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02 新しい仲間
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「……ん?」
僕の視線に気付いたラパンは、僕の言葉を待つように、じーっと見つめてきた。
そんなに見つめられたら、僕の心臓は勝手にドキドキと心拍数を上げていく。
さっきの言葉が気のせいじゃなかったら、ラパンは僕と一緒に冒険に出たいと思ってくれているのかもしれない。
それは、ただ単に僕が危なっかしいからだけかもしれないけど、それでもよかった。
現実世界で友達がいない僕は、いつもひとりぼっちだったから――。
もし僕の勘違いだったらとても恥ずかしいけど、僕は思い切って聞いてみることにした。
「あ、あの……」
「どうした?」
「さっき、仲間として一緒に冒険するんだし……って」
「ああ、そのつもりだったんだが――。迷惑か?」
「そ、そんなことない! 迷惑じゃない! すごく嬉しい!」
ああ、やっぱり聞き間違いじゃなかったんだ!
ラパンは、僕とこの世界で一緒に過ごしたいと思ってくれたんだ。
僕は嬉しくなって、思わずラパンに抱きついてしまった。
「ゲームの世界で、早速友達ができるなんて! 本当に嬉しい!」
「まずは、友達から……か」
抱きついた僕を、きゅっと抱きしめ返してくれたラパンの声が、少し残念そうに聞こえた。
え? いきなり友達って図々しかったのかな。……じゃあ、冒険の仲間?
僕たちの関係は、なんていうのが正しいんだろう? なんて考えていたら、頭上からラパンの声がした。
「いい相棒になれそうだ。よろしくな」
「相棒? そっか、相棒なんだね! うん、よろしくね」
僕はラパンに抱きついたまま、嬉しくて、耳がぴくぴく、尻尾はふりふり――自然と動いてしまっていた。
現実世界の僕だったら、初対面の人にこんな風にいきなり抱きついたりしない。
でも、ここは違う自分になれるんだ。遠慮しないで、素直に甘えてもいいんだ。
優しく僕の頭を撫でてくれるラパンの胸の中が、とても心地よくて、僕はふにゃふにゃっと力が抜けてしまった。
初めて会ったはずなのに、なんでこんなに安心するんだろう……。
「いきなりモンスターに襲われたしな、もう疲れちゃったか? 今日はログアウトにするか?」
ラパンの胸の中でふわふわと夢見心地になっていた僕に、心配そうにラパンが声をかけてきた。
「ん……? あ、ごめんなさい。なんかすごく安心しちゃって」
僕はラパンの胸から離れて顔を上げた。
せっかく自由に動けるゲームの世界に来たのに、すぐログアウトするなんてもったいない。
「せっかくなんで、もう少しこの街のこと知りたいです」
「なんだまた敬語に戻ってるぞ?」
「あ! ご、ごめん」
「いい、気にするな。徐々に慣れていこう」
「うん、ありがとう」
ラパンは、ポンポンっと頭を撫でてくれた。
――あれ? なんだろう、この懐かしい感じは……。
ラパンに会ってから、なぜか胸がザワザワする。
初めてなのに初めてじゃないような、懐かしくて安心するような、そんな感覚に何度も陥る。
僕は、自分の胸に手を当ててみた。何か大切なことを忘れているのではないだろうか。
ラパンと一緒に冒険を続ければ、何かを思い出すのかもしれない。
それがなんなのかはわからないけど。
「動画だけじゃわかりにくいところもあるだろうし、この街を散策しながら、少しずつ説明するか」
「うん!」
僕が元気よく返事をすると、いつの間にか肩に移動していたユキも一緒になって、「うん!」と元気に返事をした。
いや、ユキはサポートキャラだろ? ってツッコミを入れたかったけど、嬉しそうにしているのが伝わって来たから、まぁいいか。
◇
「動画でも説明があったと思うけど、今回ログインしているこのゲームは、体験版なんだ」
僕がログイン前に見た動画は、製品版のチュートリアルの代わりのものだと言っていた。
動画だけじゃなく、AIアシスタント機能もついていて、わからないところを補足で説明してくれた。
でもやっぱり一度で覚えるのは無理で、僕はとりあえず冒険の始まりの街である、グリーンヒルで情報を集めればいいかなって、呑気に考えてたんだ。
そしたら、なぜか街じゃなくて草原の真ん中に立ってるし、ベアウルフに襲われちゃうし。
ラパンが助けに来てくれなかったら、今頃僕はゲームオーバーになって、何もしないまま現実世界に戻されてしまうところだった。
「体験版だから、難易度は控えめになっていて……」
ラパンの話によると、初めからある程度装備や魔法やアイテムが揃っている。体験版用のシナリオで、製品版に引き継ぎはできない。
体験版は、このゲームの世界観を楽しんでもらうのが主目的とされている。
そして体験版を実際にプレイしてもらって、発見されるバグやユーザーの声が、製品版にフィードバックされるらしい。
「だから本来は安全な街からのスタートで、モンスターレベルも低めのはずなんだけど……」
「ラパンはすごく詳しいね」
「もうすでに何度もこの体験版をプレイしているからな」
「そうなの!?」
「ちょっと知り合いに頼まれて……」
「じゃあ、ラパンがいれば安心だね!」
僕がニコニコしながら言ったら、ラパンはちょっと照れたように「ああ、そうだな」と少し視線を外してしまった。
あれ? 僕変なこと言ったかな?
でもなんか、視線を外したままのラパンの頬が、少し赤いような気がした。
僕の視線に気付いたラパンは、僕の言葉を待つように、じーっと見つめてきた。
そんなに見つめられたら、僕の心臓は勝手にドキドキと心拍数を上げていく。
さっきの言葉が気のせいじゃなかったら、ラパンは僕と一緒に冒険に出たいと思ってくれているのかもしれない。
それは、ただ単に僕が危なっかしいからだけかもしれないけど、それでもよかった。
現実世界で友達がいない僕は、いつもひとりぼっちだったから――。
もし僕の勘違いだったらとても恥ずかしいけど、僕は思い切って聞いてみることにした。
「あ、あの……」
「どうした?」
「さっき、仲間として一緒に冒険するんだし……って」
「ああ、そのつもりだったんだが――。迷惑か?」
「そ、そんなことない! 迷惑じゃない! すごく嬉しい!」
ああ、やっぱり聞き間違いじゃなかったんだ!
ラパンは、僕とこの世界で一緒に過ごしたいと思ってくれたんだ。
僕は嬉しくなって、思わずラパンに抱きついてしまった。
「ゲームの世界で、早速友達ができるなんて! 本当に嬉しい!」
「まずは、友達から……か」
抱きついた僕を、きゅっと抱きしめ返してくれたラパンの声が、少し残念そうに聞こえた。
え? いきなり友達って図々しかったのかな。……じゃあ、冒険の仲間?
僕たちの関係は、なんていうのが正しいんだろう? なんて考えていたら、頭上からラパンの声がした。
「いい相棒になれそうだ。よろしくな」
「相棒? そっか、相棒なんだね! うん、よろしくね」
僕はラパンに抱きついたまま、嬉しくて、耳がぴくぴく、尻尾はふりふり――自然と動いてしまっていた。
現実世界の僕だったら、初対面の人にこんな風にいきなり抱きついたりしない。
でも、ここは違う自分になれるんだ。遠慮しないで、素直に甘えてもいいんだ。
優しく僕の頭を撫でてくれるラパンの胸の中が、とても心地よくて、僕はふにゃふにゃっと力が抜けてしまった。
初めて会ったはずなのに、なんでこんなに安心するんだろう……。
「いきなりモンスターに襲われたしな、もう疲れちゃったか? 今日はログアウトにするか?」
ラパンの胸の中でふわふわと夢見心地になっていた僕に、心配そうにラパンが声をかけてきた。
「ん……? あ、ごめんなさい。なんかすごく安心しちゃって」
僕はラパンの胸から離れて顔を上げた。
せっかく自由に動けるゲームの世界に来たのに、すぐログアウトするなんてもったいない。
「せっかくなんで、もう少しこの街のこと知りたいです」
「なんだまた敬語に戻ってるぞ?」
「あ! ご、ごめん」
「いい、気にするな。徐々に慣れていこう」
「うん、ありがとう」
ラパンは、ポンポンっと頭を撫でてくれた。
――あれ? なんだろう、この懐かしい感じは……。
ラパンに会ってから、なぜか胸がザワザワする。
初めてなのに初めてじゃないような、懐かしくて安心するような、そんな感覚に何度も陥る。
僕は、自分の胸に手を当ててみた。何か大切なことを忘れているのではないだろうか。
ラパンと一緒に冒険を続ければ、何かを思い出すのかもしれない。
それがなんなのかはわからないけど。
「動画だけじゃわかりにくいところもあるだろうし、この街を散策しながら、少しずつ説明するか」
「うん!」
僕が元気よく返事をすると、いつの間にか肩に移動していたユキも一緒になって、「うん!」と元気に返事をした。
いや、ユキはサポートキャラだろ? ってツッコミを入れたかったけど、嬉しそうにしているのが伝わって来たから、まぁいいか。
◇
「動画でも説明があったと思うけど、今回ログインしているこのゲームは、体験版なんだ」
僕がログイン前に見た動画は、製品版のチュートリアルの代わりのものだと言っていた。
動画だけじゃなく、AIアシスタント機能もついていて、わからないところを補足で説明してくれた。
でもやっぱり一度で覚えるのは無理で、僕はとりあえず冒険の始まりの街である、グリーンヒルで情報を集めればいいかなって、呑気に考えてたんだ。
そしたら、なぜか街じゃなくて草原の真ん中に立ってるし、ベアウルフに襲われちゃうし。
ラパンが助けに来てくれなかったら、今頃僕はゲームオーバーになって、何もしないまま現実世界に戻されてしまうところだった。
「体験版だから、難易度は控えめになっていて……」
ラパンの話によると、初めからある程度装備や魔法やアイテムが揃っている。体験版用のシナリオで、製品版に引き継ぎはできない。
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そして体験版を実際にプレイしてもらって、発見されるバグやユーザーの声が、製品版にフィードバックされるらしい。
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「ラパンはすごく詳しいね」
「もうすでに何度もこの体験版をプレイしているからな」
「そうなの!?」
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「じゃあ、ラパンがいれば安心だね!」
僕がニコニコしながら言ったら、ラパンはちょっと照れたように「ああ、そうだな」と少し視線を外してしまった。
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