36 / 93
第一章【出会い編】
12.とりあえず転柱門まで辿り着きました
しおりを挟む
「ここが……。」
「……はい。」
マクレーンとアラン。
二人の目の前には巨大な門がそびえていた。
門といっても鉄格子や木の扉があるわけではなく。
大理石の床が敷き詰められたそこには、巨大な六つの水晶の柱が六角形に配置されていた。
しかも並べられた柱の中央――ひときわ目立つ巨大な水晶の柱――にはこれまた巨大な魔方陣が描かれている。
『転柱門』
この世界の各大陸を繋ぐ唯一の移動手段。
遥かな昔、世界を四つへと分けた魔女の力は大地を深く抉り、あらゆる通行手段を遮った。
その為、大陸と大陸とを移動する為に、この門が設置されたのである。
「すごいな……。」
美しい彫刻を施された水晶の柱を見上げながら、アランが感嘆の声を漏らす。
「そうですね。」
アランの言葉にマクレーンも素直に頷いた。
それ程までに目の前の門は美しかった。
悠然とそびえ立つ門を、ぽかんと見上げていると誰かが声をかけてきた。
「あの~。」
「え?」
慌てて振り返ると、白いローブを身に着けた男が立っていた。
豪華な金の刺繍を施されたローブ姿の男は、ここの役人だ。
その証拠に、教会の紋章が描かれた大きな水晶のペンダントが、男の首から下げられていた。
この転柱門の管理は聖教会が担っている。
聖教会とは俗称で、正式には聖魔女教会が本来の名前だ。
聖魔女教会は、その名の通り魔女を崇拝し、魔女の世界統治を後押しする団体である。
それ故、信者は魔女崇拝者であり、その信者は国王をはじめ、領主や国民にまで至る。
聖教会の統計では、全国民の99%が信者であるそうだ。
また、教会は医療の心得があり、病気や怪我をした人などを無償で治療してくれる医療院なども開いている。
自分達より歳は上に見える教会の男は、何故か申し訳なさそうな顔でマクレーン達を見ていた。
「あ!…す、すみません邪魔でしたよね。」
マクレーンは、男の言い辛そうな態度に、仕事の邪魔をしてしまったのだと思い慌てて頭を下げた。
しかし――。
「あ、いいえ謝るのは、こちらの方です!」
マクレーンの言葉に、男は何故か狼狽えだすと「頭を上げてください」と懇願してきた。
「は、はあ?」
慌てる役人に、マクレーンは不思議そうな顔をしながら面を上げる。
訳がわからず、きょとんと見上げてくるマクレーンの顔を見下ろしながら、役人の男は眉根を下げてこう言ってきた。
「申し訳ありません、今日はもう閉門なのです。」
「え?」
役人から告げられた言葉にマクレーンは目を瞠った。
「え、で、でもここは、いつでも開放してるんじゃ?」
「はい、そうなのですが……実は最近、この東門の辺りに賊が現れるようになりまして……。」
役人は神妙な顔になると声を潜めて話しだした。
「賊が?」
怪訝そうな顔で聞いてきたアランに、役人はゆっくりと頷きながら続ける。
「はい、どうやらここを通る旅人を襲っているらしく、何人か被害に遭った方もいらっしゃるようです。」
静まり返った広間に役人の声が淡々と響いていく。
「その為、聖教会の方で緊急措置が取られまして、ここの利用は日没までと……そういう決まりになってしまいましたので……。」
誠に申し訳ありません、と男は頭を下げてきた。
マクレーンとアランは顔を見合わせる。
二人がここへ辿り着いた時には既に日は沈みかけていた。
辺りはもう薄暗くなってきており、半時もすれば真っ暗になってしまうだろう。
「どうしよう……。」
途方に暮れるマクレーンに、アランは困ったように頭を掻いた。
「何とかならないのか?」
「はあ……規則ですので。」
同じく困ったように首を傾げてきた役人に、アランはやれやれと首を振った。
これだからお役所仕事は嫌なんだ……。
規則、規則、と口煩く言う目の前の男に、アランはうんざりした視線を向けた。
「襲われてるのは、ここへ来る旅人だろう?俺達は無事にここへ着いてるんだ、ちょっと通してくれるだけで良いんだぜ?」
なあ頼むよ、と尚も言ってくるアランに役人はさらに首を振るとこう言ってきた。
「申し訳ありません、既に魔石は取り払われて保管庫へ預けてしまったものですから……。」
役人の言葉に、背後にあった門を見ると水晶の柱に嵌められていた魔石は取り払われ、先程まであったはずの魔法陣が消えていた。
「これじゃあ……。」
「仕方が無いですね。」
ちらりと見下ろしてきたアランの視線を、視線だけで返しながらマクレーンは溜息を吐いた。
魔石が無いのでは仕方が無い。
この世界で”魔石”とは、人間達の生活の営みに無くてはならない必需品であった。
しかも、それが天柱門に使用されているのであれば尚更。
この世界において、魔女以外で魔法を使うには魔石が無ければできないのだ。
そもそも魔石とは、宝石に魔力を封じ込め一般市民にも魔法が使えるようにと、魔女が作り出してくれたものである。
その為、各大陸毎に使える魔石は一種類。
このウエストブレイでは”火”の魔石がそれに当たる。
天柱門の魔石は、この大陸を治める『赤の魔女』の力が宿った特殊なものだった。
それ故、先程見た魔法陣は”火”の力を宿し、まるで燃え盛る炎のように陽炎を立ち昇らせていた。
その美しい魔法陣は今は消え、門は沈黙している。
そのどこか寂しい光景にマクレーンは視線をやると「また明日出直しましょう」と言ってきた。
「では、私共の方でご用意した宿へお泊りください。」
マクレーンの言葉に役人の男は、ほっとしたような表情になると、にこりと笑顔を向けながら提案してきた。
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
その言葉にマクレーンは素直に頷く。
「では、こちらです。」
にこにこと愛想良く案内する男の後を、マクレーンとアランはついて行くのであった。
「……はい。」
マクレーンとアラン。
二人の目の前には巨大な門がそびえていた。
門といっても鉄格子や木の扉があるわけではなく。
大理石の床が敷き詰められたそこには、巨大な六つの水晶の柱が六角形に配置されていた。
しかも並べられた柱の中央――ひときわ目立つ巨大な水晶の柱――にはこれまた巨大な魔方陣が描かれている。
『転柱門』
この世界の各大陸を繋ぐ唯一の移動手段。
遥かな昔、世界を四つへと分けた魔女の力は大地を深く抉り、あらゆる通行手段を遮った。
その為、大陸と大陸とを移動する為に、この門が設置されたのである。
「すごいな……。」
美しい彫刻を施された水晶の柱を見上げながら、アランが感嘆の声を漏らす。
「そうですね。」
アランの言葉にマクレーンも素直に頷いた。
それ程までに目の前の門は美しかった。
悠然とそびえ立つ門を、ぽかんと見上げていると誰かが声をかけてきた。
「あの~。」
「え?」
慌てて振り返ると、白いローブを身に着けた男が立っていた。
豪華な金の刺繍を施されたローブ姿の男は、ここの役人だ。
その証拠に、教会の紋章が描かれた大きな水晶のペンダントが、男の首から下げられていた。
この転柱門の管理は聖教会が担っている。
聖教会とは俗称で、正式には聖魔女教会が本来の名前だ。
聖魔女教会は、その名の通り魔女を崇拝し、魔女の世界統治を後押しする団体である。
それ故、信者は魔女崇拝者であり、その信者は国王をはじめ、領主や国民にまで至る。
聖教会の統計では、全国民の99%が信者であるそうだ。
また、教会は医療の心得があり、病気や怪我をした人などを無償で治療してくれる医療院なども開いている。
自分達より歳は上に見える教会の男は、何故か申し訳なさそうな顔でマクレーン達を見ていた。
「あ!…す、すみません邪魔でしたよね。」
マクレーンは、男の言い辛そうな態度に、仕事の邪魔をしてしまったのだと思い慌てて頭を下げた。
