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45,5日目
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「ティリアス様…っお、お手を取らせて、頂いて…っよろしいでしょうか…っ?」
ある国の首長は緊張というより、びくびくと怯えながら蓮に頭を下げる。蓮がうなずき、手を差し出すと震える手でそっと触れ、すぐに離す。
「あ…っありがとうございました!!ありがとうございましたっ!!」
そして、必死に礼を言いながら数名の従者と逃げるように謁見の間を出て行った。
王位継承式2日目。昨日のある国の皇太子がティリアス王子に歯向かい、殺されかけたという話がもう世界中に伝わったらしい。下手なことをして王子の機嫌を損ない、殺されては敵わないと先ほどの首長のように怯えながらやって来て、逃げるように去って行く来賓が今日は多い。それでも、面会はしたいので辞退する国はないが。
蓮はこの面会に何の意味があるのかと思っていたが、ウォータ大臣らが言っていたように王子の金眼を狙う国や組織を減らすという意味では必要だなと思い直す。それこそおとぎ話のような『ウェア王国は世界最強』を世に知らしめることになったのだから。同時に執拗に手に触る者が減って良かったと思っていた。
「…ふー…」
2日間で約80ヵ国の来賓との面会と披露宴をようやく終え、さすがに蓮も椅子から立ち上がれず、ため息しか出ない。ウォータ大臣らは先ほど「明日からの国民へのお披露目もこの調子で頼むぞ」と、機嫌よく応接間を後にしていた。
「お疲れさまでした、レン様」
護衛たちがあまりに疲れていそうな蓮に声をかけようかためらう中、シオンは変わらず労いの言葉をかける。
「立てるか?おぶってやろうか」
「断る」
クラウドは心配しながら顔をのぞきこむが、拒否される。
「さぁ、お掴まりください」
「いいって…」
シオンに手をつかまれ、腰に手を添えられて蓮はうっとうしがりながらも身を任せて立ち上がる。
「何で俺の時ははっきり拒否するんだよ、レン?!」
それが納得いかないクラウドはふてくされる。そこに
「レン様ぁああ!!」
いつもの耳障りな叫び声が応接間に響く。肋骨の負傷で休んでいたカンパは今日仕事復帰し、城外の護衛任務からダッシュで戻ってきたのだ。
「私、復帰初日にあなたのお美しい姿を拝見でき、非常に幸せで…っぐふぉっっ?!」
勢いよく突進してきた彼に、蓮はシオンの手を離れて回し蹴りを脇腹にくらわす。
「あ、ワリ」
カンパを見直していた蓮だが、反射的にやってしまったようではっとして謝る。
「い、いぇ…素晴らしい、蹴り、で、す…っ」
カンパはまたヒビ入ったかもと脇腹を押さえて悶絶し、失神した。
「大丈夫そうだな」
「ええ」
蓮のいつもと変わらないキレのある蹴りを見て、クラウドとシオンは安心していた。
3、4日目の国民へのお披露目パレードも色々ありながらも無事終了し、5日目の今日は唯一交流のある友好国、メンバル王国へ訪問予定だ。
「なぁ、本当に俺でいいのか」
メンバル王国へ向かう飛行機内。小型ではあるが、さすが王室御用達。柔らかなリクライニングチェアにゆったり座れ、揺れも少なく快適だ。
「王サマは王子に会いたいんだろ?」
王子に扮した蓮は、同伴している外交担当の国務大臣に改めて聞く。機内には操縦士のふたりを除くと大臣、補佐官、大臣付きの護衛、そして蓮とその護衛をするシオンとクラウドの計6名が乗っていた。
これから彼らが訪問するメンバル王国は先代のウェア王の友人、メンバル王が治めている国。子のいないメンバル王は幼い頃から知るティリアス王子を息子のようにかわいがっており、もちろん継承式に招待する予定であったが、先代のウェア王が亡くなった頃に大病を患い、現在も外出は困難であるらしい。しかし、かわいがっていた王子の晴れ姿をどうしても見たいという連絡があり、お忍びという形で今日の訪問となったのだ。
