなる。確かに、ウェア王国は都合の悪いことを排除し、隠す傾向にある。
「でもね、ヨイチ変わったんだよ。キミと出会ってから」
「あ?」
「ウェア王国への恨みつらみなんか忘れちゃったみたいに楽しそうでさ。レン君のおかげで、今のヨイチは…」
「レン!!」
イールの話を遮り、ドアが壊れるかの勢いで開いた。ヨイチが肩で息をしながら、部屋にかけ込んでくる。
「ヨイチ…?!」
「うわ?!ビックリしたぁっ!」
驚くワンスとイールを押し退け、ヨイチはベッド上の蓮を抱きしめる。
「は…っ良かった…。ちゃんと、いるな…」
心底安堵した様子で蓮の髪をなで、ほほに触れる彼に、蓮は何事かと思う。
「ヨイチ…レン君がどうかした?」
倒れた椅子を直しながら、イールが聞く。
「レンを探している者が、近くに来ている」
ヨイチは蓮の頭ごと、ぎゅっと胸に抱えこむ。
「えっ?」
「!」
イールも蓮もその話には驚く。
「ウェア人がミカビリエに入国したという噂は本当だったのか」
ワンスがつぶやく。人身売買の場で噂話として、ウェア王国の一般人が入国していると耳にしていたのだ。
「何でレン君を探しているの?レン君をこっちに差し出したのって、国の決定でしょ?」
イールはてっきりウェア王国が蓮を犠牲に、国と金眼保有者を守ったのだと思っていた。それなのに探しに来るとは訳がわからない。
「レン…まさかお前、勝手に城を出たのか」
ワンスは勘づき、蓮を見ると目を逸らされ、図星かと思う。
「えーっ?!ちょっとレン君、そうなの?!」
イールは苦笑いして、蓮の顔をのぞきこむ。
「そんなことどうでもいい。レンを探している者がいるのは事実だ」
最も恐れていたことが迫っている。ヨイチは存在を何度も確かめるように、蓮の頭をなでる。
「なぁ、そいつらに会わせてくんね?」
「…っダメだ」
ぼそっと願いを口にする蓮を身体から離し、ヨイチは首を横に振る。
「別に、逃げねーよ。話つけたら、すぐ…」
「ダメだ!!」
「っ!」
ヨイチの予想以上の剣幕に、蓮はびくっと身体を強ばらせる。簡単に許さないとは思っていたが、こんなに怒りを表すとは。
「ワンス、イール。今夜、ここを出る。準備しておけ」
「…ああ」
「うん…わかった」
静かに命じるヨイチに、ふたりはうなずいた。
オレンジ色の夕陽が街を染め、建物や人々の黒い影が長く伸びる。カーテンを締め切った部屋で、ヨイチはベッドに添い寝して、蓮の黒髪をなでていた。蓮を見つめるヨイチの右目は色が薄く、時おり焦点が合わなくなるように感じる。
「レン、前にも聞いたが行きたいところはあるか?お前は風呂が好きだから、オンセン…とか言う大きな風呂が有名な国はどうだ」
と、ヨイチは旅行の計画を提案するように話す。
「それとも、遊ぶ場所が多いところがいいか。ギャンブルに興味はあるか?」
蓮の返事がなくとも話し続け、不安を隠そうとしていることが嫌でも伝わってくる。
「…なぁ…っん」
見かねた蓮が口を開くと、何も言わせないとばかりに唇を合わせ、深くキスをする。
「今夜は休めないかもしれない。今のうちに眠っておけ」
と、頬をなでるヨイチの手は震えていた。
こんな時に眠ることなど出来ないけれど。蓮はそんなヨイチを見ていられなくて、目を閉じた。
「ヨイチ、大丈夫かな…」
隣の部屋では、イールが蓮の部屋側の壁を見つめ心配そうにつぶやく。
「レン君がうまく言ってくれるといいんだけど」
「…そうだな」
ヨイチの頑固さは知っているし、ウェア王国から追っ手が来ていることがわかり動揺している彼が素直に従うとは思えないが。ワンスは気休め程度に同意する。
「ところでさー、ワンスはどこ行きたい?僕はこの国か、この国だなー。美人が多いって話だよ」
打って変わって明るくなり、広げた地図を指すイールに呆れ、ワンスは蓮のための携帯食をカバンに詰めた。
「本当に、奴らはレンを連れて出るのか?」
一方。隣のマンションの屋上に身を潜め、蓮がいるはずのマンションを見守るのはクラウドとシオン。ふたりは例の屋台をずっと張っており、訪れたヨイチが走って行くのを追い、この高層マンションに入るのを確認していた。
「ええ、間違いなく」
シオンはヨイチの慌てる様を見て、今夜中に逃亡を試みるはずだと確信する。
「絶対助けてやるからな、レン…っ」
今も蓮が彼らに虐げられていると思っているクラウドはマンションをにらみ、改めて救出を誓う。
シオンがもうひとつ確信したのは、彼らが蓮と共にいる目的。それはおそらく、とても単純で、とても厄介な理由。蓮の奪還は捜索より困難かもしれない。
「はい、必ず」
シオンはその考えはクラウドに伝えないと決め、同意した。
その向かいにある高層マンションの屋上。そこにも、身を潜めてふたりを見つめる者がいることには誰も気づいていなかった。
承諾してしまったが、体力を食われることは恐怖にかわりない。蓮は少し後悔しつつ、ぼやく。
「大丈夫!僕がフォローするから!」
「あ、そ…」
自信ありげに言うイールにげんなりする。
「なら…ひとつ、知りてーことあんだけど」
蓮はふと思い出し、交換条件のように聞いてみた。
「おや、今日はあのかわいい男の子は一緒じゃないのかい?」
マンション近くの惣菜を売る屋台。店主はいつものように厚焼き玉子を買いにきたヨイチに、気軽に話しかける。
「…ああ」
蓮のことを、たとえ何の下心がなくてもたずねられるのが気に入らず、ヨイチは不機嫌に返事をする。
「そうそう。ついさっき、あの子を探しているって人らが来たよ」
「っ!!…いつ、だ?」
その話に、心臓が跳ねるかと思うほど動揺する。
「つい2時間前くらいかな。民族衣装みたいな格好のふたりだったよ。外国人じゃないかな?外国人に知り合いいるのかい?…おっと、知らせるなって言われたんだった。内緒にしといて」
店主は悪びれもせず話す。
「…っ」
ヨイチは後ずさりながら周りを見渡し、その気配を探る。そして、自分の気配をひそめると走り出した。
「あ、おぅい?玉子焼きはいいのかーい!」
店主の呼び止める声も聞かず、マンションにいる大事な『自分のもの』のことだけを考えていた。
「僕たちがウェア王国に行った理由…ね。話してもいいかな?」
蓮が知りたかったこと。彼らと共にいると決めた蓮にはどうでもいいことではあるが、彼らの素性を知って、聞いておこうと思ったのだ。イールは少しためらって、背後のワンスを見上げる。
「かまわんだろ。隠しておく意味もない」
「そうだね。いいよ。さっきの話の続きにもなるし」
ワンスがうなずき、イールもうなずいて蓮の方に向き直る。
「僕たちは色んな国を転々とした。なんか、あの国の実験に参加したって時点で、死んだことになってたんだよね。死人じゃ故郷の国にも帰れないし、パスポートも作れないし、そうするしかなかった。ただ、ヨイチがあの島から金眼をいくつか持ち出しててさ、一生遊んで暮らしても余るくらいの金額で売れてお金には困らなかったよ」
蓮は謎だった彼らの収入源がわかり、納得する。
「で、ようやく落ち着いたのがここ、ミカビリエだった。不法滞在ではあるけどね。大きい国だからいい意味で人との関わりが希薄だし、人身売買が盛んで食料にも困らないし」
捨てる場所もあるんだよと、イールは便利グッズの紹介をするかのように話す。
人を『食糧』と自然に言うあたり、やはり蓮は受け入れ難い。それに、ウェア王国では数十人が行方不明になっただけで大騒ぎになる。森を隔てただけの隣国なのに、ひどい差だと思う。
「ある日ね、ヨイチが突然言い出したんだよ。『最高の糧を食ってみたくないか』って。あのウェア王国に入って、金眼保有者を拐ってこようってさ。もちろん、冗談だと思ったよ。金眼保有者って普段コンタクトレンズで隠しているから見分けつかないでしょ?それ以前にウェア王国に入るのも不可能じゃないのって」
普通の人はそう思うよねと、イールは笑う。
「あの深い国境の森に入るなんて考えもしなかったけど、意外とイケてさ。ヨイチは前からたまにウェア王国に入ってたらしくて、この目の力を使えば、金眼保有者だけ行動を操れるって気づいたんだって。僕とワンスはうまく使えないけどね。ちなみに金眼保有者はホント最高だったよ。みんな美人だし、すぐ死んじゃわないしさ~」
うっとりするイールを蓮はじとっとにらむ。
「ただ、不特定多数に向けてだと誘き寄せられなくて、暴走しちゃったりして安定しないみたい。最初はその保有者の暴走でウェア王国があわてふためいているのを見てるのも楽しかったけど、だんだん落ち着いてきちゃったしねー。それに、相当金眼の力を消耗するし、ウェア王には通用しないしで、その頃のヨイチはかなりイライラしてたよ」
イールはため息をつく。
「ヨイチはあの国を恨んでいたからな。故郷に見捨てられた祖母と母から引き継いだウェア王国への恨み…それを晴らすため、あの国を混乱させたかったんだと思うぞ。俺たちには糧を拐うという名目をたててな」
ワンスが話を付け足す。
「ふーん…」
蓮は彼らがウェア王国に来て混乱をもたらした理由は大体わかった。国そのものに恨みを持つ心理は理解出来ないが、ヨイチの祖母と母親には同情したくなる。確かに、ウェア王国は都合の悪いことを排除し、隠す傾向にある。
「でもね、ヨイチ変わったんだよ。キミと出会ってから」
「あ?」
「ウェア王国への恨みつらみなんか忘れちゃったみたいに楽しそうでさ。レン君のおかげで、今のヨイチは…」
「レン!!」
イールの話を遮り、ドアが壊れるかの勢いで開いた。ヨイチが肩で息をしながら、部屋にかけ込んでくる。
「ヨイチ…?!」
「うわ?!ビックリしたぁっ!」
驚くワンスとイールを押し退け、ヨイチはベッド上の蓮を抱きしめる。
「は…っ良かった…。ちゃんと、いるな…」
心底安堵した様子で蓮の髪をなで、ほほに触れる彼に、蓮は何事かと思う。
「ヨイチ…レン君がどうかした?」
倒れた椅子を直しながら、イールが聞く。
「レンを探している者が、近くに来ている」
ヨイチは蓮の頭ごと、ぎゅっと胸に抱えこむ。
「えっ?」
「!」
イールも蓮もその話には驚く。
「ウェア人がミカビリエに入国したという噂は本当だったのか」
ワンスがつぶやく。人身売買の場で噂話として、ウェア王国の一般人が入国していると耳にしていたのだ。
「何でレン君を探しているの?レン君をこっちに差し出したのって、国の決定でしょ?」
イールはてっきりウェア王国が蓮を犠牲に、国と金眼保有者を守ったのだと思っていた。それなのに探しに来るとは訳がわからない。
「レン…まさかお前、勝手に城を出たのか」
ワンスは勘づき、蓮を見ると目を逸らされ、図星かと思う。
「えーっ?!ちょっとレン君、そうなの?!」
イールは苦笑いして、蓮の顔をのぞきこむ。
「そんなことどうでもいい。レンを探している者がいるのは事実だ」
最も恐れていたことが迫っている。ヨイチは存在を何度も確かめるように、蓮の頭をなでる。
「なぁ、そいつらに会わせてくんね?」
「…っダメだ」
ぼそっと願いを口にする蓮を身体から離し、ヨイチは首を横に振る。
「別に、逃げねーよ。話つけたら、すぐ…」
「ダメだ!!」
「っ!」
ヨイチの予想以上の剣幕に、蓮はびくっと身体を強ばらせる。簡単に許さないとは思っていたが、こんなに怒りを表すとは。
「ワンス、イール。今夜、ここを出る。準備しておけ」
「…ああ」
「うん…わかった」
静かに命じるヨイチに、ふたりはうなずいた。
オレンジ色の夕陽が街を染め、建物や人々の黒い影が長く伸びる。カーテンを締め切った部屋で、ヨイチはベッドに添い寝して、蓮の黒髪をなでていた。蓮を見つめるヨイチの右目は色が薄く、時おり焦点が合わなくなるように感じる。
「レン、前にも聞いたが行きたいところはあるか?お前は風呂が好きだから、オンセン…とか言う大きな風呂が有名な国はどうだ」
と、ヨイチは旅行の計画を提案するように話す。
「それとも、遊ぶ場所が多いところがいいか。ギャンブルに興味はあるか?」
蓮の返事がなくとも話し続け、不安を隠そうとしていることが嫌でも伝わってくる。
「…なぁ…っん」
見かねた蓮が口を開くと、何も言わせないとばかりに唇を合わせ、深くキスをする。
「今夜は休めないかもしれない。今のうちに眠っておけ」
と、頬をなでるヨイチの手は震えていた。
こんな時に眠ることなど出来ないけれど。蓮はそんなヨイチを見ていられなくて、目を閉じた。
「ヨイチ、大丈夫かな…」
隣の部屋では、イールが蓮の部屋側の壁を見つめ心配そうにつぶやく。
「レン君がうまく言ってくれるといいんだけど」
「…そうだな」
ヨイチの頑固さは知っているし、ウェア王国から追っ手が来ていることがわかり動揺している彼が素直に従うとは思えないが。ワンスは気休め程度に同意する。
「ところでさー、ワンスはどこ行きたい?僕はこの国か、この国だなー。美人が多いって話だよ」
打って変わって明るくなり、広げた地図を指すイールに呆れ、ワンスは蓮のための携帯食をカバンに詰めた。
「本当に、奴らはレンを連れて出るのか?」
一方。隣のマンションの屋上に身を潜め、蓮がいるはずのマンションを見守るのはクラウドとシオン。ふたりは例の屋台をずっと張っており、訪れたヨイチが走って行くのを追い、この高層マンションに入るのを確認していた。
「ええ、間違いなく」
シオンはヨイチの慌てる様を見て、今夜中に逃亡を試みるはずだと確信する。
「絶対助けてやるからな、レン…っ」
今も蓮が彼らに虐げられていると思っているクラウドはマンションをにらみ、改めて救出を誓う。
シオンがもうひとつ確信したのは、彼らが蓮と共にいる目的。それはおそらく、とても単純で、とても厄介な理由。蓮の奪還は捜索より困難かもしれない。
「はい、必ず」
シオンはその考えはクラウドに伝えないと決め、同意した。
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