黄金色の君へ

わだすう

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8,凌辱の理由

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 腹筋をなでていた手がするすると上がっていき、胸元に触れる。

「お前、何でこんなことをされるか知ってるか?」
「知ってるんじゃないスか?」

 ふいに蓮の疑問がわかったかのようにクラウドが聞き、蓮が答える前にハレが言う。

「いや、知らないだろ。ウォータ大臣はそういう肝心なことは黙っている人だからな」

 クラウドはそれを確かめるように蓮を見つめる。

「…っ」

 父親のことといい、シオンにされたことといい、蓮にその理由は知らされていない。手のひらの動きにびくびくしながら、蓮は黙ってクラウドから目を反らす。その反応にクラウドはふっと笑い、周りの大臣たちに聞こえないよう蓮の耳元へ口を寄せる。

「王子の『金眼』の話は聞いただろ?あの目の価値は宝石としてだけじゃない」

 耳にかかる息にも感じてしまいそうで、蓮はぎゅっと目を閉じて耐える。

「保有者との性行為は狂うほど快感らしい。昔、略奪が頻発していたってのも聞いただろ?目を奪わずに拐っていくのもいたくらいだ。しかもあの目は感情の高まりや性的な快感で輝きを増し、価値が上がる。だから、保有者は間違いなく犯されるんだ」
「ぅう…っ」

 耳たぶを甘噛みされ、胸をなでていた手がそこの突起に触れ、びくっと身体が跳ねる。

「つまり『身代わり』のお前は慣れておく必要があるってわけだ」
「ぁあ、ん、あ…っ」

 指先で押しつぶされた突起が硬く過敏になっていく。男の自分が乳首で感じるなんて。薬物のせいであっても悔しくて、情けなくて。周りの大臣たちがそれを見て息を飲むのもわかり、あまりの羞恥でまた涙があふれる。

「そういうことだから、そんな顔するな。ヨクしてやるから…楽しめよ」

 クラウドの鋭い目が優しげになり、蓮の流れる涙をそっとぬぐう。

「では、下も脱がしましょうか」

 クラウドは大臣たちにそう宣言して蓮のズボンに手をかける。蓮はびくっと身体を強ばらせ、大臣たちは身を乗り出して蓮の下半身に注目する。これから、何人もの男たちに張り詰めた自身をさらされてしまう。

「い、や…っ!」

 ほとんど動けないとわかっていても、蓮は身体をよじらせた。その時。

「そこまでです」

 闘技場の扉前に立つ、護衛長シオンの声が彼らの動きを止めた。皆、蓮の姿に夢中で扉が開いたことにも気づかなかった。

「こういったことは議会で禁止と決まったはずですが、大臣方」

 ゆっくり歩み寄りながら、シオンは静かに言う。

「いや、これは…っ」

 大臣たちはあたふたと言い訳を探す。

「クラウド、レン様には必要ないとお話ししましたよね」

 ハレはバツが悪そうにクラウドを横目で見、クラウドは目を反らして舌打ちする。

「ふん…そこの大臣に頼まれたんだよ。王子と同じ顔した奴がよがるのを見たいってな」
「な…っ?!」

 悪びれもせずクラウドが言い、指差された大臣は裏切りに絶句する。

「後程、ウォータ大臣にすべて報告します。それなりの処分をご覚悟ください、大臣方」

 シオンの有無を言わせない威圧的な口調に、国務大臣たちは青ざめて次々とくずおれた。

「レン様、申し訳ありませんでした」

 シオンは呆然とする蓮の横に膝をつき、脱いだコートでそっと蓮を包んだ。





「お、ろせ…っクソ…!」
「お断りします」

 蓮は黒いコートに包まれ、廊下を足早に歩くシオンに抱かれていた。お姫様抱っこはかなり恥ずかしくてもがくが、余計強く抱きしめられてしまう。

「歩けないのでは?」
「ぐ…」

 シオンの言う通り、頭の中はぐらぐらと回り、立っていることも出来ない蓮はぐっと唇を噛むしかなかった。

 シオンは蓮の自室に入ると鍵を閉め、蓮を優しくベッドへ降ろす。

「ふ…はぁ…はぁ…っ」

 身体が熱くて苦しくてしょうがない。こんな強い薬物の服用経験はないが、このはち切れそうなモノを何度かヌケば落ち着くはず。蓮はなんとか腕を動かし、身体を包むコートに手をかけた。

「お手伝いいたします」

 シオンがその手を押さえ、自らのコートを蓮からはぎ取る。

「も、いい…出てい…っ!!」

 これ以上他人に醜態をさらしたくない。蓮は押さえられた手を振り払おうとするが、つかみ上げられ、唇もふさがれた。すでにサングラスを外していたシオンの舌は蓮の口内を探るように動きまわる。それがあまりに気持ちよく、蓮はシオンのキスにすがっていた。

「はぁ…っあ…」

 唇がゆっくりと離れ、思わず名残惜しむ声が出てしまう。

「違法の薬物ですね。どこで誰が手に入れたのか…。これをおひとりで抜くことは不可能ですよ」

 シオンの涼しげな左目が蓮を見下ろす。

「どうして欲しいのですか、レン」

 どうして欲しいか。呼吸すらままならず、つかまれた震える手はもう何か握ることも出来ない。このままでいたらきっと狂い死ぬ。選択肢はひとつだった。

「た…すけ、ろ…」
「承知しました」

 涙をこぼし消えいりそうな声で求める蓮に、シオンはにこりと微笑んだ。




「あ!はぁっ!んぁっ!」

 声を抑えることなど忘れ、蓮はシオンから与えられる快楽にひたすら喘いでいた。何度精を吐き出したのか、シーツも蓮の下半身もグショグショに濡れている。

「はぁ…っレン…」

 シオンは蓮の求めるがまま、己で貫き身体を揺さぶる。

「気持ちいい、ですか…っ」
「ん、んぅ!い、いい…っ!」

 胸の突起をなでられるときゅうっとシオンを締めつけ、何度もうなずく。

「あぁっ!…った、イク…!!」
「いいですよ…っ何度でも」

 熱いものが蓮の身体をびくびくと震わせ、シオンは前立腺めがけて己を突き入れる。

「んん!ああぁーっ!!」

 モノに触れずとも、蓮は薄くなった精を腹に散らし絶頂した。

「はぁ…っ!ふぁ…っシオン…!」

 それでもまだうずく身体がシオンを求め、震える腕を肩に伸ばす。

「はい、キス…ですか?」
「ん、んん…っ」

 真っ赤なほほで大きな目を潤ませ、伸ばした腕で必死に引き寄せようとする様はあまりにいじらしい。

「レン…」

 シオンは愛しげに目を細め、キスに応える。当初の薬物の苦痛から解放する、という目的を忘れ、シオンも蓮との行為に夢中になっていた。








 翌朝。焼きたてのパンのいい匂いが鼻をくすぐり、蓮は目を覚ました。

「おはようございます」

 と、温かいお茶をカップに注ぐのはシオン。テーブルにはパンやサラダなど朝食が並んでいた。

「ご気分はいかがですか」
「…最悪」

 シオンは相変わらず何事もなかったかのように爽やかで、蓮はげんなりして枕に顔を伏せる。

「そうですか。ご朝食を召し上がれば良くなりますよ」

 カチャと慣れた手つきでソーサーにカップを置く。

「ところで、抱えていた疑問は解決しましたか、レン」

 昨日。薬物に浮かされながらも蓮はクラウドの話を大体理解していた。『金眼』のもうひとつの価値。街で絡んできた男たちの様子も納得出来る。それから、2年前の父親の行動。ちょうど先代の王が死んだ頃。それを知った父親は息子の出立の日が近いと悟り、他人に辱しめられるくらいならばと決行しようとしたのだろう。そして、シオンの行為は義務と言っていいことだったのだ。

「…知らねー」

 それでも、必要なことであっても認めたくはない。伏せたまま、ぼそっと否定した。

「そうですか」

 シオンはそんな蓮の気持ちを察してか、それ以上追及はしなかった。

「う、ぐ…」

 蓮はいい加減身体を起こそうとするが、あまりのダルさと腰の痛みに出るのはうめき声。

「食べさせて差し上げましょうか」
「っ!触んな…っ」

 シオンが背に手を添えようとすると、反射的にその手を払う。

「昨夜のあなたは素直でかわいらしかったのですが」
「~っ!!」

 昨夜の醜態が嫌でも思い出され、赤く染まるほほを隠すようにまた枕に顔を埋める。

「では、ご自分でゆっくりとお召し上がりください」

 シオンはそんな蓮を見つめ、くっと口角を上げる。

「本日は午後から我々王室護衛との顔合わせがありますので、よろしくお願いいたします」

 午後までに起き上がれるようになるだろうか。そう思いながら、部屋を出るシオンを見送った。
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