「心配することはない、レン君。王子と君は全く同じ顔だ。成長した姿をお見せ出来ればメンバル王は安心なさるだろう」
と、大臣は穏やかに言う。
「メンバル王は重いご病気だそうですし、王子は国外に出れません。仕方のないことです」
シオンも言い聞かせるように話す。
『金眼』に関する情報は友好国であろうと提供しておらず、王子本人が訪問出来ないことはメンバル王も知らない。
「ふーん…」
その説明は事前に聞いていたが、他の外国の来賓と違い、下心も何もなく純粋に王子の王位継承を祝いたい人を騙すようで蓮は気が引けるのだ。
「何だよ、そんなこと気にしているのか?お前らしくないな」
「るせーよ」
隣に座るクラウドにからかうように頭をなでられ、ますます仏頂面になる。
「お話は私がするから、君は黙って王に顔をお見せすればいい。気にすることは何もない」
「ああ…」
蓮は大臣にうなずきながらも何となく嫌な気分で、小型飛行機の窓から上空の景色を眺めた。
数時間後、飛行機は時間通りにメンバル王国の空港に到着した。
「お待ちしておりました、ティリアス様」
地に降り立つと、メンバル王の使者らしい男がうやうやしく蓮たち6人を出迎える。
「お車をご用意しております。どうぞこちらへ」
大臣と補佐官、大臣付きの護衛は促されて先に停まっている送迎車へ向かうが、シオンは何故か歩を止めていた。
「…」
「?」
蓮は何かあったのかと彼を見上げる。
「どうした?シオン」
「いえ…」
クラウドにこそっと小声で聞かれ、シオンは首を横に振る。
「行くぞ?」
「…ええ」
クラウドは不審に思いつつも、蓮の背に手を添えて送迎車へ向かい、シオンもその後に続いた。
メンバル城に着く頃には、クラウドも蓮もシオンの反応の意味がわかっていた。この国は血と火薬のにおいがするのだ。送迎車で城に向かう間に車窓から見た街の雰囲気も荒廃しているわけではないが、どこか殺伐としていた。城の周りは立派な塀や緑で囲まれていても、血生臭さと強い火薬のにおいはごまかしきれていない。大臣たちも何となく異常さに気づいたらしく、動揺しているようだった。しかし、ここで唐突に引き返すことはまだ何もわからない今、得策ではないと、シオンとクラウドは目配せする。
「さぁ、どうぞ」
城の扉を開き、使者はにこやかに促す。
「…」
大臣はためらっていたがシオンがうなずいたのを見て、城内へと歩を進めた。
「ティリアス様、メンバル王国へようこそいらっしゃいました!」
エントランスホールで蓮たちを出迎えたのはメンバル王国の摂政を務めているイレグー大臣である。仕立ての良さそうな衣装にいくつもの勲章を提げているが、突き出た腹とニヤニヤした笑顔のせいかいやらしい成金にしか見えない。
「…っ」
蓮は顔がひきつりそうになったが、なんとかこらえて微笑する。
「イレグー大臣、ご丁寧なお迎えありがとうございます。早速メンバル王陛下にお会いしたいのですが、お加減はいかがですか」
イレグーと顔見知りの大臣は早く目的を済ませてしまおうと面会を急かす。
「いやぁ申し訳ありません!陛下は今お休みになられているのですよ。しばしこちらでお待ちください。さぁどうぞ、どうぞ!」
イレグーはそうはさせないとばかりに、蓮たちをエントランスホールの先の応接室へ半ば強引に入らせる。
「面会の準備が整いましたらお呼びしますから。ごゆっくりお寛ぎください」
と、にこにこと言いながら、応接室の扉を閉めた。イレグーたちの足音が遠ざかると、3人の護衛たちはさっと行動し始める。
「大臣、レン様、補佐官もこちらへ。壁にも窓にも近づかないでください。飲食物も口にしない方が良いですね」
シオンは蓮たちを部屋の中央に集め、テーブル上に用意された軽食やお茶にも警戒する。
「おい、調べるぞ。お前も手伝え」
「はい!」
クラウドは大臣付きの護衛に指示し、壁やテーブルなどの調度品にも異常がないか調べる。
「し、シオン君…!この国は一体どうしてしまったのか…っ」
大臣は青ざめ、うろたえながらシオンに問う。メンバル王国と言えば、平和主義でウェア王国同様戦争を放棄した国。まるで戦時中かのような血と火薬のにおいがするなんてあり得ない。先代ウェア王が亡くなり、メンバル王が床に伏せて以来、交流の薄れていた3年の間に何があったのか。
「わかりません。ですが、長居をしない方が良いのは確かです」
外交担当の大臣ですらわからないことがシオンにわかるはずもなく、首を横に振るしかない。
「仕掛けはなさそうだ。窓からの狙撃も…無理だな」
ひととおり調べ終わったクラウドが窓の外を見ながら言う。
「そうですか。では…っ!」
これからの対応を話そうとした時、シオンは頭上に何者かの気配を感じた。と、同時に空気の異常も感じとる。
「いけない!皆、息を止めて…っ!!」
「?!」
言いながら腕で鼻と口を覆い、蓮の頭を抱えて素早く座りこむ。
「えっ?!な、何だね…っぐ、うぅ…っ?!」
大臣も訳もわからずに膝をつくが、急な息苦しさにうめき声が出る。
「が、ぐぅう…っ?!」
「うぐうぅ…!!」
補佐官も護衛も苦しみ出し、座り込んでしまう。
「う…っクソ…!」
クラウドは顔をゆがめながらも鼻と口を押さえて窓を叩き割るが、もはやその位で解消出来るものではなかった。うめいて、がくんと膝をつく。
「…っ」
無味無臭の毒ガスか何かをまかれたかと思いながら、蓮はシオンにしがみつき呼吸を抑える。目の端では倒れてもう動かない大臣と補佐官、のたうちまわる護衛がぼやけて見える。もうろうとしてくる意識の中、よぎるのは王子の笑顔。
ティルと…死なねーって、約束…。
そこでぶつりと蓮の意識はなくなっていた。
ある国の首長は緊張というより、びくびくと怯えながら蓮に頭を下げる。蓮がうなずき、手を差し出すと震える手でそっと触れ、すぐに離す。
「あ…っありがとうございました!!ありがとうございましたっ!!」
そして、必死に礼を言いながら数名の従者と逃げるように謁見の間を出て行った。
王位継承式2日目。昨日のある国の皇太子がティリアス王子に歯向かい、殺されかけたという話がもう世界中に伝わったらしい。下手なことをして王子の機嫌を損ない、殺されては敵わないと先ほどの首長のように怯えながらやって来て、逃げるように去って行く来賓が今日は多い。それでも、面会はしたいので辞退する国はないが。
蓮はこの面会に何の意味があるのかと思っていたが、ウォータ大臣らが言っていたように王子の金眼を狙う国や組織を減らすという意味では必要だなと思い直す。それこそおとぎ話のような『ウェア王国は世界最強』を世に知らしめることになったのだから。同時に執拗に手に触る者が減って良かったと思っていた。
「…ふー…」
2日間で約80ヵ国の来賓との面会と披露宴をようやく終え、さすがに蓮も椅子から立ち上がれず、ため息しか出ない。ウォータ大臣らは先ほど「明日からの国民へのお披露目もこの調子で頼むぞ」と、機嫌よく応接間を後にしていた。
「お疲れさまでした、レン様」
護衛たちがあまりに疲れていそうな蓮に声をかけようかためらう中、シオンは変わらず労いの言葉をかける。
「立てるか?おぶってやろうか」
「断る」
クラウドは心配しながら顔をのぞきこむが、拒否される。
「さぁ、お掴まりください」
「いいって…」
シオンに手をつかまれ、腰に手を添えられて蓮はうっとうしがりながらも身を任せて立ち上がる。
「何で俺の時ははっきり拒否するんだよ、レン?!」
