僕のおつかい

麻竹

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第二章【旅路編】

2.なんでこうなるの!?

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アランは、突然現れたマクレーンの姉達に驚きながら、彼女達をまじまじと見ていた。

西の大地で会ったフローレンスは記憶に新しい。
彼女は相変わらず、可愛らしいワンピースに揃いのアンブレラを差しながら、ニコニコとこちらに手を振っていた。

その隣にいる背の高い女性は、何となく見覚えがあった。
あれは確か、最初に行った北の大地で会った女だ。
確か凄い攻撃をしてきて、あわや殺されそうになったんだったか。
その辺の記憶は曖昧だが、あの女の背にある大きな弓がその存在を主張していた。

そして三人目の女。
あれは見たことがない女だ。
あれもマクレーンの姉なのだろうか?
その存在感は三人の中でもダントツだった。
彼女だけ、何故か豪華な椅子に座っていたのだ。
しかもその周りに数人の男たちを侍らせている。
男たちの身長は高く、顔もなかなかのイケメン揃いだ。
しかも服装も黒を基調とした正装に身を包み、今も甲斐甲斐しく女の世話を焼いていた。

あいつが見たら喜びそうな光景だな……。

アランは、ふと蘇った記憶に頭を振ると、目の前の姉達に集中した。



「私たちが来たのは他でもない、お前に用があったからだ。」

「僕に?」

アランが姉達を観察していると、ふいにマクレーンとのやり取りが聞こえてきた。

「ええ、頼み事があって参りましたの。」

長女のララと次女のフローレンスの言葉に、マクレーンの眉間に皺が寄る。

「え、ええ~っと……僕、今帰ってきたばかりで……。」

「何を言ってるの?あなた帰ったら、このまま引き籠るつもりでしょう!少しは外へ出なさい、そのために、わたくし達が来てあげたんだから。」

マクレーンの言葉に、椅子に座っていた三女、イレーニアがぴしゃりと言い放つ。
しかも、いつの間に持っていたのか羽の扇子を手に打ち付けながらの迫力ぶりだ。

「まあ、待て。マクレーンも帰ってきたばかりで疲れているとは思うが、頼む。」

一番年長者であるララに言われて、マクレーンはそれ以上何も言えなくなってしまった。

「それで、用って何ですか?」

三人の姉達の顔を見ながら、マクレーンは溜息を吐くと聞き返した。
その反応に、姉たちは顔を見合わせて、ほっと胸を撫で下ろす。

「頼みというのは、他でもない……。」

そう言って、ララが代表とばかりに説明し始めたのだった。







数刻後――。

マクレーン達は、東の大地にある双子火山へと向かっていた。



「またこうなるなんて……。」

額を抑えながら盛大な溜息を吐くマクレーンは、どこか諦めたような声でそう言ってきた。

「まあ、落ち込むなって。そんな顔して取って来たって、お前の婆さんは喜ばないだろう?」

落ち込むマクレーンに声をかけてきたのは、何故か今回も旅の同行者となったアランだった。
アランは鼻歌を歌いだしそうな勢いで、上機嫌にマクレーンの肩を叩いている。
何故彼がここまで機嫌が良いのかというと、あの後姉達とした約束のせいだった。

姉たちの用というのは、一ヶ月後に来る祖母の誕生日のプレゼントの事だった。
毎年、祖母には孫たちから誕生日祝いとプレゼントを贈っているのだが、今年は盛大な誕生日会をやりたいそうで、その時渡すプレゼントも今までにないくらい、凄いものを渡したいらしい。
しかも、プレゼントの内容は当日まで内緒で、姉達が手作りするのだそうだ。
そこでマクレーン達には、その素材集めをしてきて欲しいとの事だった。
そして、その素材集めにアランに協力を頼んできたのだ。
しかも、手伝ってくれたお礼に、アランの願いを叶えてやるとか、勝手な約束までしてしまったのである。
そして、やっと離れられると思っていたアランと、また旅を再開する羽目になったというわけだった。

なんとも迷惑な姉達だ……。

マクレーンは、決して本人たちの目の前では言えない暴言を胸中で吐く。
隣を見ると、上機嫌なアランが居た。
そんな彼の姿に辟易しながら、姉達の愚痴を胸中で呟き続ける。

そもそもアランさんの願いって、赤の魔女に会う事でしょう?どうするのさ、そんな約束しちゃって!

姉達には、アランの願いが何なのかは既に教えた。
というか、無理だろうと抗議したのだが、彼女たちは大丈夫だからと、マクレーンを差し置いて姉達とアランとで勝手に約束をしてしまったのだ。

まあ、あのひと達なら何とかしてしまいそうだけど……。

あの時の姉達の笑みを思い出して、マクレーンは身震いした。

とてつもなく嫌な予感しかしない……。

しかも、探してくるように言われた素材が、これまた厄介な代物だったのだ。

もうあれって嫌がらせだよね?

マクレーンは、姉達から告げられた素材の名前に、眩暈を覚えたのだった。



長女ライラからは、黄金蜘蛛の糸。
次女イレーニアからは、人魚姫の鱗。
三女フローレンスからは、銀針鼠の針。
を、それぞれ頼まれたのだった。

聞いたとき、阿保かと思った。

どこの世界に、世界中の商人や冒険者たちが血眼になって探している希少品を、取って来いという姉がいるのかと。
しかも素材名を聞いても、アランは知らないのか、二つ返事で「任せとけ」とか安請け合いしてくれる始末。
既に不安しか浮かばない二度目のお使いに、マクレーンは盛大な溜息を零しながら己の不運を呪うのであった。
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