【本編完結】あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~

一ノ瀬麻紀

文字の大きさ
10 / 86
あれで付き合ってないの?(本編)

10. 突然の出来事

しおりを挟む
 太陽たいようは、佐久さくくん抜きで遊びに行くかーなんて言ってたけど、夏休みに入ってからしばらくは、佐久くんの特別授業の時間に合わせて集まることにした。

 特別授業があるのは丸々一日じゃないから、授業前に近くのファストフード店で少し話をしたり、授業後に集まってランチに行ったり。
 時にはおれ達も学校に集まって、そのまま佐久くんに勉強を教えてもらったりと、夏休み前半の平日は学校に来る日が多かったように思う。

 そして今日は珍しく、一日集中して勉強をしようということになった。

 たまには誰かの家でやるのも楽しいかもなんて意見が出たから、昼間両親が不在なおれの家でやることに決まった。

 学校での勉強と違って、家でやると休憩を挟む時間が多かったり、言葉もつい多くなってしまうように思う。それでも皆各々ノートに向かって真面目にペンを走らせていた。

 去年までは、勉強は蒼人あおとに教えてもらっていたなぁなんて思い出すと、なぜか少し寂しい気持ちになった。
 最近は、今まで感じたことのない感情が湧き出てくることが増えて、心の中で首を傾げる。
 でも、あまりにも一緒にいすぎたから、いないことに違和感を覚えてるだけだろうと自己解釈をして、止まっていた手の動きを再開した。

 午後になって、太陽と飯田いいだくんがそれぞれ家族からの連絡を受け取り、予定より早めに帰ることになった。
 二人も帰るなら解散にしようかとおれが提案したら、ちょっと話があるからと言われ、太陽と飯田くんが帰った後も佐久くんだけ一人残ることになった。

 太陽と飯田くんが、『丁度良いから二人で途中まで帰るよ』と言いながら家を出たのが、ほんの5分程前。

 話ってなんだろうと思ったけど、佐久くんがいるうちに片付けをしてしまおうと言うので、先程食べたケーキのお皿やコップなどを片付ける。

 そして綺麗に片付いたテーブルの両端に向かい合う形で座ると、佐久くんは正座で背筋をピンと正して、緊張した面持ちで口を開いた。

「回りくどいのは苦手だから単刀直入に言うけど。……俺と付き合ってくれないかな?」

 ──??

 佐久くんが何かを言ったみたいだけど、なんのことだろう?
 あまりにも唐突過ぎて、いつもより多くの瞬きをしながら、ゆっくりと首を傾げた。

『 お れ と つ き あ っ て く れ な い か な 』

 耳に入ってきた言葉を反復してみるものの、言葉として認識することが出来ない。単語の羅列として脳内に並んだそれらは、全く意味をなしているとは思えず、再び首を傾げて無言のまま考え込んだ。

「突然でびっくりしたよね。……でも、高校一年の頃からずっと気になってたんだ」
「高校一年の頃からずっと気になって……?」

 佐久くんは、おれが戸惑っているのはわかっているようだったけど、そのまま言葉を続けた。
 佐久くんの言っているセリフの意味は相変わらず理解できないままだったけど、オウム返しのように、言葉を返した。

「そう。一年生の頃から良いなって思ってたんだ。でも、由比ゆいくんの隣にはずっと森島もりじまくんがいただろ? 話しかけることが出来なかったんだ。俺だけじゃない。そう言ってる奴らは多いんだよ」

 正座をしたままずいっと一歩前進した佐久くんの行動に、変なアルファに絡まれた時のことを思い出してしまい、無意識に身体を硬直させた。

「ああごめん。怖がらせちゃったかな」

 佐久くんはそう言いながら慌てておれとの距離を取った。

 初めて会った時からそうだけど、佐久くんはとても紳士的だ。無意識に拒否反応を見せてしまったのに嫌な顔もせず、優しい言葉をかけてくれる。

「由比くんが怖がるなら、これ以上近づかないよ。でも、少しだけでも良いから考えてほしいんだ。いきなりだと不安なら、まずは友達として二人で出かけるのはどうかな?」
「友達として、二人で、出かける……?」
「ああ、そうだよ。いつもは四人で出かけるけど、二人で。──ああそうだ、君はお礼をしたいって言ってくれてたよね? じゃあ、それをお礼にしてくれないかな?」

 おれは少しずつ身体の緊張を解いて、佐久くんの言葉にゆっくりと耳を傾ける。

「……お礼?」
「そう、お礼。それに友達同士で二人で遊びに行くのは、不思議なことじゃないよ。……俺はもう、由比くんは大切な友達だと思ってるんだけど、君はどうなのかな?」

 佐久くんはいつもの爽やかな笑顔を見せると、おれの返事を待った。急かすことなく、目の前でニコニコとした笑顔は絶やさない。
 いつもと変わらない笑顔を見ていたら、ほっと身体の緊張が完全に緩んだのを感じた。

「そう……だね。……友達、だもんね。……一緒に出かけたって、おかしくないよね」

 自分に言い聞かせるように、ゆっくりと言葉を繋げてみた。

 そうだよ。友達と遊びに行くのに、何も緊張することなんてない。……おれは、何に怯えていたんだ? 佐久くんは、あのときのアルファとは違う。それに、困っているおれを助けてくれたじゃないか。

 自分の心に問いただした後、改めてまっすぐに佐久くんの方を見た。
 
「ふふ。良かった。いつもの由比くんに戻ってきたみたいで。……ごめんね、俺が急に告白なんかしちゃったから」
「あっ──」

 ニコニコ笑顔のままで言った佐久くんの言葉で、自分の置かれている状況を改めて思い出した。

 そうだよ。さっきフリーズしちゃったけど、あれって告白なの──!?

