僕のおつかい

麻竹

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第二章【旅路編】

18.雷皇山到着

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陽が天辺に昇る少し前に、マクレーン達は雷皇山の頂上に辿り着いた。
雷皇山の山頂は、そこだけを切り取ったかのように綺麗にまっ平らになっている変わった場所だ。
なんでも黄の魔女が、頂上に自分の城を建てる為に、魔力で山頂の部分を本当に切り取ってしまったのだそうだ。
そして切り取られた部分は、雷皇山の横にちょこんと置かれ、現地の人々に子雷皇山と呼ばれるようになった。
そして、ちょっとした登山に良いと評判になり、初心者の登山者や観光客で賑わっているのだそうだ。



そんな雷皇山の頂には、もちろん黄の魔女の城があるのだが、普通の城とは少々様子が違っていた。
雷皇山の上空には常に分厚い雷雲が渦巻いているのだが、その中に黄の魔女の城がある。
しかも城は何故か逆さまに浮かんでおり、見上げると巨大な城の屋根が雲の隙間から見え隠れしていた。
なんでもその昔、山頂に建っていた城を、研究の一環で浮かばせてしまったらしいのだ。
それ以降、黄の魔女の城は山頂の上空に浮いているのだった。
魔女の脅威を目の当たりにして呆けているミニアランを他所に、マクレーン達はギルドから貰ってきた地図を頼りに銀針鼠の居そうな場所を探していった。

「マクレーンさん、ありましたよ!」

暫く探していると、二コルが嬉しそうな声をあげてきた。
こっちです!と大きく手を振りながら呼ぶ二コルの元へ行くと、岩場の隙間に小さな穴が空いているのが見えた。

銀針鼠の巣穴だ。

「流石です、二コルさん!」

マクレーンは喜びながら二コルを褒め称えると、二コルは嬉しそうに頬を染めながら、にこりと笑い返してきた。

「中にいますかね?」

「う~ん、誘き寄せるしかないですね。」

そして、二人は巣穴を覗き込みながら相談し合う。

「今は冬眠の為に餌を探しているでしょうから、彼らの餌か何かを巣の前に置いておけば出てくるかもしれませんね。」

「そうですね、餌は何を食べるんですか?」

「確か、小さな虫等を食べる筈ですよ。」

「なるほど、虫ですか……。」

「どこかに手頃な虫が居れば良いのですが……。」

そう言いながら辺りを見回していた二コルとマクレーンは、とある場所で視線を止めた。

「「…………」」

「ん?なんだ二人とも、俺を見つめて?」

そこには、バスケットの中で優雅に寛いでいたアランが、不思議そうな顔で二人を見返していたのだった。





「待て待て待て待て!!」

「大丈夫ですから。」

「ええ、絶対危なくなったら引っ張りますから!」

そう言いながら、バスケットの中を覗き込む二人の視線の先には、細いロープでぐるぐる巻きにされたアランが、青褪めた顔で抵抗していた。

「よし、じゃあ行きますよ!」

「ほんとに無理だから!って、ちょっ……」

マクレーンに持ち上げられ、ぷら~んと宙に浮くアランは必死で抵抗するが次の瞬間、掛け声と共に巣穴の中に放り込まれてしまった。
疑似餌アランは綺麗な放物線を描いて、すぽっと巣穴の中へと落ちていく。
暫くすると、垂らしていたロープがぴーんと張った。

「よし、かかった!」

「ええ!本当に!?」

驚く二コルを他所に、マクレーンはロープを慎重に引き上げていった。
ゆっくりゆっくり、巣穴から出てくるロープを真剣な顔で引いていると、スポンと音を立てて銀針鼠が釣り上げられた。
ロープの先端にはアランと、アランを丸飲みしようとパクリと齧りついた銀針鼠がぶら下がっていた。

「上手くいきましたね、マクレーンさん♪」

「ええ!」

「お前ら……。」

喜ぶ二人に、銀針鼠の涎だらけのアランが恨めしそうな顔で睨み付けているのであった。







アランのお陰で上手い具合に銀針鼠を捕獲することが出来たマクレーン達は、銀針鼠をケージに入れ慎重な手つきで針を抜く作業を行っていた。
小動物とはいえ、鋭い針を持つ相手である。
しかも銀針は、普通の針鼠の針と違い鋼鉄の槍に匹敵するほどの強度がある。
それ故、とある界隈ではちょっとしたレアアイテムとして有名だった。
どんな布地にも針を貫通させることができ、しかもその鋭さから穴が殆ど見えないという、お針子には垂涎もののアイテムだった。
世界各地からお針子たちが血眼になって探すというのも納得できる。
マクレーン達は、銀針鼠の針を無事回収し捕獲した銀針鼠を巣穴へと返していると、突然背後から声がかけられた。

「やあ、君達も銀針鼠を探しに来た冒険者かな?」

朗らかなその声にマクレーン達が振り向くと、人の良さそうな顔をした青年が立っていた。
その後ろには仲間なのか、二人ほど同じ年頃の青年達も居た。

「君達もというと、貴方達もですか?」

「ああ、そうだよ。」

話しかけてきた青年にマクレーンが聞き返すと、彼はニコニコと笑顔を絶やさずに頷き返してきた。

「おや、君達はどうやら無事に銀針鼠を見つけられたようだねぇ。」

すると、人の良さそうな青年の背後にいた仲間の一人が声をかけてきた。

「ええ、まあ……。」

マクレーンは返事をしながら、銀針鼠の針を納めた小さな箱を隠すようにバッグの中へと仕舞い込む。
その様子を見ていた冒険者らしき男たちは、顔を見合わせニヤリと笑うと、マクレーン達を見てきた。

「そうか……探す手間が省けたな。」

「ねえ君達、それをこっちに渡してくれないかなぁ?」

青年たちはマクレーン達に向かって、猫撫で声でそう言ってきたのだった。

「え?で、でも、これは僕達が必死に探してようやく見つけたもので……」

「あ~、なるほどなるほど、じゃあさ、これとそれを交換っていうのはどうかな?」

すると、人の良さそうに見えていた青年が、交換条件を提示してきたのだった。
青年がそう言って差し出してきたのは、小さな革袋だった。
中にはお金が入っているらしく、彼が見せつけるように袋を揺らすと、硬貨のぶつかり合う音が聞こえてきた。
マクレーンは、その袋を見て半眼になった。
中身が金貨だとしても、袋の大きさからして銀針鼠の針の代金にしては随分少ない。
針一本に対して金貨50枚はくだらないというのに、相手が子供だと思って騙せると本気で思っているらしい。
そんな青年達を憐れむ様な目で見ながら、マクレーンは首を横に振ってきた。

「申し訳ありませんが、僕達もこれが必要なのでお譲りできません。欲しいのであれば自力で見つけてください。」

そうマクレーンがきっぱりと断ると、先程まで柔和な笑みを称えていた男達の表情が一変した。

「てめえ、こっちが下手に出てれば調子に乗りやがって!」

「大人しくそれをこっちに渡せ!!」

男たちは突然怒鳴り声をあげると、マクレーン達に掴み掛ろうとしてきた。

『こいつら!』

「カーラ、ダメだ!二コルさん逃げますよ!!」

「は、はい!!」

マクレーンは、それまで事の成り行きを見守っていた火の精霊が加勢しようとするのを制し、襲い掛かってきた冒険者たちを上手く躱すと、森の中へと逃げ込んだのだった。

「待て!!」

「逃がすか!!」

冒険者たちは、マクレーン達を追って森の中へと入って行ったのであった。
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