臨時バイト先は、“よろずや あやかし”?!

はちのす

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お掃除大作戦!

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「ほら見てくれよコレ!!オラの大切なおうちが大変なことになってるんだ! 」

 河童に案内されたのは、用水路の辺りにある決して大きいとは言えない窪みだった。
 状況から察するにその窪みに住み着いていたのだろうが……。

「本当にここに住んでるんですか?こんなゴミだらけの場所に? 」

「そうなんだ。少しおうちを空けてたらこんな事になってて、オラだけじゃどうしようもないから、よろずやに頼んだんだい! 」

 人間ってのは酷い奴らだよ!とプンプンしながら窪みを覗き込む河童。妖怪も妖怪で大変なんだな、と変に同情しそうになってしまった。

(いやいや、相手は妖怪だぞ。同情してどうする! )

 俺はまだ一人遊びを続けている猫又を後目に、さっさと依頼を済ませてしまおうとゴミを物色し始めた。

「なんだ、コレ……ゴミというか、教科書っぽいけど」

「きょうかしょ?とはなんだ」

「あ、いや。人間が学を深めるための書物というか……まあそんな類ですよ」

「ふぅん、なんでそれが河童の住処に捨てられてるのにゃ」

「そんなことオラが聞きたいよ! 」

 猫又の疑問はもっともだ。なんで教科書がこんなところに、しかも雑に投げ捨てられているのか。
 考えたって分からないし、とにかく依頼は達成しなきゃいけない。

「まあ、わからないけど……とりあえずコレを片付ければいいんだね? 」

 俺はちょっと河童と距離をとりながら尋ねてみた。
 例え依頼主といえど、ここ3年間で身に染み付いた妖怪を回避する事に青春をかけたと言っても過言ではない俺の本能的なものはすぐには変わらない。

( ……でも、猫又は別だ。ぱっと見はただの喋る猫だからな。)

 俺の言葉に顔を輝かせた河童は、俺の足をちょん!とこづいた。

「オラ、ここじゃなきゃ寝られないんだ。よろしく頼むよ人間! 」


******


「このちっこいゴミは片付いたぞ人間! 」

「あ、ありがとうございます。あとは本の束を横に避けて……しまった。ビニール紐持ってくるべきだったな」

 ゴミは比較的簡単に片付けが進んだ。河童にとっては一大事でも、平均以上の身長をしている俺にとっては普通に部屋掃除をしている感覚だ。
 全部が今回みたいな依頼だったらいいな、と期待しながら窪みの入り口を綺麗にし終わった頃。
 俺は、今まで見えていなかった窪みの中の光景に息を呑んだ。

「これ、ランドセル……? 」

 窪みの中には、壊れているらしい黒いランドセルが泥まみれになって放置されていたのだ。瞬間的に、廃棄物となってしまったこのランドセルの持ち主の身を案じてしまったのは当然の話だろう。
 持ち主はきっと、このランドセルを持ち去られたか、捨てざるを得ない状況になってしまったはずだ。

「にゃ?それも学びに必要なものなのか? 」

「なんか泥まみれだな~、川の底みたいだ! 」

「……これ、持ち主を探さなきゃ」

 俺の発言に驚いたのか、河童はこちらを凝視している。

「はえ?!なんでそんなことするんだ? 」

「捨てられているということはいらないってことなのではないか?」

「いや、これに限ってはそうとも言えないんです……これを使うのは、年端もいかない子供で、こんな風に捨てるなんて、本来はあり得ないんですよ」

「ふぅん、なるほど。この持ち主が死んでるかもってことだな」

「不吉なこと言わないでください! 」

猫又を咎めたものの、俺の脳裏にはその可能性がチラつき始めてしまっていた。

(乗りかかった船だ、持ち主を探してみよう)

 俺はいつぞやの烏を助けた時のように、一過性かもしれない正義感に突き動かされていた。
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