しかし――。
「あ、いいえ謝るのは、こちらの方です!」
マクレーンの言葉に、男は何故か狼狽えだすと「頭を上げてください」と懇願してきた。
「は、はあ?」
慌てる役人に、マクレーンは不思議そうな顔をしながら面を上げる。
訳がわからず、きょとんと見上げてくるマクレーンの顔を見下ろしながら、役人の男は眉根を下げてこう言ってきた。
「申し訳ありません、今日はもう閉門なのです。」
「え?」
役人から告げられた言葉にマクレーンは目を瞠った。
「え、で、でもここは、いつでも開放してるんじゃ?」
「はい、そうなのですが……実は最近、この東門の辺りに賊が現れるようになりまして……。」
役人は神妙な顔になると声を潜めて話しだした。
「賊が?」
怪訝そうな顔で聞いてきたアランに、役人はゆっくりと頷きながら続ける。
「はい、どうやらここを通る旅人を襲っているらしく、何人か被害に遭った方もいらっしゃるようです。」
静まり返った広間に役人の声が淡々と響いていく。
「その為、聖教会の方で緊急措置が取られまして、ここの利用は日没までと……そういう決まりになってしまいましたので……。」
誠に申し訳ありません、と男は頭を下げてきた。
マクレーンとアランは顔を見合わせる。
二人がここへ辿り着いた時には既に日は沈みかけていた。
辺りはもう薄暗くなってきており、半時もすれば真っ暗になってしまうだろう。
「どうしよう……。」
途方に暮れるマクレーンに、アランは困ったように頭を掻いた。
「何とかならないのか?」
「はあ……規則ですので。」
同じく困ったように首を傾げてきた役人に、アランはやれやれと首を振った。
これだからお役所仕事は嫌なんだ……。
規則、規則、と口煩く言う目の前の男に、アランはうんざりした視線を向けた。
「襲われてるのは、ここへ来る旅人だろう?俺達は無事にここへ着いてるんだ、ちょっと通してくれるだけで良いんだぜ?」
なあ頼むよ、と尚も言ってくるアランに役人はさらに首を振るとこう言ってきた。
「申し訳ありません、既に魔石は取り払われて保管庫へ預けてしまったものですから……。」
役人の言葉に、背後にあった門を見ると水晶の柱に嵌められていた魔石は取り払われ、先程まであったはずの魔法陣が消えていた。
「これじゃあ……。」
「仕方が無いですね。」
ちらりと見下ろしてきたアランの視線を、視線だけで返しながらマクレーンは溜息を吐いた。
魔石が無いのでは仕方が無い。
この世界で”魔石”とは、人間達の生活の営みに無くてはならない必需品であった。
しかも、それが天柱門に使用されているのであれば尚更。
この世界において、魔女以外で魔法を使うには魔石が無ければできないのだ。
そもそも魔石とは、宝石に魔力を封じ込め一般市民にも魔法が使えるようにと、魔女が作り出してくれたものである。
その為、各大陸毎に使える魔石は一種類。
このウエストブレイでは”火”の魔石がそれに当たる。
天柱門の魔石は、この大陸を治める『赤の魔女』の力が宿った特殊なものだった。
それ故、先程見た魔法陣は”火”の力を宿し、まるで燃え盛る炎のように陽炎を立ち昇らせていた。
その美しい魔法陣は今は消え、門は沈黙している。
そのどこか寂しい光景にマクレーンは視線をやると「また明日出直しましょう」と言ってきた。
「では、私共の方でご用意した宿へお泊りください。」
マクレーンの言葉に役人の男は、ほっとしたような表情になると、にこりと笑顔を向けながら提案してきた。
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
その言葉にマクレーンは素直に頷く。
「では、こちらです。」
にこにこと愛想良く案内する男の後を、マクレーンとアランはついて行くのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる