9 / 10
お掃除大作戦!
しおりを挟む「ほら見てくれよコレ!!オラの大切なおうちが大変なことになってるんだ! 」
河童に案内されたのは、用水路の辺りにある決して大きいとは言えない窪みだった。
状況から察するにその窪みに住み着いていたのだろうが……。
「本当にここに住んでるんですか?こんなゴミだらけの場所に? 」
「そうなんだ。少しおうちを空けてたらこんな事になってて、オラだけじゃどうしようもないから、よろずやに頼んだんだい! 」
人間ってのは酷い奴らだよ!とプンプンしながら窪みを覗き込む河童。妖怪も妖怪で大変なんだな、と変に同情しそうになってしまった。
(いやいや、相手は妖怪だぞ。同情してどうする! )
俺はまだ一人遊びを続けている猫又を後目に、さっさと依頼を済ませてしまおうとゴミを物色し始めた。
「なんだ、コレ……ゴミというか、教科書っぽいけど」
「きょうかしょ?とはなんだ」
「あ、いや。人間が学を深めるための書物というか……まあそんな類ですよ」
「ふぅん、なんでそれが河童の住処に捨てられてるのにゃ」
「そんなことオラが聞きたいよ! 」
猫又の疑問はもっともだ。なんで教科書がこんなところに、しかも雑に投げ捨てられているのか。
考えたって分からないし、とにかく依頼は達成しなきゃいけない。
「まあ、わからないけど……とりあえずコレを片付ければいいんだね? 」
俺はちょっと河童と距離をとりながら尋ねてみた。
例え依頼主といえど、ここ3年間で身に染み付いた妖怪を回避する事に青春をかけたと言っても過言ではない俺の本能的なものはすぐには変わらない。
( ……でも、猫又は別だ。ぱっと見はただの喋る猫だからな。)
俺の言葉に顔を輝かせた河童は、俺の足をちょん!とこづいた。
「オラ、ここじゃなきゃ寝られないんだ。よろしく頼むよ人間! 」
******
「このちっこいゴミは片付いたぞ人間! 」
「あ、ありがとうございます。あとは本の束を横に避けて……しまった。ビニール紐持ってくるべきだったな」
ゴミは比較的簡単に片付けが進んだ。河童にとっては一大事でも、平均以上の身長をしている俺にとっては普通に部屋掃除をしている感覚だ。
全部が今回みたいな依頼だったらいいな、と期待しながら窪みの入り口を綺麗にし終わった頃。
俺は、今まで見えていなかった窪みの中の光景に息を呑んだ。
「これ、ランドセル……? 」
窪みの中には、壊れているらしい黒いランドセルが泥まみれになって放置されていたのだ。瞬間的に、廃棄物となってしまったこのランドセルの持ち主の身を案じてしまったのは当然の話だろう。
持ち主はきっと、このランドセルを持ち去られたか、捨てざるを得ない状況になってしまったはずだ。
「にゃ?それも学びに必要なものなのか? 」
「なんか泥まみれだな~、川の底みたいだ! 」
「……これ、持ち主を探さなきゃ」
俺の発言に驚いたのか、河童はこちらを凝視している。
「はえ?!なんでそんなことするんだ? 」
「捨てられているということはいらないってことなのではないか?」
「いや、これに限ってはそうとも言えないんです……これを使うのは、年端もいかない子供で、こんな風に捨てるなんて、本来はあり得ないんですよ」
「ふぅん、なるほど。この持ち主が死んでるかもってことだな」
「不吉なこと言わないでください! 」
猫又を咎めたものの、俺の脳裏にはその可能性がチラつき始めてしまっていた。
(乗りかかった船だ、持ち主を探してみよう)
俺はいつぞやの烏を助けた時のように、一過性かもしれない正義感に突き動かされていた。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる