40 / 68
2章 新生活スタート
37 休校日の一悶着!
しおりを挟む「おーいカンザキ!こっちこっち!!!」
ユージンが大きく手を振りながら、こちらへ呼びかける。
今日は授業が始まってから初めての休みだ。
色々ありすぎて疲れていたが、こうして休みがあるとやはり元気が湧いてくるものだ。
昨日はあの後、何故かグリムにベッタリ纏わり付かれ、中々に大変な状況になった。
何が彼の琴線に触れたかは未だに分からないが、取り敢えず嫌われるよりはいいのだろう。
「すまん、ユージン。…待たせたか?」
「いや、俺もさっき来たところだよ。街行きへのバスはあと10分くらいで来るはず…」
ユージンはそこで言葉を区切ると、俺の服をじっくりと見始めた。
「それ、かなりのブランドものだよな…?似合ってる。」
「え、そうなのか。貰い物?なんだよコレ。」
そう、この着心地の良いシックながらもセンスを感じる服達は、昨日セシルさんから届けられたものだった。
添えられた手紙には『初の休校日だね!やはり元の服は目立つだろうから、コレをプレゼントします。沢山着てあげてね。』とミミズの這ったような文字で綴られていた。
そんなに高いブランド物だとは…後でお礼をしなければ。
と思ったけど、俺にできるお礼って何にも無いよな。
1人悲しみに浸っていると、肩をトンッと叩かれた。
「置いてくぞー!」
「あ、待ってくれ!!」
ユージンはいつのまにか来ていた高級感溢れるバスにさっさと乗車していた。
俺も同じ場所で待っていた他の生徒に続いて乗車し、学院を後にした。
**************
「おおお…これぞ異世界…」
前の世界にいた時に"魔法の世界"に憧れていた時期もあった。
まさにその光景が今、目の前に広がっている。
所狭しと開いている店で一直線になっている街道、その遥か先には城のような建物も見える。
往来には、シルクハットを被った紳士や、ローブを靡かせて歩くご婦人や、獣の耳や尾をフリフリと揺らして歩く獣人達。
空中にはあろうことか、馬車が走っている。
店の陳列物も、ひと処に留まらない自由奔放な動きをしていたり、鎖で固定されたりと様々だ。
食べ物はどれも美味しそうに写り、逆に情報量の多さで根を上げてしまいそうになっている。
「カンザキ、どうしたんだ?そんなキョロキョロして…もしかして、街は初めてか?」
「あ、いや!子供の頃に来たんだが、その時と大分受ける印象が違うから…」
「それわかる気がする。昔大きく感じていたものが実は小さかったりとかするよなぁ!」
「そうそう、そういう感覚だ。」
我ながら中々良いでっちあげが出来た。
幼少期って、記憶にございません戦法が使えるから楽だよな…
「そんじゃあさ、早速なんだけど、俺の目的の店、行っても良いか?」
「勿論。そういえば、何買うんだ?」
「ああ、アクセサリーをね。」
「へえ!いいな。ユージンなら何でも似合いそうだ」
そんなこんなを話しながら、目的らしい店にたどり着いた。
ぱっと見は、あまりアクセサリーを取り扱っているように見えない店の出立だ。
レンガを積み上げ、茶色木のドアが付けられている。
そのどれもが年季を経て、古めかしくなっている。
どちらかというと、書店と言われた方が納得できる様相だった。
「ヒヒッ、いらっしゃイ…」
「ここはね、魔力の込められたアクセサリーが売ってる所なんだ。」
「そうなのか…」
店内は清潔には保たれているが、少し暗い。
…なによりも、店主が怖いのだ。
長い銀髪で、前髪が顔を覆い隠している。
ガリガリに痩せており、じっとりとこちらを見てくる気配は、不気味な雰囲気をビシバシと放っているのだ。
そういえば、銀髪って無属性の括りだったな。
「何をお探しかナ…」
語尾の上がり方が、悪役ピエロ面を彷彿とさせる怖さだ。
「基礎身体能力のアップと、運アップを探してるんです。ありますか?」
「勿論だヨ…リングタイプとピアスタイプがあるけど、どうすル?」
「じゃあ、運アップはピアスタイプで。基礎体力は…どうする?カンザキ。」
「…は?」
突然話を振られ、店主をガン見してた俺は全く反応できずにいた。
え、なに?ピアス?
「俺、ピアス穴空いてない。というか、金持ってな…」
「!じゃあ、後で開けよう。今後も装飾必要になるだろうし!」
ユージンは何やら慌てながら会計を始めた。
待て待て待て…
「いやだから俺、金あんまないぞ…!」
「いいの、俺からのプレゼントだよ。受け取ってくれ。」
「えぇ…」
俺、誕生日かなんかだったか?
会計を済ませたユージンはホクホク顔だ。
なんか喜んでそうだし…いいのか?
