10 / 50
10
しおりを挟む
「それで?使用人たちの報告はどうだったのさ?」
数週間後ランスロットは、友人であるアンドリューの元へ足を運んでいた。
アンドリューはランスロットの話を一通り聞いた後、興味津々な様子でその後の結果を話せと急かしてきた。
「く……あの後も様子を見させたが、結果は変わらなかった……。」
「へえ。」
悔しそうに呟く友人に、アンドリューは感心したように目を見張っていた。
結局、エレノアの監視を続けてみたが結果はほとんど変わらず、相変わらず部屋に引き籠って趣味に没頭していただけだったそうだ。
しかも、使用人たちと以前よりも仲良くなっており、今では料理長までをも懐柔して一緒にお菓子を作ったりしているらしい。
らしいというのは、そのお菓子は一切ランスロットに届けられる事は無く、エレノアと使用人達で美味しく召し上がっているのだとか。
「とっても美味しかったです」と、家令と護衛隊長が口を揃えて言っていた事を思い出し、ランスロットは歯軋りしていた。
「素直になればいいのに……。」
「何か言ったか?」
「いいや。でも、これで君の奥方の身の潔白は証明されたんだろう?良かったじゃないか。」
「く……しかし……。」
親友の言葉にまだ信用し切れないのかランスロットは言い淀む。
そんな親友にアンドリューは、やれやれと溜息を吐きながら言ってきた。
「ん~、まあ、君の事情はよく理解しているつもりだよ。君の境遇は気の毒だと思うし、ここまで警戒するのは仕方が無い事だと思ってる。でもね、君の味方になってくれてる人たちが考えてみろって言うのなら、君も少しは譲歩するべきだと思うんだよねぇ。」
そう言って友人は、いつもの人懐こそうな笑顔でランスロットを見てきた。
「…………わかったよ。」
暫くの間、むっつりとした表情で黙っていたランスロットはポツリと呟く。
幼い頃から自分を良く知る旧友にまで諭されてしまったランスロットは、渋々ながらも頷いたのであった。
「少しいいか?」
優しい陽光が差し込む昼下がり、鬼の居ぬ間に美しい庭園を散歩しようと思っていたエレノアの前に、まさかの鬼が現れてしまったのであった。
鬼は固まるエレノアに向かって、何故か緊張した面持ちで言ってきた。
こっそり部屋から出ていた事を怒られると思ったエレノアは、鬼――ランスロットの言葉にゴクリと唾を飲み込みながら「な、なんでしょうか?」と聞き返した。
すると、ランスロットは何度か口を開いては閉じを繰り返した後、こう言ってきたのであった。
「その……少し歩かないか?」
と――。
罵声を覚悟していたエレノアは、ランスロットの言葉に拍子抜けする。
「え?」と思わず聞き返してしまった。
「た、たまにはいいだろう?」
ポカンとするエレノアに、ランスロットは頬を赤く染めながらぶっきら棒に言ってきた。
そして顔を逸らしながら「ん」とエスコートの為の腕を差し出してきたのである。
その行動にエレノアは更に驚いてしまう。
――な、何急に?さ、散歩??まさか、この人何か企んでいるのかしら?
今までの対応を振り返りながら、エレノアは恐る恐るランスロットの様子を窺う。
しかし彼は、そっぽを向いていたので、どんな表情をして言っているのか判り兼ねた。
助けを求める気持ちで、離れた所に控えていた家令を見ると何故か頭を下げてきた。
そして、縋るような視線を向けてくる。
――どうか、ご主人様の我儘を聞き入れてくださいませ。――
そんな台詞が聞こえてくるようだ。
断る理由も見つからず、エレノアは差し出された腕に恐る恐る手を添えたのだった。
するとランスロットは、一瞬チラリとエレノアを見た後、ゆっくりとした足取りで歩き出した。
そして彼の魂胆が読めないまま、エレノアはエスコートされながら、戦々恐々と後を付いて行ったのであった。
数週間後ランスロットは、友人であるアンドリューの元へ足を運んでいた。
アンドリューはランスロットの話を一通り聞いた後、興味津々な様子でその後の結果を話せと急かしてきた。
「く……あの後も様子を見させたが、結果は変わらなかった……。」
「へえ。」
悔しそうに呟く友人に、アンドリューは感心したように目を見張っていた。
結局、エレノアの監視を続けてみたが結果はほとんど変わらず、相変わらず部屋に引き籠って趣味に没頭していただけだったそうだ。
しかも、使用人たちと以前よりも仲良くなっており、今では料理長までをも懐柔して一緒にお菓子を作ったりしているらしい。
らしいというのは、そのお菓子は一切ランスロットに届けられる事は無く、エレノアと使用人達で美味しく召し上がっているのだとか。
「とっても美味しかったです」と、家令と護衛隊長が口を揃えて言っていた事を思い出し、ランスロットは歯軋りしていた。
「素直になればいいのに……。」
「何か言ったか?」
「いいや。でも、これで君の奥方の身の潔白は証明されたんだろう?良かったじゃないか。」
「く……しかし……。」
親友の言葉にまだ信用し切れないのかランスロットは言い淀む。
そんな親友にアンドリューは、やれやれと溜息を吐きながら言ってきた。
「ん~、まあ、君の事情はよく理解しているつもりだよ。君の境遇は気の毒だと思うし、ここまで警戒するのは仕方が無い事だと思ってる。でもね、君の味方になってくれてる人たちが考えてみろって言うのなら、君も少しは譲歩するべきだと思うんだよねぇ。」
そう言って友人は、いつもの人懐こそうな笑顔でランスロットを見てきた。
「…………わかったよ。」
暫くの間、むっつりとした表情で黙っていたランスロットはポツリと呟く。
幼い頃から自分を良く知る旧友にまで諭されてしまったランスロットは、渋々ながらも頷いたのであった。
「少しいいか?」
優しい陽光が差し込む昼下がり、鬼の居ぬ間に美しい庭園を散歩しようと思っていたエレノアの前に、まさかの鬼が現れてしまったのであった。
鬼は固まるエレノアに向かって、何故か緊張した面持ちで言ってきた。
こっそり部屋から出ていた事を怒られると思ったエレノアは、鬼――ランスロットの言葉にゴクリと唾を飲み込みながら「な、なんでしょうか?」と聞き返した。
すると、ランスロットは何度か口を開いては閉じを繰り返した後、こう言ってきたのであった。
「その……少し歩かないか?」
と――。
罵声を覚悟していたエレノアは、ランスロットの言葉に拍子抜けする。
「え?」と思わず聞き返してしまった。
「た、たまにはいいだろう?」
ポカンとするエレノアに、ランスロットは頬を赤く染めながらぶっきら棒に言ってきた。
そして顔を逸らしながら「ん」とエスコートの為の腕を差し出してきたのである。
その行動にエレノアは更に驚いてしまう。
――な、何急に?さ、散歩??まさか、この人何か企んでいるのかしら?
今までの対応を振り返りながら、エレノアは恐る恐るランスロットの様子を窺う。
しかし彼は、そっぽを向いていたので、どんな表情をして言っているのか判り兼ねた。
助けを求める気持ちで、離れた所に控えていた家令を見ると何故か頭を下げてきた。
そして、縋るような視線を向けてくる。
――どうか、ご主人様の我儘を聞き入れてくださいませ。――
そんな台詞が聞こえてくるようだ。
断る理由も見つからず、エレノアは差し出された腕に恐る恐る手を添えたのだった。
するとランスロットは、一瞬チラリとエレノアを見た後、ゆっくりとした足取りで歩き出した。
そして彼の魂胆が読めないまま、エレノアはエスコートされながら、戦々恐々と後を付いて行ったのであった。
1
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
虐げられた私が姉の策略で結婚させられたら、スパダリ夫に溺愛され人生大逆転しました。
専業プウタ
恋愛
ミリア・カルマンは帝国唯一の公爵家の次女。高貴な皇族の血を引く紫色の瞳を持って生まれたワガママな姉の陰謀で、帝国一裕福でイケメンのレナード・アーデン侯爵と婚約することになる。父親であるカルマン公爵の指示のもと後継者としてアカデミーで必死に勉強してきて首席で卒業した。アカデミー時代からの恋人、サイラスもいる。公爵になる夢も恋人も諦められない。私の人生は私が決めるんだから、イケメンの婚約者になど屈しない。地位も名誉も美しさも備えた婚約者の弱みを握り、婚約を破棄する。そして、大好きな恋人と結婚してみせる。そう決意して婚約者と接しても、この婚約者一筋縄ではいかない。初対面のはずなのに、まるで自分を知っていたかのような振る舞い。ミリアは恋人を裏切りたくない、姉の思い通りになりたくないと思いつつも彼に惹かれてく気持ちが抑えられなくなっていく。
サマー子爵家の結婚録 ~ほのぼの異世界パラレルワールド~
秋野 木星
恋愛
5人の楽しい兄弟姉妹と友人まで巻き込んだ、サマー子爵家のあたたかな家族のお話です。
「めんどくさがりのプリンセス」の末っ子エミリー、
「のっぽのノッコ」に恋した長男アレックス、
次女キャサリンの「王子の夢を誰も知らない」、
友人皇太子の「伝統を継ぐ者」、
「聖なる夜をいとし子と」過ごす次男デビッド、
長女のブリジットのお話はエミリーのお話の中に入っています。
※ 小説家になろうでサマー家シリーズとして書いたものを一つにまとめました。
変人令息は悪女を憎む
くきの助
恋愛
「ブリジット=バールトン。あなたを愛する事はない。」
ああ、ようやく言えた。
目の前の彼女は14歳にしてこれが二度目の結婚。
こんなあどけない顔をしてとんでもない悪女なのだ。
私もそのことを知った時には腹も立ったものだが、こちらにも利がある結婚だと割り切ることにした。
「当初話した通り2年間の契約婚だ。離婚後は十分な慰謝料も払おう。ただ、白い結婚などと主張されてはこちらも面倒だ。一晩だけ付き合ってもらうよ。」
初夜だというのに腹立たしい気持ちだ。
私だって悪女と知る前は契約なんて結ぶ気はなかった。
政略といえど大事にしようと思っていたんだ。
なのになぜこんな事になったのか。
それは半年ほど前に遡る。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
婚約破棄された悪役令嬢、放浪先で最強公爵に溺愛される
鍛高譚
恋愛
「スカーレット・ヨーク、お前との婚約は破棄する!」
王太子アルバートの突然の宣言により、伯爵令嬢スカーレットの人生は一変した。
すべては“聖女”を名乗る平民アメリアの企み。でっち上げられた罪で糾弾され、名誉を失い、実家からも追放されてしまう。
頼る宛もなく王都をさまよった彼女は、行き倒れ寸前のところを隣国ルーヴェル王国の公爵、ゼイン・ファーガスに救われる。
「……しばらく俺のもとで休め。安全は保証する」
冷徹な印象とは裏腹に、ゼインはスカーレットを庇護し、“形だけの婚約者”として身を守ってくれることに。
公爵家で静かな日々を過ごすうちに、スカーレットの聡明さや誇り高さは次第に評価され、彼女自身もゼインに心惹かれていく。
だがその裏で、王太子とアメリアの暴走は止まらず、スカーレットの両親までもが処刑の危機に――!
【完結】溺愛?執着?転生悪役令嬢は皇太子から逃げ出したい~絶世の美女の悪役令嬢はオカメを被るが、独占しやすくて皇太子にとって好都合な模様~
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
平安のお姫様が悪役令嬢イザベルへと転生した。平安の記憶を思い出したとき、彼女は絶望することになる。
絶世の美女と言われた切れ長の細い目、ふっくらとした頬、豊かな黒髪……いわゆるオカメ顔ではなくなり、目鼻立ちがハッキリとし、ふくよかな頬はなくなり、金の髪がうねるというオニのような見た目(西洋美女)になっていたからだ。
今世での絶世の美女でも、美意識は平安。どうにか、この顔を見られない方法をイザベルは考え……、それは『オカメ』を装備することだった。
オカメ狂の悪役令嬢イザベルと、
婚約解消をしたくない溺愛・執着・イザベル至上主義の皇太子ルイスのオカメラブコメディー。
※執着溺愛皇太子と平安乙女のオカメな悪役令嬢とのラブコメです。
※主人公のイザベルの思考と話す言葉の口調が違います。分かりにくかったら、すみません。
※途中からダブルヒロインになります。
イラストはMasquer様に描いて頂きました。
王女殿下のモラトリアム
あとさん♪
恋愛
「君は彼の気持ちを弄んで、どういうつもりなんだ?!この悪女が!」
突然、怒鳴られたの。
見知らぬ男子生徒から。
それが余りにも突然で反応できなかったの。
この方、まさかと思うけど、わたくしに言ってるの?
わたくし、アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。花も恥じらう16歳。この国の王女よ。
先日、学園内で突然無礼者に絡まれたの。
お義姉様が仰るに、学園には色んな人が来るから、何が起こるか分からないんですって!
婚約者も居ない、この先どうなるのか未定の王女などつまらないと思っていたけれど、それ以来、俄然楽しみが増したわ♪
お義姉様が仰るにはピンクブロンドのライバルが現れるそうなのだけど。
え? 違うの?
ライバルって縦ロールなの?
世間というものは、なかなか複雑で一筋縄ではいかない物なのですね。
わたくしの婚約者も学園で捕まえる事が出来るかしら?
この話は、自分は平凡な人間だと思っている王女が、自分のしたい事や好きな人を見つける迄のお話。
※設定はゆるんゆるん
※ざまぁは無いけど、水戸○門的なモノはある。
※明るいラブコメが書きたくて。
※シャティエル王国シリーズ3作目!
※過去拙作『相互理解は難しい(略)』の12年後、
『王宮勤めにも色々ありまして』の10年後の話になります。
上記未読でも話は分かるとは思いますが、お読みいただくともっと面白いかも。
※ちょいちょい修正が入ると思います。誤字撲滅!
※小説家になろうにも投稿しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる