虹色の未来を

わだすう

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44,役目

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「死ね!!」
「ごふぅっっ?!!」

 唇が触れる寸前、我に返った蓮はノーモーションでハクロの顔をグーで殴った。

「いぃ…っ痛ぁあ~っ?!」

 思わぬ攻撃をくらい、ハクロは鼻血を出して悶える。蓮も思いもしなかったのは同じで、焦ってハクロから離れる。

「テメー何する気だった?」
「えぇ?何って…護衛長の、役目を」

 ハクロは何故殴られたのか全くわからず、蓮を見上げて鼻血をぬぐう。

『護衛長は身代わり護衛に対し様々な性的快感を与え、慣れさせなければならない』

 蓮はそれを思い出してゲンナリする。アラシからはそんな行為を実行しようなどという雰囲気すら感じなかったため、すっかり忘れていた。

「??」

 蓮も承知の上だと思っていたハクロが混乱するのは当然だ。

「そんなん、しねーでいいって」

 蓮はため息をつき、脱ぎ捨ててあった上着を羽織る。

「でも、慣らしておかないとレンがつらいんじゃ…」

 ハクロは蓮に好意を持ってはいるが、護衛長としての役目ならそれはまた別の話で。実際、タテマエだとしてもその性行為は蓮を守るために実行するものだ。

「そ…だけど…お前とはヤリたくねー…」
「お、俺には、触られたくないってこと…?」

 そんなに嫌われていたとは。ハクロはショックで青ざめる。

「違ぇよ」

 すぐに否定されてホッとするが、そうだとすると理由がわからない。

「なら、何で…?」
「お前とは、このままでいい」
「?」

 どういう意味かわからず首をかしげる。

「このままが、いい」

 無表情でも仏頂面でもない、愁いを含んだ蓮の表情。彼は笑顔が一番魅力的でかわいらしいと思っていたが、それ以上に儚く美しくて。何も言えず、見惚れる。

「今日はもうヒマなんだろ?手合わせ付き合え」
「う、うん…わかった」

 ふっといつもの彼に戻り、ハクロはハッとしてうなずく。そして、伸びをする蓮の背を複雑な気持ちで見つめた。









「お疲れさまでした、レン」

 ハクロとの訓練を終え、入浴も済ませた蓮が自室に戻ると、にこやかに迎えたのはシオンだ。彼も34歳になり、伸びた薄紫色のストレートヘアは以前のように後ろでひとつに結んでいる。国務大臣たちからの大臣就任の勧誘が激しくなっているが、変わらず気ままな使用人を続けている。

「…何でいる」
「お座りください。夕食にいたしましょう」

 蓮の質問など聴こえないかのように、夕食が並べられたテーブル前の椅子へ促す。シオンには聞き返しても無駄だろう。蓮は諦めて生乾きの黒髪をかき上げ、椅子に座った。



「先ほど、ハクロに相談を受けました」
「あ?」

 向かいに座り、共に夕食を食べていたシオンがふいに話し出す。

「『レン様に拒絶されてしまい、任務が遂行出来ません。助言をいただきたいです』と」
「…あのバカ」

 口止めしておけばよかったと、蓮は舌打ちする。蓮に対してタメ口になり、言動の多少の奔放さは受け入れるようになったが、クソ真面目に変わりはない。

 前護衛長アラシが蓮に対する王室護衛長の役目を実行しなかったのは、単純に知らなかったから。シオンが引き継がなかったのだ。ハクロには、アラシが引き継ぎを行う際に、中身を見ずに渡せとその詳細を記した資料を託した。
 アラシのようなヘタレで真面目なタイプは任務遂行のためになりふり構わずすがりついて、蓮もそれに流されてしまう可能性がある。結局、蓮はアラシに対して甘くみえる行動はしても、まともに相手をする気がないとわかったが、それでも引き継ぎたくなかった。
 ハクロに関しては、護衛長になる前から蓮と友人のような関係を築いていたため、役目を引き継いでも蓮が受け入れることはないだろうと思った。今日、それを確信し、シオンは嬉しくて仕方がない。

