67 / 145
幸せとは
しおりを挟む俺と黒木は結局行く先もなく、ゆっくりと帰り道を歩いている。
ここら辺には目ぼしい施設もなく、どこに行くにも時間が足りないな、となったわけだ。
そうなってしまうと、後は2択しかない。
「田中君、どうする?俺の家にするか、それとも公園で時間潰すとか?」
公園、それは俺にとっては冷や汗が出るワードだ。
特に、自販機…とかな。
「いや…公園はいいや。
何もしないって約束してくれるなら、黒木の家行く。」
「……………」
「めっちゃダンマリじゃん…!」
「…前も言ったかもしれないけど、俺は田中君のことが好きなんだ。
確実じゃない約束はできない。」
「誠実な強情さ…ッ!!
あ、じゃあ折衷案だ!俺の家でどう?」
「田中君の家…良いの?ご両親は?」
「俺も一人暮らしなんだよね!
だから都合とか気にしなくて良いよ。」
「そうなんだ。」
黒木は納得したように頷くと、俺の半歩後ろに下がった。
「ついてくよ。」
再び黒木の家に飛び込むよりはまだ良い方だろう。
そう結論付けて、黒木を連れ帰り道を歩く。
「…なんで急に転校することになったか、聞いて良い?」
「あ~、事情は話せないんだけど、どうしようも無いんだ。
あ、黒木を避けてるわけじゃないよ?」
さっきも黒木は自分のせいかと気にしてたしな…!!
全然それよりも重度な奴らがいると教えてあげたい位だ。
近くまで来ていたので、家までは直ぐだった。
いつもは1人で歩くから、道のりが長いように感じてたけど…誰かと話してるとあっという間だ。
(これぞ青春…っ!!)
青春の味を噛み締めながら、ドアの鍵を開けて黒木を招き入れる。
「何もない所ですがーッ!!」
「お邪魔します。」
黒木はキッチリ靴を揃えてから、いそいそと部屋に上がってくる。
「綺麗だね。」
「そうけ?物が少ないからかもね。」
だって、暮らし始めて2週間も経ってないからね!!!
それに、いつか帰ると思えば、私物を買うっていう発想はなかった。
「さてと、何飲む?
…とは聞いてみたけど緑茶しかない。」
「ふふ、じゃあ緑茶で…」
黒木は部屋の中を物色することもなく、
ただ静かに俺がお茶を入れる所を見ていた。
「あんま見られるとやりづらいんだけどぉおお!!!」
視線に耐えかねた俺が、身をクネクネと捩りながら黒木にツッコミを入れる。
「…田中君、どうしても話せないなら強制はしない。」
「はぇ」
あ、さっきの話のこと考えてたのか。
俺は黒木にお茶を差し出した…が、
その手を素早く掴まれる。
その瞬間、黒木に掴まれて出来たあの小さな鬱血痕を思い出す。
ブワッと汗が滲み出たような感覚になる。
「く、黒木さぁん…??」
「俺もついてく。」
「…へ?」
「だから、田中君の行くところ。どこへでも。」
「ちょいちょい待って!!え、着いてくるって、引っ越すってこと?」
「そう。俺、高校なんてどこだって良い。
あの学校も親に言われて入っただけだし、田中君がいないなら行く意味ない。」
オオオ…そういうタイプなのね黒木!!
「着いていくだけなら…いいでしょ?」
「いやいや!良くないからね?!黒木の生活もあるし、ホラ親御さんも…」
黒木は突然、掴んでいた手を離すと、指を組み合わせるようにして握ってきた。
(こ、恋人繋ぎぃ…!!)
「俺が着いていくと、迷惑?」
必死に説得しようとする俺をどう思ったのか。
黒木はちょっとだけ小首を傾げ、切なそうな表情をする。
「め、迷惑ではないけど…っ!!」
「田中君が嫌なことはしたくない。
…この前も言ったっけ。」
黒木は俺と繋いだ手を幸せそうに見ながらはにかんだ。
その表情を見た瞬間。
「…俺さ、もうこの世界には居られないんだ。」
気付いたら、口からこぼれ落ちるように真実を話してしまっていた。
102
あなたにおすすめの小説
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は未定
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
・本格的に嫌われ始めるのは2章から
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる