俺TUEEEに憧れた凡人は、強者に愛される

豆もち。

文字の大きさ
58 / 58
魔塔の狂人編

しおりを挟む




拝啓 王立第3騎士団の皆様

 時下益々ご清栄のこととうんたらかんたら。
 
 第1騎士団は、官舎だけでなく食堂の食事まで違いました。
 まさか、仕事アルバイト中に背筋を伸ばして、ナイフとフォークで静かに食べる事になるとは……。
 居心地が悪いの、なんのでビックリです。
 本当に平民が1人も居ないんですね。
 息を吸うと、高貴な匂いがします。
早く第3に戻りーーいや、早く普通の職に就きたいと強く感じました。
 
 取り急ぎ、このどうしようもない気持ちを。敬具





「ルゥ、どうした。ぼうっとして。食事が進んでいないじゃないか」
「……っは。意識が宇宙にっ」
「(ウチュ……?) 大丈夫か? 少し前にディオンとサシャ・ヴァロアが来たそうだな。何かされたのか」


 何かって。変態はともかく、弟は信じてあげてくれ。
 まあ、絡まれただけで物理的には何もされてない。
……いや、脅されたか。そうだな、アイツは悪い奴だ。うん。


「挨拶?に来たらしい、デス。お土産持って」
「そうか (ルゥには一度家庭教師をつけるべきだろうか。少し頭が……いや、だがのびのびと……) 」


「そうか」と、一言呟いてティーカップを傾ける姿は、とても様になっている。
 男の俺が見ても、黄色い声を上げたくなるくらいだ。
上げないけど。
 自分で言っといてなんだが、今の返答で納得してくれるんだ。というか、あんまり興味がなかったのかな。
 ディオンが仲が悪いだけで、フィン兄はそうでもないのかも知れない。


「あの、魔塔ってどういう場所ところなんですか」
「一概には言えないが、魔法や魔術を研究する機関だ。魔法が使える者がほとんどだが、使えない者も居るらしい」


 へえ。てっきり高レベルな魔法使いの巣窟だと思ってと。
 だって、貴族でマナが多い人でも入れないって言うし。基準は何なんだろう。


「事務作業員とは別なんですか」
「私も詳しくは知らない。魔塔あそこは、排他的というか閉鎖的な独立機関なんだ。貴族の権威も通じない」


 モンフォール家のフィン兄が言うって事は、少なくとも伯爵クラスの貴族では融通が効かない、と。
マジか。すげーな。これが独立機関!……なのか?


ーーゴクリ


「王家や公爵家もですかっ」
「そこはケースバイケースだ。だが、それこそサシャ・ヴァロアは公爵家だからな。彼が居る限りは、他の公爵家も難しいだろう」
「他の貴族が遠慮するって事ですか?
でも、ヴァロア家に有利になっちゃうんじゃ」


 権力バランスとかで、ドロドロしてそうなイメージが強いが、この国の貴族達は平和的なのか?
 普通に考えて、ヴァロア公爵家が魔塔の後ろ盾を得てるって事になるよな。


「ルゥは、デメテルの四大公爵家を知っているか」
「え~っと?」
「覚えておいた方が良い。まあ全員、この間父上と勉強したリストに入っている。名前を聞いたら、直ぐに分かるはずだ」


 なんだ、あの中に居るのか。
 えー、どの公爵だろ。宰相閣下も公爵だったっけ。


「ーーーーという訳で、ヴァロア公爵家は、四大公爵家の筆頭だ」


 アイツ、そんな立派な家柄のボンボンだったのか。
くそうっ。ムカつく!


「ふ~ん」
「さて。話を戻すが、サシャ・ヴァロアは確かに公爵家の人間だ。しかし、ヴァロア家と魔塔に繋がりはない。だから、他の公爵家も黙っているんだよ」
「それっておかしくないですか。
公爵の息子が魔塔で存在感を発揮してるのに、何で余所の家は黙ってるんです」
「サシャ・ヴァロアがヴァロア公爵ちちおやを怨んでいるのは、有名な話なんだ」


 いったい、どんな理由があるんだ。
 怨んでるからってだけで周りが納得するなんて変じゃないか。
 変態が父親だけじゃなく、ヴァロア家自体に協力しないって、信じてるわけだろ?
 うわー、どんだけドロドロなんだよ。変態の生い立ち。


「そうなんですか」
「ああ。聞かないのか? 何故、彼がヴァロア公を怨んでいるのか」
「んー、いいです。誰もが納得しちゃう様な、胸糞悪い話って事ですよね。そういうのは、ちょっと」
「そうか」
「はい」


 こういうのは、知らない方が良いんだ。
 フラグが立つからな。村人Aの俺には、必要ない。
むしろ、聞いたら厄災が降りかかりそうだ。
 悲しいかな、村人ってのは、あっさりぽっくり、一瞬で死ぬんだ。次はない。
 主人公が強大な敵に一度敗北して、立ち上がるとかいう胸熱展開は、村人には存在しない。
「敗北=死」だ。
 あー、危ない、危ない。





◇◆◇◆◇◆◇◆



「ふんふんふーん」
「わー、すっごいご機嫌っすね。第3騎士団との話し合い、上手くいったんすか。気絶した俺を放置して、室長はどっかに行きましたもんね。俺を置いて!」
「いや、それが全然」
「はあっ?! ちょ、マズイっすよ。怒られるっす」
「まあまあ、落ち着きなって~」


 助手くん、仕事は出来るんだけどねぇ。
なーんで、こんなに小心者なのか。
 
 あ゛~~流石に疲れたな。連日、騎士団長と副団長の相手したら、そりゃ疲れるわ。
 

「ルーカスくん、可愛かったなぁ」
「は。誰っすか、それ。失礼な事してないっすよね?!」
「してない。彼が気に入ったテオブロマをあげただけー」
「テオブロマを? 豆ごとっすか」
「まさか。ちゃんと精製したやつだよぉ」
「へー。薬師の方なんすか」


 やっぱそう思うよねー。
まさか、テオブロマをそのまま口にするなんて思わない。
 ただ苦いだけの薬の原材料を食べるなんて。


「ふふっ。喜んでくれてるかなぁ」
「うーわ、キモいっす」
「助手くーん。魔道具のバッテリー全部満タンにしといてー」
「全部……満…タンっ」
「そっ」
「鬼ぃっ! 人殺しぃっ!」


 やだなー、人聞きの悪い。僕は出来ない事は言わないのに。助手くんのレベルなら、ちょおっと無理すれば出来るでしょ。
 

「明日の朝までによろしく~。
あと、この部屋綺麗にしといて」
「はいいっ?!」
「明日、お客さん来るから」
「誰っすか!」
「ルーカスくん」
「だから誰なんすか、その人!
あ、薬師か」


 僕も知りたいな~。ルーカスくんが誰なのか。
 モンフォール家の居候で、ディオン・モンフォールの宝物。
 そしてたぶん、精霊の契約者。特別な、ね。


「早く明日になんないかなーっ。
テオブロマの温室を案内してぇ、塔の展望台に連れてって。あー、魔道具の試運転室も」
「ちょいちょいちょーい!
全っ部、機密ブースです。馬鹿なんすか。ダメですよ。一般人に見せちゃ」
「大丈夫。一般人じゃないから」
「えっ。もしかして魔塔の新入りさん?」
「ルーカスくんは、僕のお気に入り」
「頭大丈夫っすか?」


 
 
しおりを挟む
感想 6

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(6件)

spica
2021.11.25 spica

森の民編が辛すぎて心臓が潰れる思いでなんとか読みましたw切なすぎる😭
フィンとルーカスの関係性いいですね!
これからテオドールとか他の攻めも出て来ると思うと楽しみで仕方ないです!!

2021.11.26 豆もち。

spica様
 お読み頂き、ありがとうございます。嬉しいです泣
 そろそろ、他の攻め要員が動きますので、ぜひ今後も宜しくお願い致します!

解除
いぬねこ
2021.11.10 いぬねこ

作者様〜!!
フィンとの絡み、ありがとうございましたT^T
鼻血ものですー!

2021.11.10 豆もち。

いぬねこ様
 そう言って頂けて嬉しいです!

解除
唯我
2021.11.03 唯我

初めまして。
主人公のノリが良くて面白いです。ディオンさん大好きです。全然通じてないところが可哀想ですが、彼を応援してます。

過去編、とっても気になります。
どんな風に繋がっていくのか、楽しみにしています。

2021.11.03 豆もち。

唯我様
 初めまして。お読み頂き、ありがとうございます!
 私もディオン好きです。

 森の民編、楽しみにして下さり嬉しいです。
今度も宜しくお願い致します。

解除

あなたにおすすめの小説

転生したらBLゲームのホスト教師だったのでオネエ様になろうと思う

ラットピア
BL
毎日BLゲームだけが生き甲斐の社畜系腐男子凛時(りんじ)は会社(まっくろ♡)からの帰り、信号を渡る子供に突っ込んでいくトラックから子供を守るため飛び出し、トラックに衝突され、最近ハマっているBLゲームを全クリできていないことを悔やみながら目を閉じる。 次に目を覚ますとハマっていたBLゲームの攻略最低難易度のホスト教員籠目 暁(かごめ あかつき)になっていた。BLは見る派で自分がなる気はない凛時は何をとち狂ったのかオネエになることを決めた オチ決定しました〜☺️ ※印はR18です(際どいやつもつけてます) 毎日20時更新 三十話超えたら長編に移行します メインストーリー開始時 暁→28歳 教員6年目 凛時転生時 暁→19歳 大学1年生(入学当日) 訂正箇所見つけ次第訂正してます。間違い探しみたいに探してみてね⭐︎ 11/24 大変際どかったためR18に移行しました 12/3 書記くんのお名前変更しました。今は戌亥 修馬(いぬい しゅうま)くんです

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

転生したが陰から推し同士の絡みを「バレず」に見たい

むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。 ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。 しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。 今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった! 目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!? 俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!? 「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

年下くんに堕とされて。

bara
BL
イケメン後輩に堕とされるお話。 3話で本編完結です

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。