「彼との性交はお望みになりませんか」
「誰ともしたくねーよ」
「私ともですか」
「一番したくねーな」
「ふふ、そうですか」
「何で嬉しそーなんだよ、キモい」

 皮肉を込めて言ったのに、嬉しげに笑われて蓮は引く。

「そうおっしゃりながら、私との性交を拒絶なさらないので」
「してもムダじゃねーか」

 拒絶したところで力では敵わない上、シオンの強引な行為と与えられる快楽は抵抗する気すら失わせる。

「そうですね」
「チッ…腹立つ」

 微笑んで同意され、蓮は仏頂面で玉子焼きを口に入れた。







 夜もふける前に、シングルベッドはふたり分の体重できしんでいた。その周りには脱がされた蓮の服が散らばっている。

「はぁ…っちょ、しつこ…ぃ」

 3年前より厚くなった筋肉をまとった身体に汗をにじませ、蓮は身悶える。後孔にねじ込まれたシオンの長い指が、過敏な粘膜を何度もかき回す。

「これ、お好きでしょう?」

 指先が前立腺をとらえ、起ち上がるモノの先端をシオンの舌が包む。

「んん!ヤメ、ろ…って…!」

 フェラはするのもされるのも嫌で。蓮はビクビク震える身体を起こし、離そうとシオンの肩を押す。

「お断りします」
「あっ?!ンぁ…っ!」

 シオンは構わず口に含み、じゅっと吸い上げる。強い刺激に蓮はシオンのシャツをつかんで、びくんと背をのけ反らせる。

「さぁ、イッてください」

 蓮の反応に笑みを浮かべ、シオンは更に深くくわえこむ。

「く、あ、ああぁぁ…っっ!!」

 ナカの前立腺を押されながら熱い口内で圧迫され、蓮は抗うことなど出来ずに絶頂する。つかんだシオンのシャツがギリギリとひきつれる。

「ん…濃いですね。久しぶりですか」

 シオンはのどを鳴らして吐き出されたものを飲みこみ、口元を親指で拭う。

「はあ、はぁ…っ!な、何で…飲、む…っ」
「言ったでしょう。私はレンから出たものなら何でも飲めますと」
「チッ…クソ…っ」

 蓮は理解不能な羞恥に舌打ちしつつ、後孔から引き抜いた濡れた指先をなめるシオンの妖艶さにクラクラしてしまう。

「さて…次はどうするか、おわかりですよね」
「は…っ?!」

 シオンは膝立ちになると、スラックスの前をくつろげる。

「どうぞ」

 と、いきり起ち、脈打つモノを綺麗な笑顔で見せつける。欲しければ自らまたがれと言う、意地悪な命令だ。

「…う…っっ」

 蓮はソレから目をそらせず、唇を噛む。身体は、しっかり施された後孔はソレを欲している。だが、羞恥心が、男としてのプライドが拒む。
 シオンは葛藤を見せる蓮の様にゾクゾクしていた。蓮の頭の中も身体も全部、自分で満たされていく。支配したと感じられるこの時は、何度味わってもたまらない。

「お手伝いが必要ですか」

 それをひとしきり堪能してから、真っ赤にほほを染めて涙を浮かべる蓮を抱き寄せる。

「あ…っ!」

 腰をつかみ、自身をひくつく後孔に当てると、蓮はビクッと身体を強張らせる。期待でもれた声が恥ずかしくて、シオンの肩に額を押し付ける。

「レン…?」

 シオンは意地悪く耳元で名を囁やき、蓮の腰を持ち上げてモノから離す。

「う…っうぅ…」

 限界だった。蓮はポロポロ涙をこぼしながらうめく。

「シオン…頼む…から、い、ぃれ…て…っ」

 と、消え入りそうな声でねだった。羞恥心もプライドも押し込めて、シオンを見上げ、腰を揺らす。
 シオンはそのあまりのかわいらしさに理性が飛びそうになり、ゆっくり息を吐く。毎回、蓮の予想以上の言動に煽られ、そろそろ理性を保つのも限界かと思う。

「…はい、承知しました」

 にこりと微笑み、限界突破しそうな己を蓮の後孔に再び押し当てる。そして、躊躇なく突き入れた。

「っっ!!…ひあ、あぁぁーっ!!」

 その衝撃に蓮は悲鳴をあげて絶頂する。

「っあ?!んあぁっ!!」

 ぐらりと倒れそうになる蓮を抱きとめ、シオンは再度奥を突く。休みなく快感を与えられ、蓮は絶頂が止まらない。ビクビクと身体を震わせ、吹き出た白濁でお互いの下半身を濡らしていく。

「レン…愛しています」

 シオンは快感にとろけた蓮を見つめて微笑み、深く唇を重ねた。





「…なぁ」
「はい」

 うつらうつら船をこぎながら、蓮は身体を清拭してくれているシオンに聞く。

「ハクロに…役目のこと、何か言ったんか…?」
「ええ、助言しましたよ」
「なんて…?」

 余計なアドバイスをして、また迫られたらたまらない。

「知りたいですか」
「んー…別にいー…けど、しねーでいいって…お前から、言っとけ…」
「何故ですか」
「あ…?だって…お前が、いぇ……」

 言いながら、カクンと顔を伏せて寝落ちしてしまう。はっきりと聞き取れなかったが、シオンは驚きのあまり蓮の背を拭く手が止まる。
 おそらく『お前が言えば、いいだろ』と言いたかったのだと思う。しかし、こう聞こえた気がしたのだ。

 『お前がいれば、いいだろ』と。

 そんなこと蓮は思ってもいないだろう。けれど、自分の中でだけでも事実にしたかった。

「自惚れて、しまいますよ…?」

 シオンはほほを染めて今までにないくらい表情をゆるめ、寝息をたてる蓮をギュッと抱きしめた。幸せを噛みしめながら。
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