BLゲームのモブ(俺)は誰にも見つからないはずだった

はちのす

文字の大きさ
102 / 145
DLC本編

再会、ときどき主人公。

しおりを挟む

先生との攻防戦をなんとか間一髪で逃げ切った。
その勝利に酔いしれていたからか…すっかり失念していた。

(そうだ、みんな2年生になって教室変わってるんだった…!!)

前に割り当てられていた教室を覗いてみたけど、パッとしないモブ顔ばかり。
イケメンにだけ許される、あのキラキラフィルターはどこにもかかっていなかった。

そんなことは露も知らず、モブたちは優しく『誰か探してるんですか?』などと声をかけてくれる。


「ありがとう茶髪君…教室を間違えたみたいだ」


声をかけてくれた茶髪の生徒に感謝を述べると、その子はにこりと笑って席に戻ってゆく。

するとどうだろう、それまで茶髪君として認識していたのに、周りのモブに溶け込むように消えていった。

そんな光景を見る度、俺の心は抉られていく。

(ほんっとこの世界ってモブの扱い雑だな…!!!)


「この世界の仕組みはイケメンが作ったに違いない。リアルモブとして圧倒的に許せん。」


ブツブツと愚痴りながら2階に続く階段を登っていると、ふと考えが浮かんだ。


「もしかして、屋上にいたりなんかしないよな…?」





屋上に続く道は、1年前となんにも変わっていなかった。

お弁当もパンも何も持って来ていないから、なんだか変な気分だけど…懐かしさに高揚する。

(ドッキリ的な感じで、ドアをババーン!と開け放って入ってみよっかな。)


「皆どんな反応するかな…ぐふふ。
黒木にはバレちゃってるけど、なんかあいつ内緒にしそうだし。」

「何を?」

「いやそりゃぁ田中 is back … ってぇぇえい?!」


バッと効果音がつきそうなほど勢いよく振り返る。

と、そこには爽やかスマイルを称えた売れっ子新人俳優が、ほぼゼロ距離で佇んでいた。ニンジャか!!


「おかえり」

「ち、近い近い近い…ただいま…」


あまりの近さにロボットのように“近い”と連呼していたら、
首に手を回され、グッと距離を縮められた。

1年の時を経た主人は、さらに身長が伸びており、平均的な身長の俺なんかはすっぽりと腕に包まれてしまう。

視界は主人の胸の辺りで彷徨っていたが、顎を上げられ、強制的に目線が合う。


「なんで一番に会いにこなかった?」

「ピェ」

「変な鳴き声出しても誤魔化されないから」

「うわぁ、主人さんが本気だぁ…!!」


主人は少し逡巡すると、小さな声でポツポツと話し始めた。


「田中…俺、最近めっちゃ活躍してるんだけど、見てくれてる?」

「へっ?」

「田中が、離れてったことを後悔させるくらい有名になってやろうって決意して頑張ったんだけど…失敗だった?」


笑みはそのままに、切なげに眉を下げるその表情で、主人がどれだけの想いでこの一年を過ごしたか伝わって来てしまう。

そのずっしりとした感情を一身に受け、胸が詰まる。

主人は沈黙をどう受け取ったのか、少し肩を下げながらゆっくりと体を離した。


「…そっか」


反射的に、離れていく腕を捕まえた。


「あ、えっと…ごめん!事情があって見れてないんだ。本当にごめん。
 よければ、その主人が出たやつ…また一緒に観たいんだ。

 …駄目、かな?」


頭ひとつ以上差が開いてしまったけど、負けじと見上げて目線を合わせる。
主人は目を丸くしてフリーズしていた。


「…はぁ、田中ってそういうとこあるよな。」

「マジでごめんって」

「キスしてくれたら許す」

「は?」

「ほら」


主人はそのままの体勢で軽く目を閉じた。


「なんで?え、ここで?誰もいないけど、公共の場よ?」

「…」


(ガン無視!!)


早く屋上に入りたいけど、全く動いてくれなさそうな雰囲気だ。
…かくなる上は!!

右頬に狙いを定め、衝突する勢いで突っ込んだ。

(誰が甘い雰囲気にしてやるかぁぁあ!)


「チェストォォオオ!!」

「こら」


何かを察知した主人は、勢いよく背伸びした俺の頬をガッチリと掴み


「…っん!」


あろうことか口に誘導しやがった…!
数秒動きを封じられて、ゆっくりと解放される。


「ごちそうさま」

「…っ変態!!破廉恥!!てかめっちゃ身長高くなりやがって!!何cmだよ!!!!」


ニヤッと微笑みを残し、身を翻して屋上へ向かった背中をバタバタと追いかけた。


しおりを挟む
感想 194

あなたにおすすめの小説

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

ビッチです!誤解しないでください!

モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃 「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」 「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」 「大丈夫か?あんな噂気にするな」 「晃ほど清純な男はいないというのに」 「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」 噂じゃなくて事実ですけど!!!?? 俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生…… 魔性の男で申し訳ない笑 めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

処理中です...