それが納得いかないクラウドはふてくされる。そこに
「レン様ぁああ!!」
いつもの耳障りな叫び声が応接間に響く。肋骨の負傷で休んでいたカンパは今日仕事復帰し、城外の護衛任務からダッシュで戻ってきたのだ。
「私、復帰初日にあなたのお美しい姿を拝見でき、非常に幸せで…っぐふぉっっ?!」
勢いよく突進してきた彼に、蓮はシオンの手を離れて回し蹴りを脇腹にくらわす。
「あ、ワリ」
カンパを見直していた蓮だが、反射的にやってしまったようではっとして謝る。
「い、いぇ…素晴らしい、蹴り、で、す…っ」
カンパはまたヒビ入ったかもと脇腹を押さえて悶絶し、失神した。
「大丈夫そうだな」
「ええ」
蓮のいつもと変わらないキレのある蹴りを見て、クラウドとシオンは安心していた。
3、4日目の国民へのお披露目パレードも色々ありながらも無事終了し、5日目の今日は唯一交流のある友好国、メンバル王国へ訪問予定だ。
「なぁ、本当に俺でいいのか」
メンバル王国へ向かう飛行機内。小型ではあるが、さすが王室御用達。柔らかなリクライニングチェアにゆったり座れ、揺れも少なく快適だ。
「王サマは王子に会いたいんだろ?」
王子に扮した蓮は、同伴している外交担当の国務大臣に改めて聞く。機内には操縦士のふたりを除くと大臣、補佐官、大臣付きの護衛、そして蓮とその護衛をするシオンとクラウドの計6名が乗っていた。
これから彼らが訪問するメンバル王国は先代のウェア王の友人、メンバル王が治めている国。子のいないメンバル王は幼い頃から知るティリアス王子を息子のようにかわいがっており、もちろん継承式に招待する予定であったが、先代のウェア王が亡くなった頃に大病を患い、現在も外出は困難であるらしい。しかし、かわいがっていた王子の晴れ姿をどうしても見たいという連絡があり、お忍びという形で今日の訪問となったのだ。
「心配することはない、レン君。王子と君は全く同じ顔だ。成長した姿をお見せ出来ればメンバル王は安心なさるだろう」
と、大臣は穏やかに言う。
「メンバル王は重いご病気だそうですし、王子は国外に出れません。仕方のないことです」
シオンも言い聞かせるように話す。
『金眼』に関する情報は友好国であろうと提供しておらず、王子本人が訪問出来ないことはメンバル王も知らない。
「ふーん…」
その説明は事前に聞いていたが、他の外国の来賓と違い、下心も何もなく純粋に王子の王位継承を祝いたい人を騙すようで蓮は気が引けるのだ。
「何だよ、そんなこと気にしているのか?お前らしくないな」
「るせーよ」
隣に座るクラウドにからかうように頭をなでられ、ますます仏頂面になる。
「お話は私がするから、君は黙って王に顔をお見せすればいい。気にすることは何もない」
「ああ…」
蓮は大臣にうなずきながらも何となく嫌な気分で、小型飛行機の窓から上空の景色を眺めた。
数時間後、飛行機は時間通りにメンバル王国の空港に到着した。
「お待ちしておりました、ティリアス様」
地に降り立つと、メンバル王の使者らしい男がうやうやしく蓮たち6人を出迎える。
「お車をご用意しております。どうぞこちらへ」
大臣と補佐官、大臣付きの護衛は促されて先に停まっている送迎車へ向かうが、シオンは何故か歩を止めていた。
「…」
「?」
蓮は何かあったのかと彼を見上げる。
「どうした?シオン」
「いえ…」
クラウドにこそっと小声で聞かれ、シオンは首を横に振る。
「行くぞ?」
「…ええ」
クラウドは不審に思いつつも、蓮の背に手を添えて送迎車へ向かい、シオンもその後に続いた。
メンバル城に着く頃には、クラウドも蓮もシオンの反応の意味がわかっていた。この国は血と火薬のにおいがするのだ。送迎車で城に向かう間に車窓から見た街の雰囲気も荒廃しているわけではないが、どこか殺伐としていた。城の周りは立派な塀や緑で囲まれていても、血生臭さと強い火薬のにおいはごまかしきれていない。大臣たちも何となく異常さに気づいたらしく、動揺しているようだった。しかし、ここで唐突に引き返すことはまだ何もわからない今、得策ではないと、シオンとクラウドは目配せする。
「さぁ、どうぞ」
城の扉を開き、使者はにこやかに促す。
「…」
大臣はためらっていたがシオンがうなずいたのを見て、城内へと歩を進めた。
「ティリアス様、メンバル王国へようこそいらっしゃいました!」
エントランスホールで蓮たちを出迎えたのはメンバル王国の摂政を務めているイレグー大臣である。仕立ての良さそうな衣装にいくつもの勲章を提げているが、突き出た腹とニヤニヤした笑顔のせいかいやらしい成金にしか見えない。
「…っ」
蓮は顔がひきつりそうになったが、なんとかこらえて微笑する。
「イレグー大臣、ご丁寧なお迎えありがとうございます。早速メンバル王陛下にお会いしたいのですが、お加減はいかがですか」
イレグーと顔見知りの大臣は早く目的を済ませてしまおうと面会を急かす。
「いやぁ申し訳ありません!陛下は今お休みになられているのですよ。しばしこちらでお待ちください。さぁどうぞ、どうぞ!」
イレグーはそうはさせないとばかりに、蓮たちをエントランスホールの先の応接室へ半ば強引に入らせる。
「面会の準備が整いましたらお呼びしますから。ごゆっくりお寛ぎください」
と、にこにこと言いながら、応接室の扉を閉めた。イレグーたちの足音が遠ざかると、3人の護衛たちはさっと行動し始める。
「大臣、レン様、補佐官もこちらへ。壁にも窓にも近づかないでください。飲食物も口にしない方が良いですね」
シオンは蓮たちを部屋の中央に集め、テーブル上に用意された軽食やお茶にも警戒する。
「おい、調べるぞ。お前も手伝え」
「はい!」
クラウドは大臣付きの護衛に指示し、壁やテーブルなどの調度品にも異常がないか調べる。
「し、シオン君…!この国は一体どうしてしまったのか…っ」
大臣は青ざめ、うろたえながらシオンに問う。メンバル王国と言えば、平和主義でウェア王国同様戦争を放棄した国。まるで戦時中かのような血と火薬のにおいがするなんてあり得ない。先代ウェア王が亡くなり、メンバル王が床に伏せて以来、交流の薄れていた3年の間に何があったのか。
「わかりません。ですが、長居をしない方が良いのは確かです」
外交担当の大臣ですらわからないことがシオンにわかるはずもなく、首を横に振るしかない。
「仕掛けはなさそうだ。窓からの狙撃も…無理だな」
ひととおり調べ終わったクラウドが窓の外を見ながら言う。
「そうですか。では…っ!」
これからの対応を話そうとした時、シオンは頭上に何者かの気配を感じた。と、同時に空気の異常も感じとる。
「いけない!皆、息を止めて…っ!!」
「?!」
言いながら腕で鼻と口を覆い、蓮の頭を抱えて素早く座りこむ。
「えっ?!な、何だね…っぐ、うぅ…っ?!」
大臣も訳もわからずに膝をつくが、急な息苦しさにうめき声が出る。
「が、ぐぅう…っ?!」
「うぐうぅ…!!」
補佐官も護衛も苦しみ出し、座り込んでしまう。
「う…っクソ…!」
クラウドは顔をゆがめながらも鼻と口を押さえて窓を叩き割るが、もはやその位で解消出来るものではなかった。うめいて、がくんと膝をつく。
「…っ」
無味無臭の毒ガスか何かをまかれたかと思いながら、蓮はシオンにしがみつき呼吸を抑える。目の端では倒れてもう動かない大臣と補佐官、のたうちまわる護衛がぼやけて見える。もうろうとしてくる意識の中、よぎるのは王子の笑顔。
ティルと…死なねーって、約束…。
そこでぶつりと蓮の意識はなくなっていた。
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