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1章 ようこそ魔法の世界!
8 ハローマイホーム!
しおりを挟む見渡せば木、木、木。
目の前には、一戸建てのログハウス。
花壇も整備され、色とりどりの花が咲き誇る庭に、野菜らしきものまで植えてある。
(や、やった…!)
何を隠そうこの俺、家無し宿無し一文無しを脱して、ついにマイホーム(借家)を手に入れました!!!!
パチパチパチ!
「カンザキ、随分嬉しそうだな。
そなたが喜ぶと私も嬉しい。」
銀の毛を持つ巨躯がフリフリと尻尾を振った。
「マーナ、ここまで守ってくれてありがとう。」
感動のあまり、マーナのふわふわな毛をスルリと撫で付けた。
ピコピコ動く耳までは手が届かないが、足や手は撫でることができる。
(って…ハッ!セシルさんが様付けして読んでいる存在に何しちゃってんだ俺!)
目の前の獣が高位の者と思い出し、急いで手を退けた。
「む?なんだ。もう終わりか?
もっと撫でてくれても良いのだぞ。」
そう言いつつ、マーナはのそりと顔を地面につけた。
視線の高さよりもちょっと下に、あのピコピコ動く可愛らしい耳がある。
ーゴクリ…
フワッ…ピクッ
「…ッカンザキ、耳はダメだっ」
「え!あ、ゴメン。なんかピクピクしてたから、つい…」
「む、動いていたか…そうか。
…少しだけなら触ってもいいぞ。」
なんと、お許しが出た!
その間も、尻尾はフリフリと動いている。
「じゃ、じゃあ少しだけ…」
「…ッ」
「あ、意外と硬いんだ。骨かな…」
意外と硬い耳の付け根を力を入れず柔く揉んでみた。
(人間だと耳付近は老廃物が溜まりやすいから、たまに柔く揉んであげると良いって聞くけど…狼もそうなのかな?)
フサフサで、心地よい温かさ。
その感触に夢中になっていると、か細い鳴き声が聞こえた。
「…キュッ」
「キュ?」
(あれ?尻尾がダランとしてる…もしかして、)
「ゴメン、痛かった?」
「い、いや…その、気持ち良すぎてだな…」
良く見るとマーナは目を潤ませ、なんだかヘナヘナしていた。
気持ち良すぎて力が抜けてしまったらしい。
(もしかして、俺…
モフモフゴッドハンド…?!)
「そっか、それなら良かった。
折角だし家に入ろうと思うんだけど、
マーナは入れないよな…」
ログハウスは学校とは違い、人サイズに作られている。
とてもじゃないけどマーナは入れそうになかった。
「それなら問題ない。長く生きているからな、人型をとることができる。」
(え、マジか!リアル獣人が見れるのか!)
一気に期待が高まり、期待の眼差しを向ける。
マーナはそれに気を良くしたのか、ドヤ顔で尻尾を振り上げた。
途端
シュルシュルとシルエットが小さくなり、目を開けたときには一人の体格の良いワイルドイケメンが立っていた。
見た目年齢は30代後半
身長で言うと、ダリアと同じくらいか。
髪と目の色は狼の姿のままだが、特筆すべきはその髪。
フサフサな印象を与える長髪になったのだ。
(さささ触りたい…!絶対モフモフだ…!)
「どうだ?人型をとっても、私の凛々しさは変わらぬだろう。」
「あ、ああ」
「ぬ?反応が薄いな…まあ良い、早く入るぞ」
マーナには悪いが、耳と尻尾が生えたままの姿が、凛々しさよりも可愛らしさが勝ってしまっている。
感情を表す機能がある事には変わりないのか、さっきから尻尾が揺れっぱなしだ。
ボール投げて遊んであげたいな…
「どうした、カンザキ」
「あ、いや今行く」
そんな邪な心を隠しつつも、マーナの後を追ってログハウスに入った。
*****
ログハウスの中は清掃員が片付けてくれたのか、ピカピカに磨かれていた。
部屋は個人の部屋にも出来そうな寝室やら書斎やらが3部屋あり、
他にも風呂トイレキッチンが完備されていた。
(おおお…前住んでいたところよりも広いし綺麗!)
「ほう、中々の作りだな。あの小童にしては気が利く。」
「マーナ、その小童ってもしかしてセシルさんのこと?」
「それ以外に誰がいる。」
「いやいや、セシルさんは命の恩人だよ。俺のことは名前で呼んでセシルさんは小童ってのがちょっと…」
「む?アイツが命の恩人?辞めておけ。そんな良いもんじゃない。」
「え?」
「そなたを私利私欲のために利用しようと企む輩だ。そんな奴小童で十分だと思わんか。」
(それを言うなら俺の方こそ
私利私欲で記憶喪失とかなんとか言っちゃってるからね!)
これはマーナにバレると不味いかもしれない。
「まあ、皆そんなもんでしょ。結果的に俺は助かっている。それでいいんだ。」
(というか、それでいいって事にしてくれ。)
「ふん…殊勝なことだ。
まあ、大船に乗ったつもりでいろ。カンザキの事は私が守ろう。」
「ありがとう。」
ー少しの居心地の悪さを感じはするが、今はこれでいい。
「あ、そうだマーナ。折角だしさ、食堂でご飯食べない?まだ学内知らないからさ、案内してほしいんだ。」
「無論、任せておけ。」
尻尾がピンと立つ。
分かりやすいなあ…
「食堂は学院内にある。
また来た道を戻る事になるが、荷物はいらないか?」
俺は手ぶらでこの世界に来ているんだ。
持ち物も何もない。
「うん、大丈夫。」
「そうか、なら私の荷物はこの部屋に置いておこう。」
そういうなり、どこからか出したのかマーナの衣服がサイドテーブルに置かれた。
ーへ?
「え、もしかして、マーナここに住むの?」
「当たり前だろう。私はカンザキが気に入った。側で過ごすことは自然ではないか?」
「いやいやいや、これほぼ同棲ですけど」
「なんだ、意外と口が良く回るのだな。
私と暮らすのは嫌か?」
「嫌ではないけど…」
「では良いだろう。私は人型を取れるし、何も問題がない。」
「問題はね、ないと思う。うん。」
「では食堂に行こう。」
ーじ、自由だなあ…
結局マーナに押し切られ、
ワイルドイケメンと男二人の悲しい新生活が始まることが決定した。
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