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はちのす

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番外編

シノビの国②

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ーーシノビさんが帰ってこない。


俺は冷えた晩御飯が乗った皿をつついて暇を潰しながら、シノビさんの帰りを待っていた。

恐らくは元の雇い主の所に帰ったんだろうとは思うが、特に外泊するとも言われていない。

律儀な人だから、無断でアジトを1日離れるなんて考えられなかった。


(まさか、クリスの時みたいに何かあったんじゃ……)


俺は椅子に座っているはずなのに、内臓が浮き上がっているような、そんな感覚に襲われた。

マニアックさんも戻っているし、なんかあった時には対処が出来るけど、それもここまで辿り着いたらの話だ。


「ど、どうしよう、やっぱり探しに行った方がいいのかな」


「私の事でしょうか」


「あ、そうです。シノビさんを、って、え?! 」


「すみません、遅くなりました」


優しく声をかけられたことに気が付かず、少しの間頓珍漢な会話を繰り広げてしまった。


「心配しましたよ、外で何かあったんじゃないかって!」


「ああ、その……話が弾んでしまったもので」


話が弾んでしまった、という割に覇気のない声に違和感を感じて、シノビさんの顔をまじまじと見る。

あれ、目元が……腫れてる?


「ッ、あの、このお弁当食べる時間がなくて。すみません、お返しします」


そっと差し出されたのは、朝持たせたオムライスが詰められたお弁当箱だった。


「え、せっかく作ったのに食べなかったんですか? 」


口をついてそんな疑問が飛び出た。
だって、あんなにワクワクして作っていたのに、と当然思うだろう。

その疑問にも、すみません、と謝りっぱなしのシノビさんにいよいよ俺は何かあったと察した。


「シノビさん、少しお話ししましょうか」


そんな様子を見て、今日は俺から駄弁りに誘うことになったのは、自然な流れだっただろう。


******


「話せる範囲でいいんです。何があったか、聞かせてもらえますか? 」


俺はシノビさんの隣に座り、じっとその瞳を見つめた。
朝の輝きに満ちた虹彩は、もうどこにもなかった。


「……墓参りに行きました」


「墓参り、ですか」


「あの御方は、既に他界されていました」


(……やってしまった)


直感的にそう思った。


「ちょうどこのパンデミックが始まった折、病で倒れ帰らぬ人となったそうです。私には気を遣って知らせなかったと……っ! 」


シノビさんは、興奮したように拳をテーブルに叩きつけた。

シノビさんが帰ってきたので、事情を話してくれたらしい。
そんな話を聞きながら、俺は酷い自己嫌悪に陥っていた。


(俺が会いに行け、なんて言わなければ……)


こんな最悪な状態で、敬愛する人の死を知ることにはならなかっただろう。

もしかすると、このまま知らなかった方が良かったのかもしれない。
俺が背を押したことで、シノビさんはその残酷な事実を知ることになってしまった。


(完全な俺のエゴ、だったよなあ)


「ごめんなさい、シノビさん。俺が、会いに行ったらいいなんて言ったから……」


「それは違いますよ、ユウトさん」


謝罪をぴしゃりと跳ね除けられたことに驚いてシノビさんに目を向けると、彼はこちらに優しく微笑みかけていた。


「私は、むしろこの事を早く知ることが出来て良かったと、そう思っています。確かに、あの御方の最期に立ち会えなかったことは非常に悔いが残ります」


やはり後悔の念は残るのか、小さく指を振るわせると、拳を握り直した。


「死は必ず訪れます。そのことを知っていて尚、あの人の側を離れた自分が憎いんです。あの御方の窮地に気が付けなかった自分が……つまり私は、生きる意味を見失いました」


「え?」


「自死しようとして、此処に帰るのが遅れたんです」


突然起こった急展開に、声を上げることも叶わず、無の感情でシノビさんを凝視していた。
瞬きさえもすることが不安になってしまうほど、目の前の存在が不安定に見えた。


「ああ、そんな哀しい顔をしないでください。ユウトさんにそんな顔をさせてしまうと、そう気が付いて帰ってきたんですから」


俺は続けられた言葉を理解して初めて、乾いた目に潤いが満ちるのを感じる。


「あの御方しか存在しなかった世界に、貴方はいつの間にか入り込んでいた。部屋で貴方が泣き腫らしているのを見てからですよ」


俺を宥めるように頭を前後する手に、ふと心が落ち着いていく。
視線を上げると、にこやかな表情でこちらを見ている視線とかち合った。


「シノビさん、あの……」


「はい、なんでしょう」


「もう、自ら死のうなんて、思わないでくださいね」


「……貴方が諭してくれなければ、いつかは選んでしまうかもしれません」


「え、ちょっとシノビさん!! 」


シノビさんは慌てふためく俺を見て悪戯っぽく笑うと、俺の髪をわしゃわしゃと掻き乱した。


「なので、私が変な気を起こさないよう見張っていてくださいね」


トドメとばかりに額に落とされた唇が、俺の気を削いでいった。






*****

書きたかったもの、全部書き切りました!
ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございました!
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感想 28

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みんなの感想(28件)

Aria
2021.02.18 Aria

スイッチって、名前の通りオンオフが激しいタイプなんですね…。
確かにあのテンションじゃなきゃ、ヒーローなんてやってられないし、ユウトも諦めずに生還して良かったですよ、ホントに…。

解除
みー
2021.02.02 みー

ԅ(//́Д/̀/ԅ)ハァハァ♡
好きです😍😘😁❤️💕
もっと沢山エッティなシーンがみたいです(小声🤫)
欲望盛れ盛れ(漏れ漏れ)でした💦💦🤗🤗
続き全裸待機!!!!

解除
なぎなぎ
2021.01.31 なぎなぎ
ネタバレ含む
2021.02.01 はちのす

なぎなぎ様

こんばんは!!お久しぶりでございます〜!はちのすです。
ご感想ありがとうございます!!

残念ながら、はちのすの余力の問題で此処で終了となります……!!
お付き合いありがとうございました!

あとは残業リーマンと村人Aを店仕舞いするだけだぜ…!と意気込んでおります。

これからも拙作ならびにはちのすをよろしくお願いします!

はちのす

解除

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