僕のおつかい

麻竹

文字の大きさ
17 / 93
第二章【旅路編】

17.とりあえず山頂を目指します

しおりを挟む
雷皇山ラオウザンの山頂付近は、昨日の吹雪が嘘のように晴れ渡っていた。

「この分だと、昼前に山頂に辿り着けそうですね。」

日差しの強さに目を細めながら、二コルが話しかけてきた。

「ええ、思ったより早く着きそうで良かったです。」

マクレーンも、額にうっすらと汗を浮かべながら笑顔で返答する。
そんな遣り取りを、ぼんやり聞いていた籠の中のアランが、突然二コルに話しかけてきた。

「そういえば、二コルは黄の魔女の使徒になったんだよな?」

「え?ああ、はい。そうですけど?」

突然話を振ってきたアランに、二コルは手の中の籠を覗き込みながら答えた。

「で、この山はその黄の魔女の……なんて言ったっけ?」

「黄の魔女ライラ様です。」

「そうそう、そのライラ様が居る山なんだよな?」

「そうですけど……。」

アランの質問に二コルが訝しんでいると、隣にいたマクレーンが話に入って来た。

「何ですか突然?」

怪訝そうな顔のマクレーンに、籠の中で腕を組んで何やら思案していたアランは、顔を上げながら言ってきた。

「いやぁ~せっかく魔女がいる山に来たんだから、会えるかな~と思ってさ。二コルは会ったんだろ?」

「え、ええまあ、そうですけど。」

アランの言葉に、二コルが困惑したような顔で頷く。
そんな困った様子の二コルに、マクレーンが代わりに答えてきた。

「会えるわけないじゃないですか。使徒でもないのに。」

魔女に直接会えるのは教会の者か使徒だけだ。
そんな事も忘れたのかと、呆れた表情でアランを見ていると、彼はとんでもない事を言ってきた。

「いや~二コルがいるから、その伝手で会えないかなと思ってさ。それで、ついでに銀針鼠の居場所も教えて貰えないかな~なんて♪」

あまりの楽観的な意見にマクレーンはもちろん、二コルや火の精霊カーラまでもが呆れた顔をして彼を見た。

「何言ってんですか……そんな簡単に、ほいほい会えたら誰も苦労はしませんよ。」

魔女に対してなのか、銀針鼠に対してなのか、マクレーンはそう言うと、阿保らしいと言いながら先に行ってしまった。

「いい案だと思ったんだけどなぁ~。」

思いのほか不評だった己の提案に、アランは口をとがらせていると、頭上から二コルが声をかけてきた。

「ふふ、アランさんも使徒選別会に参加してみればわかりますよ。」

「あ……。」

アランは、二コルの頭上から見下ろしてくる笑顔を見た途端、地雷を踏んだことに気づいた。

使徒選別会――それは魔女を崇拝する者達の激戦地と呼ばれる場所であった。

教会の人間以外で、魔女に会えることを夢見た青年達が、淡い期待を胸に参加するイベントである。
その競争率や、他で類を見ないほどのものだと言われている。
その激戦を潜り抜けてきた二コルの無言の圧力に、アランはこの話は二度とすまいと心の中で、そっと反省するのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...