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丘の上で食べるランチは格別に美味しかった。
お気に入りのシートを敷いた上に、行儀良く座ったヴィヴィアーナは、採れたての野菜の入ったサンドイッチを美味しそうに頬張っていた。
そんな無邪気な妹を兄が嬉しそうに眺めながら、持ってきたポットからカップに紅茶を注いでいる。
「ヴィヴィ、焦って食べると喉に詰まるよ。」
「だって、とっても美味しいんですもの。」
ストラウスは紅茶を妹に差し出しながら、そう言って苦笑してきた。
ヴィヴィアーナは笑顔で紅茶を受け取ると、もう一口!と、つい大きな口を開けてサンドイッチに齧りつこうとした。
その時――バチリとジュリアスと目が合う。
彼は兄の向かい側から、こちらを見ていた。
そして「ふっ」と、小馬鹿にしたように笑ってきたのだ。
その途端ヴィヴィアーナの顔から、ぶわっと汗が噴き出てきた。
急激に体中に熱が駆け巡り、顔も比例して熱くなっていく。
――な、なんで、いつもいつも恥ずかしい所ばっかり見てくるのよ!!
ジュリアスが居る事をすっかり忘れていたヴィヴィアーナは、己の失態を棚に上げて憤慨する。
そして、あられもない姿を家族以外に見せてしまった羞恥から、真っ赤になった顔を隠すように俯いてしまったのであった。
「はっ、大きな口ねぇ~。あたしの分も取って置いてよね。」
そんなヴィヴィアーナに、追い打ちをかけるようにジュリアスが揶揄ってきた。
その言葉を聞いた途端、ヴィヴィアーナは泣きそうになってしまう。
――ううう、は、恥ずかしい……楽し過ぎて、ついやってしまったわ……。
幼馴染とはいえ、婚約者であり、しかも家族以外の異性の目の前で晒してしまった醜態にヴィヴィアーナは後悔に苛まれる。
しかも相手がジュリアスというだけで、絶望の淵に立たされた気分だ。
――くうぅぅぅぅぅ、あいつの事だから後で、この事を揶揄ってくるわ、きっと!
弱みを握られたくない相手なのに、とヴィヴィアーナが嘆いていると、遠くの方で声が聞こえてきたのであった。
「ん?誰だ?」
気づいたストラウスたちが、声の聞こえてきた方角を見ると、丘の下にある柵の外側から誰かがこちらに手を振っている姿があった。
「あれは……隣の領地の……。」
兄の言葉に、ヴィヴィアーナは思わず顔を上げたのであった。
兄が言う通り、声をかけてきた人物は隣の領地の貴族だった。
ヴィヴィアーナ達が居た丘は、領地との境に面している場所にあった為、たまたま通りかかった隣の貴族が声をかけてきたのだった。
ヴィヴィアーナ達は、馬に乗り丘の下へ移動すると、声をかけてきた相手を見た。
歳は同じか少し上というところか?焦げ茶色の髪と瞳の平均的な顔立ちをした青年だった。
「貴方は……確か隣の領地のワグナー伯爵のご子息の……」
「エバンスです!フォレス侯爵様のご子息様をお見かけしたので、是非ご挨拶をと思いまして。」
そう言ってエバンスと名乗った青年は、屈託の無い笑顔で挨拶してきたのであった。
ストラウスたちは、彼の笑顔に毒気を抜かれてしまい顔を見合わせる。
はぁ、と小さく溜息を吐くと次期侯爵であるストラウスが、この場の代表として彼へと話しかけたのであった。
「そうでしたか、僕達もプライベートで来ているんですよ。」
やんわりと牽制するストラウスに、エバンスはにこやかに答えてくる。
「そうでしたか、それは申し訳ない事をしてしまいました。」
エバンスはそう言って、あっさりと引き下がり帰っていったのであった。
「何だったのかしら?」
何故か驚いているストラウスの横から、ジュリアスが呆れた様子で声をかけてきた。
「さあ、本当に挨拶だけだったのかもしれないね。」
何かと侯爵家と接点を持ちたがる貴族が多いせいか、今回もそうだと決めつけて身構えていたストラウスは、拍子抜けした様子で肩を竦めてきたのであった。
しかし、別荘に帰って使用人から渡された手紙に、ストラウスは苦笑したのであった。
お気に入りのシートを敷いた上に、行儀良く座ったヴィヴィアーナは、採れたての野菜の入ったサンドイッチを美味しそうに頬張っていた。
そんな無邪気な妹を兄が嬉しそうに眺めながら、持ってきたポットからカップに紅茶を注いでいる。
「ヴィヴィ、焦って食べると喉に詰まるよ。」
「だって、とっても美味しいんですもの。」
ストラウスは紅茶を妹に差し出しながら、そう言って苦笑してきた。
ヴィヴィアーナは笑顔で紅茶を受け取ると、もう一口!と、つい大きな口を開けてサンドイッチに齧りつこうとした。
その時――バチリとジュリアスと目が合う。
彼は兄の向かい側から、こちらを見ていた。
そして「ふっ」と、小馬鹿にしたように笑ってきたのだ。
その途端ヴィヴィアーナの顔から、ぶわっと汗が噴き出てきた。
急激に体中に熱が駆け巡り、顔も比例して熱くなっていく。
――な、なんで、いつもいつも恥ずかしい所ばっかり見てくるのよ!!
ジュリアスが居る事をすっかり忘れていたヴィヴィアーナは、己の失態を棚に上げて憤慨する。
そして、あられもない姿を家族以外に見せてしまった羞恥から、真っ赤になった顔を隠すように俯いてしまったのであった。
「はっ、大きな口ねぇ~。あたしの分も取って置いてよね。」
そんなヴィヴィアーナに、追い打ちをかけるようにジュリアスが揶揄ってきた。
その言葉を聞いた途端、ヴィヴィアーナは泣きそうになってしまう。
――ううう、は、恥ずかしい……楽し過ぎて、ついやってしまったわ……。
幼馴染とはいえ、婚約者であり、しかも家族以外の異性の目の前で晒してしまった醜態にヴィヴィアーナは後悔に苛まれる。
しかも相手がジュリアスというだけで、絶望の淵に立たされた気分だ。
――くうぅぅぅぅぅ、あいつの事だから後で、この事を揶揄ってくるわ、きっと!
弱みを握られたくない相手なのに、とヴィヴィアーナが嘆いていると、遠くの方で声が聞こえてきたのであった。
「ん?誰だ?」
気づいたストラウスたちが、声の聞こえてきた方角を見ると、丘の下にある柵の外側から誰かがこちらに手を振っている姿があった。
「あれは……隣の領地の……。」
兄の言葉に、ヴィヴィアーナは思わず顔を上げたのであった。
兄が言う通り、声をかけてきた人物は隣の領地の貴族だった。
ヴィヴィアーナ達が居た丘は、領地との境に面している場所にあった為、たまたま通りかかった隣の貴族が声をかけてきたのだった。
ヴィヴィアーナ達は、馬に乗り丘の下へ移動すると、声をかけてきた相手を見た。
歳は同じか少し上というところか?焦げ茶色の髪と瞳の平均的な顔立ちをした青年だった。
「貴方は……確か隣の領地のワグナー伯爵のご子息の……」
「エバンスです!フォレス侯爵様のご子息様をお見かけしたので、是非ご挨拶をと思いまして。」
そう言ってエバンスと名乗った青年は、屈託の無い笑顔で挨拶してきたのであった。
ストラウスたちは、彼の笑顔に毒気を抜かれてしまい顔を見合わせる。
はぁ、と小さく溜息を吐くと次期侯爵であるストラウスが、この場の代表として彼へと話しかけたのであった。
「そうでしたか、僕達もプライベートで来ているんですよ。」
やんわりと牽制するストラウスに、エバンスはにこやかに答えてくる。
「そうでしたか、それは申し訳ない事をしてしまいました。」
エバンスはそう言って、あっさりと引き下がり帰っていったのであった。
「何だったのかしら?」
何故か驚いているストラウスの横から、ジュリアスが呆れた様子で声をかけてきた。
「さあ、本当に挨拶だけだったのかもしれないね。」
何かと侯爵家と接点を持ちたがる貴族が多いせいか、今回もそうだと決めつけて身構えていたストラウスは、拍子抜けした様子で肩を竦めてきたのであった。
しかし、別荘に帰って使用人から渡された手紙に、ストラウスは苦笑したのであった。
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