異世界転移したので、帰還方法を探しながら魔王倒します

こうたろ

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6話「聖剣を飲み込んだ魔物」

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 石畳の街道を進む馬車が突然停止した。御者が短く「魔物です!」と警告するより早く、エレナは扉を開けて飛び出していた。赤毛が風になびく。

「前方200メートル!ホブゴブリン1匹と雑兵5匹!」

 疾風のように前衛へ躍り出る剣士。残る三人も続いた。セシリアの青い法衣が月明かりに輝く。

「陣形C!ミリア、バフを!」

 冷静な指示が飛ぶ。ミリアが素早く聖印を切った。

「聖なる加護《ホーリープロテクト》」

 四人に淡い光膜が張られる。同時にアキラが前に出た。

 まずは雑魚ゴブリン5匹が斧を振りかざして突進してくる。緑色の醜悪な顔が憎悪に歪む。

「任せて!」

 セシリアが杖を振るった。結晶化した呪文が鋭利に尖る。

「氷矢《アイスショット》!」

 いくつもの氷柱が一直線に放たれ、ゴブリンの膝関節を正確に貫いた。倒れこんだ隙にエレナが跳躍する。

「はぁっ!」

 細身剣が水平に弧を描き、一瞬で2体を屠った。切り返しで更に2体を討ち取る。残る一体が狼狽えながらも斧を振りかぶる。

 アキラの剣戟が割って入る。敵の軌道を見極めた最小限の回避と斬撃。金属同士がぶつかる硬質な音と共に斧を弾き飛ばすと、袈裟懸けの一撃で致命傷を与えた。

「気を緩めるな!大型が来る!」

 セシリアの警告で我に返る。身長2メートルを超えるホブゴブリンが咆哮を上げた。その巨体から振り下ろされる棍棒が地面を砕く。

「私が囮!アキラは右から!」

「了解!」

 息が合った掛け声と共に左右に展開。ミリアが後方で詠唱を開始する。

 エレナが挑発的に剣を打ち鳴らした。

「こっちを見なよ!」

 巨体が怒号とともに振り向き、棍棒が横薙ぎに唸る。エレナは紙一重で回避すると、すぐさま反撃に出た。

 が、ホブゴブリンはエレナの剣戟を見切ったかのように防ぎの構えを取る。

「なっ……!?」

 まさかホブゴブリンが剣技を見切るとは思わなかったエレナの動きが一瞬鈍った。その隙に棍棒が唸る。

 エレナも体勢を持ち直して緊急回避。だが衣服が裂け、左肩から血が迸った。聖なる加護《ホーリープロテクト》が無かったら左腕が切断されていたかもしれない。

「くっ!」

「ミリア!」

 アキラの叫びと同時に、

「聖なる癒し《ヒールライト》!」

 ミリアの祈りが即座にエレナを癒やす。薄緑の光がエレナの傷をふさいだ。

「こいつ普通じゃない……!」

 セシリアが舌打ちしつつ詠唱に入る。

 アキラが間合いを詰めた。ホブゴブリンの注意が完全にエレナに集中している一瞬を逃さない。

「隙あり!」

 渾身の斬撃がホブゴブリンの腹部を貫く。筋骨隆々とした肉体から赤い血潮が吹き上がった。

 しかしホブゴブリンは倒れずに棍棒を振りかぶる。

「くそっ!浅いか!」

 セシリアの詠唱完了の合図とともに、杖先から氷結の魔法陣が展開した。

「凍結拘束《フリーズバインド》!」

 氷の鎖がホブゴブリンの四肢を縛り付け、動きを封じ込める。

「今だ!」

 エレナとアキラが同時に跳躍。二人の剣がクロスを描くようにホブゴブリンの胸部を貫いた。

 巨体が膝から崩れ落ちる。大量の血痕が石畳に広がっていく。

「ふう……」

 セシリアが息を整えた。エレナが血に濡れた剣を拭いながらホブゴブリンの体内から光り輝く何かを引き抜く。

「なにそれ?」

「これは、聖剣の欠片だ」

「聖剣……?」

「聖剣は女神の加護が宿った13本の剣なんだけど、現存しているのは5本だけで残りの聖剣は魔族との戦いで失われていて」

「あ~、詳しくはいいよ……」

「ホブゴブリンには複雑な剣技を見切るのは不可能だ。なんらかの要因で聖剣の欠片を取り込んだ可能性が高い。これが無ければこんなに苦戦はしなかった」

「へぇ……」

「聖剣の欠片があれば鍛冶師に加工してもらうことで能力の恩恵を得られる可能性がある。この欠片が使えるかどうかはわからないけど、持っていこう」

 ホブゴブリンの体内から聖剣の欠片を取り出す。

 戦いが終わるとエレナは服が破れてボロボロになっていた。出血は止まったものの身体は辛そうだ。

「怪我は?」

「大丈夫……と言いたいところだけどちょっと痛い……」

 エレナは苦笑いした。左肩からまだ血が滲んでいる。すぐにミリアが近づいてきた。

「念の為、完全治癒《パーフェクトヒール》を施しますね」

 ミリアが手を翳すと淡い光がエレナを包み込み傷が綺麗さっぱり癒えていった。

「ありがとうございます。さてと……」

 エレナは改めてホブゴブリンを見た。

「それにしてもホブゴブリンがここまで強くなんて珍しいですね……」
「そうだね……さっきも言った通り聖剣の欠片の影響だと思うけど……」

 セシリアも首を捻る。

「とにかく先を急ごう」

 アキラたちは馬車に戻った。



 しばらくすると町の門が見えてきた。関所があり数名の兵士が検問をしているようだ。

 馬車はその前で停まり御者は降りて手続きを始めた。

「ありがとうございました。皆さんが居なければ私はあそこでホブゴブリンにやられていたでしょう。これはほんの気持ちです」

 御者は護衛の報酬とは別に金貨を手渡した。

「いえいえ、当然の事をしたまでですので」

 ミリアが謙遜しながら受け取る。

「ありがとうございます。それでは気をつけて……」

 手続きが終わり馬車は再び動き出した。

「それじゃあ宿を探すとしようか」

 エレナは胸を弾ませた。

「早くこの町の美味を堪能したいものです」

 セシリアが呆れ顔でエレナを見た。

「食べることしか考えてないんだね……」

 アキラは苦笑する。

 町中に入った一行は早速宿を探した。この町には大小様々な宿が点在しているので探すのに苦労はしなかった。見た目も悪くない感じの宿を見つけたのでそこに泊まることにした。
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