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はちのす

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番外編

まるで騎士

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「ユウト」


シノビさんが去った後のアジトは、浮ついた雰囲気だった。
どうしたんだろう、と俺がアジト内をふらふらと歩いていると、2階に続く階段の上からカイに呼び止められる。

あの後、カイには窓のない部屋が充てがわれたのだ。
最初は抗議したが、カイ自身が気にしないと言うので、渋々そのままにしている。

窓がない部屋なんて、俺だったら1週間と待たずに発狂してしまいそうだ。


「俺の部屋で話をしないか」


「ん?なんか用があった? 」


仕事面では、カイと情報交換すべきことはなかったよな、と悶々と思考しつつ部屋に向かう。
俺の反応が期待していたものとは違っていたのか、カイは少し残念そうな顔をした。


「ああ、そう言うわけではないけど……用がなきゃ、君に話しかけちゃいけなかったか? 」


そう悪戯っぽい返しをされ、誘いを承諾する以外に選択肢は無くなってしまった。


(カイ、本当に丸くなったよな)


俺としてはこの変化は予想以上だった。
クリスやスイッチなどに邪険にされても、喧嘩腰になることはなく、むしろそれらを軽く受け流している。

部屋に通された俺は、以前よりだいぶ物が多くなった空間に、ほっと胸を撫で下ろした。
よかった、普通に生活できているみたいだ。


「カイ、ここでの暮らしはどう? 」


「慣れたよ。あの時は本当にすまなかった……思考停止状態で、目の前の餌に群がる事に何の疑念も持たなかったんだ」


カイは、俺の腕を取ると、スルリと表面を撫でる。ある一点で手が止まると、そこを執拗に撫で付けた。
多分だけど、その辺りに注射を打ったんだろう。


「カイ、他の皆にはまだ根深い問題かとは思うけど……。俺は気にしてないから、それだけは覚えておいて」


当事者がこんな事言うのもどうかしてると思うけどな。

すると、なにを思ったのか、カイは息を短く飲み込んで唐突に俺を抱き寄せた。


「ちょ、な、なに?!」


「今更で信用ならないかもしれないけどな。これから先、俺はどんな事があっても君を守ろう、ユウト」


「へ?あ、ありがとう……? 」


年上のガタイがいい男に、ぬいぐるみのように強く抱きしめられている“俺”というこの状況。
なんだか可笑しくて、少し笑ってしまう。


「冗談だと思っているな? 」


ムッとしたカイは俺をソファに座らせると、床に膝をついて俺を見上げてくる。
それはまるで、どこかの国の騎士のようなポージングだった。
あれ、これ前にも何処かで、と記憶を手繰り寄せようとした矢先、指の間に温かな体温が滑り込んでくるのを感じた。

所謂恋人繋ぎになった指をしっかり握ると、相手が確かに生きているという拍動が伝わってくる。


「俺は、君に命と心を救われた。ユウトの為だったらなんだってしよう」


存外真面目な話になって、俺が答えに窮していると、突然グイッと顔を寄せてくる。


「ッ?! 」


距離を詰められたのはほんの一瞬の出来事で、何か行動を起こす隙は与えられず、食いつく様に唇を重ねられる。
その勢いを殺せずにソファの背もたれに全身の力を預けてしまう。
一度背もたれに体を預けてしまっては、もう元の姿勢に戻ることは叶わなかった。


「っふ、」


両手は片手で完璧に押さえつけられてしまっており、カイの身体を跳ね除けるなんてことは到底できなかった。
何度も角度を変えて重ねられるその熱に酸素を奪われ、俺は思考能力が落ちてきていることに何となく気が付いていた。


(あれ、おれなんでキスして……)


そこまで考えてハッとする。相手はカイ、つまり男同士だ。ボヤボヤしてる暇なんてないだろ!


「んん~っ!!」


「……ん、拒絶しないでくれ、もう俺の世界には俺と君しかいないんだ」


ちゅ、ちゅっと音を立てて顔や首にキスを落とされる。


「だからといって、キスはやりすぎだって! 」


そういうと、カイは至極不思議そうな表情で、こういった。


「キス、以外に愛情を示すものが存在するのか? 」


その反応を見て、俺は遅すぎるタイミングで、カイの生い立ちを思い出した。
……きっとカイは、過去の人生で愛情を貰った経験が殆どないんだ。

そんな考えに辿り着いてしまった俺は、そっぽを向いていた顔の位置を戻し、受け入れ態勢を取った。


「お、俺だけにしろよ……他のメンバーにやったらびっくりされるからな」


「勿論、君にだけだ。ユウト」


恭しく頭を下げたカイは、仕切り直して、と言わんばかりにまた熱心に首筋への愛撫を始める。
結局、それはアニマさんのお昼ご飯を待ち望む声が、俺たちの耳に届くまで続いたのはここだけの話。

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