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本編【完結】
第一話 転入生がやってきました
王国一を誇る最も高貴な学園――グレイス国立学園。
お貴族様御用達のその学園に、転入生がやってきた。
その転入生は、珍しいピンクゴールドの髪と瞳を持つ男爵家の令嬢であった。
彼女は転入初日、幼い顔立ちに華奢な体を震わせ、見ているだけで守ってあげたくなるような不安そうな表情をしながら学園へとやってきた。
そして開口一番
「あ、あの……教員室へは、どう行けばよろしいのでしょうか?」
と、登校途中の生徒が往来する道のど真ん中で、丁度そこに登校してきた、この国の王子に向かって儚げな表情で道を尋ねたのである。
そしてその事がきっかけで、彼女は一躍有名人になったのであった。
それから一年後――
「まあ、またあの方ですわ。」
「本当に、節操を知らない方ですわねぇ。」
貴族の令嬢である女生徒たちが、教室から廊下を遠巻きに見ながら、ひそひそと囁き合っていた。
廊下には何故か人だかりができており、その中心にはあの男爵令嬢が居た。
エミリア・ランヴァッハ――それが彼女の名前だ。
目を見張るほどの美しい顔立ちに華奢な体、常に儚そうな雰囲気を纏った彼女は、転入早々人気者になった。
特に男子生徒だけに、であるが……。
彼女は数人の男子生徒たちに囲まれて、楽しそうに談笑していた。
「エリアーナ様、よろしいのですか?」
突然、噂をしていた女生徒の一人が、教室の真ん中の席で本を読んでいた令嬢に話しかけてきた。
エリアーナと呼ばれた少女は、読んでいた本からゆっくりと視線を上げると、そのままその女生徒を見る。
「何がですか?」
そして声をかけてきた女生徒に向かって、こてんと首を傾げながら聞き返してきたのだった。
「何がって……第一王子様の事ですわ。エリアーナ様の婚約者でございましょう?」
聞き返された令嬢は、呆れも露わにそう言ってきた。
その言葉に、エリアーナは「またか。」と嘆息する。
そして彼女たちの視線を辿ると、ピンクゴールドの少女の隣に、淡い金色の頭が見えた。
金色の髪の持ち主は、この国の第一王子であるレイモンド・グレイスハイゼン王子であった。
すらりと高い身長に、金髪碧眼の甘いマスクで貴族のご令嬢達から絶大な支持を得ている。
そんなイケメンモテモテ王子は、エリアーナの許嫁でもあった。
エリアーナ・アーゼンベルク――それが彼女の名前だ。
真っすぐ伸びた艶やかな黒髪に、少し吊り上がった赤い瞳を持つ彼女は、ハイゼン王国でも屈指の名門である侯爵家の御令嬢であった。
エリアーナは、女生徒の言わんとしている内容を正確に読み取ると、小さく息を吐きながら読みかけの本を、ぱたんと閉じた。
その瞬間、周りの令嬢たちが期待にざわめく。
要するに、婚約者としてあの女に苦言を申せと言いたいらしい。
エリアーナは、冗談じゃないと内心で首を振った。
「殿下が誰と何を話そうと、私にそれを咎める権利はございませんわ。それに、殿下はお優しいお方です。学園に不慣れな転入生を気にかけることに、なんの不満がありましょう?すべては殿下の御心のままに従うまでですわ。」
皆様もそうしてくださいませ、とエリアーナは優雅に微笑むと、読みかけの本に視線を戻してしまった。
そんなエリアーナに、周りの令嬢たちは何か言いたそうな顔をしていたが、本人が気にしないと断言したことを、いつまでも話のネタにするわけにはいかず、彼女らはすごすごと退散していった。
――はあ、やっと静かになったわ。
エリアーナは内心でほっと胸を撫で下ろす。
そして、ちらり、と本越しに廊下へと視線をやった。
そこには相変わらずな男爵令嬢と、その取り巻き達が楽しそうに話をしていた。
その輪の中に加わるレイモンドを見て、エリアーナは胸中で呟いた
――本当に全然、心配していないのよね、だって……
お貴族様御用達のその学園に、転入生がやってきた。
その転入生は、珍しいピンクゴールドの髪と瞳を持つ男爵家の令嬢であった。
彼女は転入初日、幼い顔立ちに華奢な体を震わせ、見ているだけで守ってあげたくなるような不安そうな表情をしながら学園へとやってきた。
そして開口一番
「あ、あの……教員室へは、どう行けばよろしいのでしょうか?」
と、登校途中の生徒が往来する道のど真ん中で、丁度そこに登校してきた、この国の王子に向かって儚げな表情で道を尋ねたのである。
そしてその事がきっかけで、彼女は一躍有名人になったのであった。
それから一年後――
「まあ、またあの方ですわ。」
「本当に、節操を知らない方ですわねぇ。」
貴族の令嬢である女生徒たちが、教室から廊下を遠巻きに見ながら、ひそひそと囁き合っていた。
廊下には何故か人だかりができており、その中心にはあの男爵令嬢が居た。
エミリア・ランヴァッハ――それが彼女の名前だ。
目を見張るほどの美しい顔立ちに華奢な体、常に儚そうな雰囲気を纏った彼女は、転入早々人気者になった。
特に男子生徒だけに、であるが……。
彼女は数人の男子生徒たちに囲まれて、楽しそうに談笑していた。
「エリアーナ様、よろしいのですか?」
突然、噂をしていた女生徒の一人が、教室の真ん中の席で本を読んでいた令嬢に話しかけてきた。
エリアーナと呼ばれた少女は、読んでいた本からゆっくりと視線を上げると、そのままその女生徒を見る。
「何がですか?」
そして声をかけてきた女生徒に向かって、こてんと首を傾げながら聞き返してきたのだった。
「何がって……第一王子様の事ですわ。エリアーナ様の婚約者でございましょう?」
聞き返された令嬢は、呆れも露わにそう言ってきた。
その言葉に、エリアーナは「またか。」と嘆息する。
そして彼女たちの視線を辿ると、ピンクゴールドの少女の隣に、淡い金色の頭が見えた。
金色の髪の持ち主は、この国の第一王子であるレイモンド・グレイスハイゼン王子であった。
すらりと高い身長に、金髪碧眼の甘いマスクで貴族のご令嬢達から絶大な支持を得ている。
そんなイケメンモテモテ王子は、エリアーナの許嫁でもあった。
エリアーナ・アーゼンベルク――それが彼女の名前だ。
真っすぐ伸びた艶やかな黒髪に、少し吊り上がった赤い瞳を持つ彼女は、ハイゼン王国でも屈指の名門である侯爵家の御令嬢であった。
エリアーナは、女生徒の言わんとしている内容を正確に読み取ると、小さく息を吐きながら読みかけの本を、ぱたんと閉じた。
その瞬間、周りの令嬢たちが期待にざわめく。
要するに、婚約者としてあの女に苦言を申せと言いたいらしい。
エリアーナは、冗談じゃないと内心で首を振った。
「殿下が誰と何を話そうと、私にそれを咎める権利はございませんわ。それに、殿下はお優しいお方です。学園に不慣れな転入生を気にかけることに、なんの不満がありましょう?すべては殿下の御心のままに従うまでですわ。」
皆様もそうしてくださいませ、とエリアーナは優雅に微笑むと、読みかけの本に視線を戻してしまった。
そんなエリアーナに、周りの令嬢たちは何か言いたそうな顔をしていたが、本人が気にしないと断言したことを、いつまでも話のネタにするわけにはいかず、彼女らはすごすごと退散していった。
――はあ、やっと静かになったわ。
エリアーナは内心でほっと胸を撫で下ろす。
そして、ちらり、と本越しに廊下へと視線をやった。
そこには相変わらずな男爵令嬢と、その取り巻き達が楽しそうに話をしていた。
その輪の中に加わるレイモンドを見て、エリアーナは胸中で呟いた
――本当に全然、心配していないのよね、だって……
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