「似合うだろうなぁ、コレ!」
「あ、ありがとう…ステータスアップのアクセサリーなのか?」
「ステータス…?あ、ポテンシャルのことね。そうそう、カンザキのは基礎体力アップ!」
「ぐっ…あ、ありがとう…」
遠回しにもやしと言われたが、こればかりはどうしようもないので、ユージンの気遣いが嬉しい。
嬉しいが…
「(これ、俺に効果あるのかな…)」
「基礎体力アップの呪い付きアクセサリーなんだけド、初ピアスの君、耳に合わせる調整するかラ…」
と不気味な店主に手招きをされる。
こっちに来いという意味らしい。
「あ、ユージン。なんか調節するらしいから、店内見ててくれ。」
「あ、そう?じゃあ隣のお菓子屋見ててもいいか?ダチにお使い頼まれてるんだよな。」
「オーケー。終わったら行く」
俺は店主に近寄ると、横の席に通された。
席に座ると、少し距離を取りながら向かい合う…途端。
壁のような前髪が割れて、透き通るような水色の瞳がこちらを見た。
「…アレ、君人間?」
「…っ!!」
「珍しいなァ、人間。…こんなところで何してるノ?忍び込んだノ?」
…油断した。
こんなに簡単に見抜かれるとは思っていなかった。
この水色の瞳、何か力があるのかもしれない。
取り敢えずこの難局、どうする…?
にげる
はぐらかす
うそをつく
選択肢が頭に浮かぶ。
どれも活路が見出せない…
ならば!!
「人間…ですけど。何か?」
▶︎ ひらきなおる
にげる
はぐらかす
うそをつく
顎を少しだけ上にやり、毅然とした態度で開き直ってみた。
「え、いや、別ニ…」
よし、俺の気迫に負けて狼狽たぞ…!
そのまま畳み掛ける!!
「店主さん、お名前は?」
「?イリアだが、何ダ…?」
「イリアさんね…」
俺の耳に近寄って停止していた手をそっと左手で取ると、緩く握る。
指は交互に交差させる、所謂恋人繋ぎだ。
緩く握り込んだり、離したりしながら感触を覚えるかのように繋ぐ。
イリアさんは手を引っ込めようともせず、驚きで身を固くしている。
これは、イケる…!
「…イリアさん、俺が人間で、不味いことあります?」
少し割れた前髪を、右手の指先でサラリと退かす様に触れる。
そのまま耳に掛けると、少し骨張った美しい顔立ちと水色の瞳が露見した。
部類で言うと、セシルさんやバールさんの様な美形だ。痩せ過ぎな節はあるが。
そこまで来てやっと我に帰ったのか…イリアさんが焦り始めた。
「…ッ!手を離セ!」
「こうやって、害の無いことを示してるんですよ。
俺は魔力のない無害な人間です…手を離すのは構いませんが、見逃してもらえませんか?」
ここで必殺!!!子犬うるうるビーム!!!!
悲しそうな表情で、優しく触れられた手を払い落とすなんて、そこそこ冷酷な心がないと出来ない。
…イリアさんの様な綺麗な瞳の人に、そんなこと出来るはずがない。
「…う、」
イリアさんは解こうとしていた手の動きを止め、俺の目を見つめた。
後一押し!!
繋いだ手を俺の心臓の上あたりに添えて、身体同士の距離を近づける。
先ほどより幾分か近くなった顔を覗き込む。
目を合わせながら、最後の一押し。
「イリアさん、お願いします。」
「~!!分かっタ!!!だから離セ!!」
「本当ですか!ありがとうございます!」
パッと手を離すとバッと距離を取られる。
挙動不審になりながら、こちらを見ていた。
「キ、君、魅惑か何かを持っているのカ…?人間なのニ…!」
「…魅惑?」
「いや、なんでもなイ…」
顔を赤くしながら忙しなく準備を始めたイリアさん。
これは無罪放免ってことでいいよな??
良かった~前の世界で使ってた技、こっちでも通用するみたいだ。
コレやったら親友も確実にお願いを聞いてくれていた。
それにしても…
「イリアさん、余計なお世話かもしれませんが、顔色が良くないですよ…?食事は取られていますか?」
イリアさんはかなり痩せており、ガリガリと言っても遜色ない。
食事を取っているか、気になるほどだ。
「誰のせいだトッ…!」
「ほら、顔も熱いです。」
「~~~ッ!!!!」
右手の甲でそっとイリアさんの額に触れる。
やっぱり熱い気がする。
「そうだ、イリアさん。この調整が終わったら、少し外してもいいですか?」
「もう終わっタ。どこにでも行ケ…」
「そうですか!ちょっと待っててくださいね。」
そう告げると、俺はそそくさとイリアさんの店を出た。
*************
「イリアさん!」
イリアさんは俺の姿を見ると深く溜息を吐いた。失礼な!!!
「また来たのカ…」
「これ、見逃してくれるお礼です!」
「…オードブル?」
「何がお好きか分からなかったので、一通り買っちゃいました!食べられなかったら、周りの方にあげて下さい。」
気持ちを一応態度で示しておこうと思ってね。
「…ハァ…食べれないものはなイ。いただくヨ」
「良かった。では、俺はこれで…」
「待テ、そのピアスに幻惑をかけておいた。魔力があると偽らせる呪いだ。
近寄らせなければバレる事もないだろウ。」
「…!ありがとうございます。また来ますね。」
「もう来るナ」
そんな冷たい風を装ったイリアさんの声を背に、店を出る。
(ピアスに工夫までしてくれて、それは説得力がないぞ…)
また街に出たら、イリアさんのお店を訪ねてみよう。
次はお菓子でも持って行こうかな。
ユージンと合流し、お茶をしながらそんなことを考えていた。
「カンザキ~聞いてるのか?」
「あ、すまん。考え事してた。」
「そろそろ拗ねるぞ…」
「ごめんって。それで?」
「それがさ~…」
************
6
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる