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再会
しおりを挟むシノビさんは厳しい顔つきで、廊下で待っている、と告げると腕を組んで壁に寄りかかった。
「お邪魔しま~す」
固く閉ざされた扉をゆっくりと開き、中の様子を窺うと、部屋の中で呆然と椅子に座るカイと目があった。
部屋の中は意外と物が多く、時間を潰すための書物も揃えられているようだった。
「……ユウト」
「久しぶり、って言うのもおかしいかな。拷問とかされてない? 」
カイは変わらぬテンションで話しかける俺を複雑そうな表情でマジマジと見つめた後、僅かに顔を歪めた。
まあ、そういう反応になるよな。
俺がカイの立場だったとしたら、どんなスタンスで話しかけていいかも迷う。
カイは数秒間黙った後、頭を下げた。
「私欲の為に、すまなかった」
「謝罪は求めてないよ、言ったよね。“俺は許す”って」
俺はそれよりも気になっていたことがあった。
カイが頭を下げたと同時に、何かを引きずるような音が聞こえたのだ。
カイが座っている椅子の後ろに回り込むと、両腕が鎖に繋がれていることに気がついた。
「うっわ、シノビさん、しっかり仕事してるなぁ……」
「この程度は当然だろうな、むしろ両腕が動かせるなんて、丁重すぎるくらいだ」
「そんなもんなんだ、一般人には分からない世界だなぁ」
俺はカイと真正面に向かい合い、あの時言えなかった言葉の続きを渡す。
「カイ、これは俺のエゴかもしれないけど、もう向こうの組織には戻らないでほしい」
「その前に、戻りようもないからな」
「そういうことじゃなくて、ウィルスの開発から手を引いてほしいんだ」
皮肉るような表情だったカイは、俺の発言の意味を理解すると、全てを諦めたような顔で俺を見上げてくる。
「そうか。ここにいる以上はユウトに従う……だが、今の俺の全てだったんだ。
研究は俺が命を続けていくための物。それを失うのなら生きる意味もないだろう。
……だから、殺してくれないか」
あくまでも軽いトーンで笑いかけながら俺の手を自分の首元に移動させる。
戸惑いもなく命を捨てようとするカイの様子は、痛々しかった。
「ウィルスを撒いた時点で俺の報復は終わったも同然だしな」
強制的に掛けられた手を退かしたいのに、上から凄い力で押さえつけられてピクリとも動かない。
その間にも徐々に強まっていくカイの手の力は、自らの首を締め上げていく。
「ちょ、待って待って!俺はなにも研究をやめて欲しいとは言ってないから! 」
「……? 」
「これからは、このビジランテで治療薬の研究をして欲しいんだ。それを次の生きる意味にして欲しいな」
「ウィルスを開発した俺が、治療薬を……? 」
カイは俺の手を離さず、首を傾げた。
子供のようなその仕草で、やはりカイの心は柔らかいままなんだと、そう実感した。
「まあこんな事言ってるんだけど、俺は研究のことあんまり詳しくないから。マニアックさんに相談かなぁ……」
「ユウト、君は……見かけによらず豪胆だな」
カイはどこかむず痒そうに口の端を上げ、そっと俺の手を放した。
そこでタイミングよく10分が経ったようで、控えめなノック音とともにシノビさんが入ってくる。
しっかりとドアに施錠しているのか、俺を振り返ることなく声をかけてきた。
(あ、ちょうどいいや)
「ユウトさん、何か話しましたか? 」
「はい、対ゾンビウィルスの治療薬を作ってくれるそうです!」
「ええそうですか……って、はい?」
シノビさんは俺を三度見する勢いで振り返ると、持っていた鍵を取り落とした。
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