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ランスロットのエスコートは、さすがは上流階級の子息だけあって完璧だった。
自然と女性の歩幅に合わせてくれるお陰で、エレノアは無理なく歩けていた。
しかし、そんな完璧なエスコートをされているにも拘らず、エレノアは緊張しっぱなしで折角の綺麗な花を見る余裕など無かった。
それはもちろん、隣を歩いているのがランスロットだからだ。
エレノアは、庭園を歩きながら常に辺りを警戒していた。
――あ!あそこに薔薇の花が……このまま押されて、あの茨の中にダイブさせられるのかしら?
――ああ!あそこの木には蜂が……石でも投げて私を襲わせたりして……。
――いやいや、もしかすると、この先の池に突き落とすつもりかもしれないわ……。
などと、エレノアはランスロットの事を一ミリも信用していなかったのである。
危険そうな所を通る度に、内心ドキドキガクガクしていた。
そして薔薇園を無事通過し、木々の間を何事も無く通り抜け、池を回避してようやく肩の力が抜けた。
脱力感に見舞われながら、気づかれないように肩で息をしていると、ランスロットが話しかけてきた。
「お……あ、あたしが女が苦手なのは知っているわよね?」
「え?ええ、まあ……。」
突然そんな事を訊ねられ、エレノアは怪訝そうな顔で頷く。
そんなエレノアの顔をチラリと見降ろしながら、ランスロットは話を続けた。
「あたしが女嫌いになったのは、令嬢たちがあたしに変な薬を盛ったり、あたしの気持ちを無視して自分のものにしようとしたの……。それだけじゃないわ、あたしに話しかけたってだけで、身分が少し低い子たちは苛めの対象にあっていたの。」
ランスロットは当時の事を思い出してしまい、身震いしながら吐きてるように言ってきた。
そんなランスロットの話をエレノアは無言で聞いている。
「そういう女達の裏の顔を見て、つくづく女って嫌な生き物なんだなって思ったわ。だからあたしは、女を心底軽蔑しているの。」
ランスロットはそう言ってエレノアを見てきた。
しかしエレノアは、俯いたまま顔をあげなかった。
何も言ってこない彼女に、ランスロットはフッと口元に笑みを作る。
――所詮は、この女も他の女達と同じだな、その証拠に何も反論してこないじゃないか。
ランスロットは、勝ち誇った顔をしながらエレノアを見下ろす。
そして、どうだ?と背後に控えていた家令たちに視線を送っていると、エレノアがぽつりと言ってきた。
「言いたい事は、それだけですか?」
「え?」
エレノアの言葉に、ランスロットが視線を戻すと彼女の肩が、わなわなと震えていた。
「言いたい事は、それだけかと聞いているのです!」
そして、次の瞬間エレノアは、がばりと顔を上げてきたかと思ったら、大きな声を上げてきたのであった。
エレノアの顔は、誰が見ても怒っていることがわかった。
綺麗に整えられた眉は、これでもかというほど吊り上がり、長身のランスロットを下から睨み上げる瞳は鋭かった。
彼女の突然の豹変に、ランスロットはギョッとする。
呆気に取られている間に、エレノアは機関銃のように早口で言ってきた。
「貴方が女嫌いになったのは、全て女性のせいにしているようですが、果たしてそうでしょうか?」
「なに?」
「わたくし、何度か夜会で貴方をお見かけ致しましたが、ハッキリ申し上げて、貴方にも問題があるとお見受けいたしました。」
「な、なんだと!?」
「だってそうでしょう?貴方は近付いて来る女性に、へらへら愛想笑いばかり浮かべて、彼女たちをハッキリ突き放したことがありましたか?」
「う……。」
「しかも、わたくしが偶然お見かけした時は、喧嘩をしている令嬢達を止めることも出来ず、ヘラヘラ笑って場を取り繕う事しかなさっていなかったではありませんか!!」
「…………。」
「そんな事しかできなかったくせに、何が女のせいで女嫌いになったですか?甘えるのも、いい加減にしなさい!」
「!!!」
「気分が悪いので、失礼いたします!」
エレノアは言うだけ言うと、つんと顎を反らして振り返る事もせず去って行ってしまったのであった。
あとに残されたランスロットは、目を真ん丸に見開いたまま、その場に暫く固まっていたのであった。
自然と女性の歩幅に合わせてくれるお陰で、エレノアは無理なく歩けていた。
しかし、そんな完璧なエスコートをされているにも拘らず、エレノアは緊張しっぱなしで折角の綺麗な花を見る余裕など無かった。
それはもちろん、隣を歩いているのがランスロットだからだ。
エレノアは、庭園を歩きながら常に辺りを警戒していた。
――あ!あそこに薔薇の花が……このまま押されて、あの茨の中にダイブさせられるのかしら?
――ああ!あそこの木には蜂が……石でも投げて私を襲わせたりして……。
――いやいや、もしかすると、この先の池に突き落とすつもりかもしれないわ……。
などと、エレノアはランスロットの事を一ミリも信用していなかったのである。
危険そうな所を通る度に、内心ドキドキガクガクしていた。
そして薔薇園を無事通過し、木々の間を何事も無く通り抜け、池を回避してようやく肩の力が抜けた。
脱力感に見舞われながら、気づかれないように肩で息をしていると、ランスロットが話しかけてきた。
「お……あ、あたしが女が苦手なのは知っているわよね?」
「え?ええ、まあ……。」
突然そんな事を訊ねられ、エレノアは怪訝そうな顔で頷く。
そんなエレノアの顔をチラリと見降ろしながら、ランスロットは話を続けた。
「あたしが女嫌いになったのは、令嬢たちがあたしに変な薬を盛ったり、あたしの気持ちを無視して自分のものにしようとしたの……。それだけじゃないわ、あたしに話しかけたってだけで、身分が少し低い子たちは苛めの対象にあっていたの。」
ランスロットは当時の事を思い出してしまい、身震いしながら吐きてるように言ってきた。
そんなランスロットの話をエレノアは無言で聞いている。
「そういう女達の裏の顔を見て、つくづく女って嫌な生き物なんだなって思ったわ。だからあたしは、女を心底軽蔑しているの。」
ランスロットはそう言ってエレノアを見てきた。
しかしエレノアは、俯いたまま顔をあげなかった。
何も言ってこない彼女に、ランスロットはフッと口元に笑みを作る。
――所詮は、この女も他の女達と同じだな、その証拠に何も反論してこないじゃないか。
ランスロットは、勝ち誇った顔をしながらエレノアを見下ろす。
そして、どうだ?と背後に控えていた家令たちに視線を送っていると、エレノアがぽつりと言ってきた。
「言いたい事は、それだけですか?」
「え?」
エレノアの言葉に、ランスロットが視線を戻すと彼女の肩が、わなわなと震えていた。
「言いたい事は、それだけかと聞いているのです!」
そして、次の瞬間エレノアは、がばりと顔を上げてきたかと思ったら、大きな声を上げてきたのであった。
エレノアの顔は、誰が見ても怒っていることがわかった。
綺麗に整えられた眉は、これでもかというほど吊り上がり、長身のランスロットを下から睨み上げる瞳は鋭かった。
彼女の突然の豹変に、ランスロットはギョッとする。
呆気に取られている間に、エレノアは機関銃のように早口で言ってきた。
「貴方が女嫌いになったのは、全て女性のせいにしているようですが、果たしてそうでしょうか?」
「なに?」
「わたくし、何度か夜会で貴方をお見かけ致しましたが、ハッキリ申し上げて、貴方にも問題があるとお見受けいたしました。」
「な、なんだと!?」
「だってそうでしょう?貴方は近付いて来る女性に、へらへら愛想笑いばかり浮かべて、彼女たちをハッキリ突き放したことがありましたか?」
「う……。」
「しかも、わたくしが偶然お見かけした時は、喧嘩をしている令嬢達を止めることも出来ず、ヘラヘラ笑って場を取り繕う事しかなさっていなかったではありませんか!!」
「…………。」
「そんな事しかできなかったくせに、何が女のせいで女嫌いになったですか?甘えるのも、いい加減にしなさい!」
「!!!」
「気分が悪いので、失礼いたします!」
エレノアは言うだけ言うと、つんと顎を反らして振り返る事もせず去って行ってしまったのであった。
あとに残されたランスロットは、目を真ん丸に見開いたまま、その場に暫く固まっていたのであった。
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