黄金色の君へ

わだすう

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23,入浴

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「誰かとご入浴されたいのであれば、私がお付き合いいたしますよ」
「断る」
「明日の午前中はいかがでしょうか」
「聞けよ」
「では明日、お部屋までお迎えに参ります」
「何しに来たんだよ、お前」

 シオンとの噛み合わない会話に蓮の方が折れて、話題を変える。

「そうでした。ご相談したいことがあります。本日の会議で我々王室護衛の人員補充を行うことが決定いたしました」
 
 と、シオンは持っていたファイルを開く。

「ふーん」
「多人数の補充になるため、公募を行います。前例のないことなので、どのような者がどのくらい集まるか予想がつきません。また、良からぬ考えを抱いた者が紛れこむ可能性もあります。そこで、あなたにも選考に参加していただきたいのです」
「何で?お前がいればわかるんじゃねーの」

 何か企んでいる者を判別するくらい、シオンなら簡単なことではないかと蓮は面倒くさげに言う。

「人員の選考は我々護衛に一任されているのですが、通常の業務に加え選考も、となると人手が明らかに足りません。どうかご協力をお願いいたします」

 と、シオンは頭を下げる。この事件で共犯と見なされた護衛は解雇が決定し、40人以上いた人員は半数の20数名になってしまった。戦力の大きい王子付きの護衛ふたりもしばらく復帰は難しい。猫の手も借りたい状況なのだろう。

「はいはい、わかったよ」

 蓮はしぶしぶながらもうなずく。

「ありがとうございます。必然的にこちらに滞在する期間が長くなってしまいますが、よろしいでしょうか」
「今さら聞くな」
「そうですね」

 シオンはからかうように同意し、口角を上げた。








「レン」

 蓮が部屋に戻ると、王子はベッド上で体を起こしていた。

「大丈夫か」
「うん」

 ベッドに腰かけた蓮に笑顔でうなずく。

「…悪かったな、無理させて」

 蓮はうつむき、ぼそっと謝る。シオンに言われたのもあり、きちんと謝りたかった。

「ううん、僕のためにやってくれたんでしょう?ありがとう」
「ティル…」

 逆に礼を言ってくれる王子にぐっとくる。

「また入ろうな」
「え?あ、う、うんっ頑張る!」

 蓮がにっと笑って言い、王子はどもりながらも気合いを入れてうなずいた。











 翌日。

「ホントに来やがった」
「お約束したでしょう」
「してねーし」

 今日やっと外部からの講師が城に来れるようになり、午前中、王子は専用の勉強部屋で講義を受けている。自室にひとりでいた蓮はシオンの訪問に面食らう。

「では参りましょうか」
「行かねーよ」
「王子がお戻りになる前に済ませなければなりませんね」
「だから、聞けよ」
「入浴後、お茶を飲む時間くらいは欲しいですよね」
「…」

 やはり、噛み合わない会話に蓮の方が折れ、しぶしぶついて行くことにした。




 今日も浴場に他の利用者はいない。これから誰か来る可能性も低いだろう。嫌な予感しかせず、蓮は服を脱ぎながらため息をついた。ふと、横に並んでいるシオンを見上げる。数回抱かれているにも関わらず、彼の裸体を見るのは初めてだった。細身であるのに、しっかりとついた無駄のない筋肉。端正な顔立ちと結い上げたストレートの長髪にも合い、モデルのようである。

「どうしました?」
「…別に」

 見られていることに気づいたシオンに右目をあらわにした素顔で見つめ返され、蓮はさっと目を反らした。




 今日はしぶしぶ来たが、蓮は元々風呂好き。広い浴槽は手足を伸ばせて気持ちがいい。こんな浴場があったなら、もっと早く利用すれば良かったと蓮は湯船に口元まで浸かりながら思う。

「レン」
「っ?!な、何…」

 シオンがぴったりと背中に身体をつけてきて、蓮はびくっとして離れる。

「私も初めてなのですよ。誰かと共に入浴するのは」
「ふーん…」
「あなたにはこの右目も見せることが出来ました。あなたになら、すべて、さらけ出してもいいと思えるのです」

 と、シオンは傷ついた右目に手をやる。

「護衛長として、あなたの世話役として…こんな感情を抱くのは間違っているかもしれません。ですが、昨日、私個人としてこの気持ちを伝えようと決めました」
「…」

 彼は何を言おうとしているのか。お互い全裸という無防備な状態で聞いていいのか。シオンの表情も口調も今までにない真剣さで怖くなってくる。

「私はあなたを愛しています」

 まっすぐに見つめてくる、ひとつしかないシオンの瞳。蓮にとっては予想外過ぎる告白で。それがどういう意味か、頭は理解を拒んでいた。好意ということはわかる。でも、蓮と王子がお互いに思っているものとはきっと違うものだ。

