研究ばかりで衣食住が壊滅的な魔術師長である婚約者が死なないように世話係(監視)をやれと命じられましたが彼が変態すぎて困っています。

麻竹

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19.大団円だと思うのですが、これで良かったのでしょうか?

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ココココンッ

魔術師長の研究所の扉を、焦りを含んだ軽快なノック音が鳴り響く。
入室の許可を得ずに乱暴に扉を開くと、目的の人物が居るのに気づいて思わず目を見開いた。

「何をしている!!」

怒気を含んだ声に、研究所の机の前で奇行に及んでいた男が振り返ってきた。

「何がだ?」

少し苛立たし気に返事をしてきた相手は、この部屋の主である魔術師長である。
ジークハルトという名の、肩書にそぐわないほど若い青年は、未来の義父になる公爵をチラリと見ると、また視線を元に戻してしまったのだった。
その慇懃無礼な態度に、公爵は憤慨する。
いや、正しくはジークハルトの膝に乗っている存在の扱いに対してだろうか?
彼――ジークハルトの膝の上には、何故かアマーリエが座らされており、彼女は真っ赤な顔で俯いていたのだった。

「いい加減、娘を離して貰おうか?」

こっちを見向きもしなくなった傍若無人な娘の婚約者に、公爵は痺れを切らせて言ってきたのであった。



数日前、公爵家の娘が忽然と姿を消してしまった。
その事はすぐ騒ぎになり、屋敷を挙げての大捜索が繰り広げられた。
そして、同じ時期に魔術師長も行方不明となってしまい、今度は国を挙げての大捜索へと発展してしまったのだった。
しかし、どんなに優秀な捜査官が探しても一向に足取りは掴めず、見つけ出すことができなかった。

方々手を尽くし切り、公爵も国王陛下もお手上げ状態で頭を悩ませた頃、なんと、ひょっこりと二人が姿を現したのであった。
これには、顎が外れそうなくらい驚いた公爵と国王陛下だったが、数日振りに姿を現した魔術師長の晴れやかな笑顔と、公爵の娘の疲れ切った顔を見て、娘の父は何かを悟り怒りで顔を真っ赤にし、国のトップは何かを諦めたような目で国一番の魔術師を見ていた。

そして、アマーリエとジークハルトが数日間、行方不明になっていた理由が分かると、更に公爵は怒りに震えたのだった。
その理由とは、なんて事は無い、簡単に言えばジークハルトがアマーリエを研究所の地下から解放しなかっただけである。
人攫い紛いの事をしでかした魔術師長の暴挙は、国王陛下の命令で別の理由に差し替えられた。

侯爵令嬢は何者かに拉致されたが、婚約者である魔術師長が命を張って助け出したという美談にだ。

これには、さすがの公爵も異を唱えたが、真実を話せば侯爵令嬢の醜聞が広がるぞと脅され、公爵は渋々承諾せざるを得なかった。
しかも最悪な事に、調子に乗った……もとい、タガが外れたジークハルトが、アマーリエを手放さなかったのである。
国王陛下が発表した美談を逆手に取り、アマーリエの容態が良くないという理由で、婚約者自ら責任を持って彼女の検査と療養をすると、魔術師塔の研究室に監禁したのであった。
それを聞いた公爵が、慌てて娘を取り戻しに来たというわけである。

「結婚式まで娘とは会わさん!」

「何をふざけたことを!?アマーリエは、もう私のものだ!!」

「ふざけるな!このクソガキが!手順をちゃんと踏め、手順を!!」

喧々囂々。
防音魔法の効いた室内で、父と婚約者の言い争いが続けられている中、アマーリエは、その二人の間に挟まれながら、恥ずかしさで消えてしまいそうになっていた。

誤解が解け、研究所の地下でジークハルトの帰りを大人しく待っていたアマーリエは、彼が帰って来るなり何故か甘い言葉攻めに合う羽目になってしまったのであった。
それは、今思い出しても赤面してしまう程に甘く甘く、激甘ともいえる溺愛っぷりで、思い出しただけで恥ずかしさで溶けてしまいたくなる程だった。
そして数日間だけではあったが、嫌というほど思い知らされたのだ……。

まさか……まさか、ジークハルト様が、変態は変態でも、わたくし限定の変態だったなんて……。

アマーリエは、頭上で父に向かって一歩も引かない婚約者を見上げながら、胸中でそう呟いていたのであった。



その後、暴走したジークハルトを止められないと悟った公爵は、泣く泣く大急ぎで結婚式の日取りを決める事にしたのだった。
そして国王の祝福の下、美しく着飾ったアマーリエとジークハルトは、皆に祝福されながら無事に結婚式を挙げたのであった。



おわり



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最後までお読み頂きありがとうございました!
某婚約破棄シリーズに投稿しようと思っていたのですが、思いのほか長くなってしまい急遽単品で上げさせて頂きました。
長編としては、ちょっと物足りないけど短編で出すにはちょっと長い……^^:
中途半端な作品になってしまいましたが、お茶請け程度に楽しんで頂ければ幸いです。
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