「ごめんごめん。ひとまずは、告白のことは保留にしておいて。由比くん、今すぐにでも爆発しそうな顔してる」

 クスクスと笑いながら、おれの頭をぽんぽんっと撫でると「じゃあ帰るね」そう一言残して部屋から出ていった。



 部屋に一人残されたおれは、ぽんぽんとされた手の優しさと、『告白』の二文字が頭から離れず、その場に立ち尽くしてしまった。

 しばらくぼーっとしてると、テーブルの上のスマートフォンがブーブーと振動した。

『さっき伝え忘れちゃったけど、帰ったら電話して良い?』

 佐久くんから届いたメッセージに気付くと、自然と口角が上がる。
 初めてのことばかりが起きてびっくりしてしまったけど、『友達とのやり取り』だと思うようにしたら、ちょっと心が軽くなった気がした。

「うん。帰ったら連絡して?」

 声に出しながら文字を打って、送信をした。

 自分で友達同士のやり取りだと思うようにしたくせに、その直後に考えたのは、『これは、テレビドラマで見た恋人同士のやり取りと同じじゃないか?』という考えだった。
 そう気付くと、急に胸がドキドキとはずんだ。
 蒼人と二人きりの時は安心はしたけど、こんな風にドキドキはしたことなかった。

 もしかしてこれが恋なのか?

 そんな考えが脳裏をよぎったけど、恋愛など無縁だったおれには、この感情が正しく恋なのか、判断するにはあまりにも経験が足りなすぎた。
しおりを挟む
感想 145

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

【完結】番になれなくても

加賀ユカリ
BL
アルファに溺愛されるベータの話。 新木貴斗と天橋和樹は中学時代からの友人である。高校生となりアルファである貴斗とベータである和樹は、それぞれ別のクラスになったが、交流は続いていた。 和樹はこれまで貴斗から何度も告白されてきたが、その度に「自分はふさわしくない」と断ってきた。それでも貴斗からのアプローチは止まらなかった。 和樹が自分の気持ちに向き合おうとした時、二人の前に貴斗の運命の番が現れた── 新木貴斗(あらき たかと):アルファ。高校2年 天橋和樹(あまはし かずき):ベータ。高校2年 ・オメガバースの独自設定があります ・ビッチング(ベータ→オメガ)はありません ・最終話まで執筆済みです(全12話) ・19時更新 ※なろう、カクヨムにも掲載しています。

【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~

上杉
BL
ずっとお前のことが好きだったんだ。 ある日、突然告白された西脇新汰(にしわきあらた)は驚いた。何故ならその相手は幼馴染の清宮理久(きよみやりく)だったから。思わずパニックになり新汰が返答できずにいると、理久はこう続ける。 「驚いていると思う。だけど少しずつ意識してほしい」 そう言って普段から次々とアプローチを繰り返してくるようになったが、実は新汰の方が昔から理久のことが好きで、それは今も続いている初恋だった。 完全に返答のタイミングを失ってしまった新汰が、気持ちを伝え完全な両想いになる日はやって来るのか? 初めから好き同士の高校生が送る青春小説です!お楽しみ下さい。

この噛み痕は、無効。

ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋 α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。 いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。 千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。 そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。 その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。 「やっと見つけた」 男は誰もが見惚れる顔でそう言った。

泡にはならない/泡にはさせない

BL
――やっと見つけた、オレの『運命』……のはずなのに秒でフラれました。――  明るくてお調子者、だけど憎めない。そんなアルファの大学生・加原 夏樹(かはらなつき)が、ふとした瞬間に嗅いだ香り。今までに経験したことのない、心の奥底をかき乱す“それ”に導かれるまま、出会ったのは——まるで人魚のようなスイマーだった。白磁の肌、滴る水、鋭く澄んだ瞳、そしてフェロモンが、理性を吹き飛ばす。出会った瞬間、確信した。 「『運命だ』!オレと『番』になってくれ!」  衝動のままに告げた愛の言葉。けれど……。 「運命論者は、間に合ってますんで。」  返ってきたのは、冷たい拒絶……。  これは、『運命』に憧れる一途なアルファと、『運命』なんて信じない冷静なオメガの、正反対なふたりが織りなす、もどかしくて、熱くて、ちょっと切ない恋のはじまり。  オメガバースという世界の中で、「個」として「愛」を選び取るための物語。  彼が彼を選ぶまで。彼が彼を認めるまで。 ——『運命』が、ただの言葉ではなくなるその日まで。

鈴木さんちの家政夫

ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて鈴木家の住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。

処理中です...