「あなたを愛することを…許していただけますか」

 許可を求められ、更に混乱する。再び背中にシオンの肌が触れ、背後から抱きしめられる。身体がびくっと跳ねるが、もう離れられなかった。

「ゆ、許す…って?」

 シオンの息づかいを耳元で感じながら、おそるおそる聞く。

「嫌ですか、ご迷惑ですか」
「…っわ、わかんねーよ…」

 聞かれても何と答えたら良いのか。シオンのものか自分のものかわからないが、うるさいほど鼓動が脈打つ。

「嫌ではないのですね。今はそれで十分です。ありがとうございます」

 シオンは微笑むと蓮のあごをつかみ、斜め上を向かせる。ほほを真っ赤に染めて目を泳がせる蓮の唇に、自分のそれを重ねた。

「…っふ、ん…」

 口内を探り、舌を絡ませればびくびくと蓮の身体が震え、抱きしめるシオンの腕をぎゅっとつかむ。深くキスをしたまま、その腕を蓮の下半身へ滑らせた。

「ん?!ぅんーっ!」

 予感はしていたがまさか浴槽内でコトに及ぼうとするとは思わず、蓮はジタバタともがく。

「…っここでは嫌ですか?」
「は、はぁ…っ!あた、り、めーだ…っ」

 やっと唇が離れ、息を乱しながらぐいっとシオンの胸を押す。

「しかし、せっかくですから少し我慢してください」
「いぃっ?!」

 シオンは構わず蓮を向かい合わせに抱き寄せ、臀部の割れ目へ強引に指をねじ込む。

「あ…!待っ…ナカ、入る…っ!」

 2本の指が後孔に入り、動かされると風呂の湯が身体の中に入ってしまいそうで蓮は腰をよじらせる。

「このくらい大丈夫ですよ」
「くぁ…っや…!」

 根拠のないことを言うシオンの指が、わざと湯を入れるかのようにぐぱぐぱと開閉する。震える腕で押しのけようとする蓮が胸元にすがっているようにしか見えず、シオンは笑みがこぼれる。

「ん、んん…!」

 指先で過敏な粘膜と前立腺を念入りに刺激され、蓮のものは触れれば達してしまいそうなほど湯船の中で反り返る。

「も、い、イきた…っ」
「もうですか?お湯を濁らせるわけにはいきませんので、待ってください」
「うぁっ?!」

 根元をぎゅっと握られて大きく身体が跳ね上がり、見開いた黒い瞳に涙がにじむ。

「では、入れますよ」
「ああ?!」

 指が抜かれ、シオンの反り起つものが自身にこすりつけられる。

「や、む、無理…っあぁぁあーっ!!」

 拒否の言葉など受け入れられず、腰を抱えられてそれが湯と共に勢い良く押し込まれる。

「ん…っ!ひぁ!あ、んんっ!」

 せき止められて射精出来ないまま、激しい抽挿に身体を揺さぶられ、水しぶきが上がる。湯の熱さ以上に熱いシオンのもので、中から焼かれてしまいそうだった。

「もっと…っ締めて、私をイカせないと…ここがお湯でいっぱいになってしまいますよ、レン…?」
「ひ…っ!いや、やぁ…!」

 つながった部分に指先をはわせて脅かすように言われ、蓮は嫌々と首を振ってシオンの胸元を押す。

「さぁ、早く」
「ぅあっ!く、ぁああーっ!!」

 びくびくと震えるものを強く握ったまましごかれ、強制的にシオンのものを締め付ける。

「ん…いいですよ、レン…」

 シオンは締め付けの心地よさに微笑み、蓮の唇に軽く口づける。

「んん…っ!」

 そして、うめくとガクガクと痙攣する蓮の中に欲を注いだ。

「は…っはぁ…!も、い、イカせ、ろ…っ」

 蓮は息も絶え絶えに、自身を握るシオンに求める。熱くて苦しくておかしくなりそうだった。

「先に身体を洗いましょうか」
「な…っ?」

 シオンが笑顔で言い、耳を疑った。





「くぅ…!ん、ぅう…っ」

 蓮は洗い場でシオンの膝に乗せられ、まだ解放されない自身の先端をぐりぐりと指先でこすられていた。ピリピリとしみるボディソープの泡が先走りと混ざって脈打つ竿に流れる。後孔からはシオンに注がれた白濁と湯が、意思に反して身体を震わせる度に吹き出てくる。

「ふふ…たくさん出てきますね。粗相をされている気分ですか?」
「っ!う、ふぅ…っ」

 背後のシオンがからかうように笑い、羞恥のあまりぼろぼろと涙がこぼれ落ちる。身体も心も限界で、言い返すどころか言葉も出ない。顔を伏せ、ただ震えて泣くしかなかった。

「…申し訳ありません。イジメ過ぎましたね」

 シオンは謝り、真っ赤なほほに流れる涙を舌でぬぐう。

「イキたいですか?」
「ん…っイキた、い…」

 唇まで舌をはわせながら聞けば、蓮はそれを追うように舌を出して絡ませる。

「承知しました」

 シオンはにこりと微笑むと蓮の太ももを抱え上げ、再び起ち上がっていた自身の先端を後孔に当てる。

「っあ?!ぅああぁっ!!」

 そのまま落とされ、自分の体重で奥深くまで突き刺さり、蓮は悲鳴と同時に絶頂する。

「…っ」

 シオンはがくんと身体を預けてくる蓮を抱きしめ、手を伸ばしてシャワーを出す。冷たいシャワーが多量に吹き出た白濁を洗い流していく。蓮はびくびくと身体を震わせながら、気絶してしまっていた。

「愛しています、レン…」

 シオンは満足げに大きく息を吐いて囁き、また唇を重ねた。
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