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44 助っ人
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慎重に街の中を進んでいると、うさぎさんの家の前に着いた。うさぎさんはいるだろうかと思いながら、そっと中に足を踏み入れた。
まるで泥棒みたいで申し訳ないなと思ったけど、もし悪い奴が潜んでいたらまずいし、ごめんなさいって心の中で謝りながら、中の様子を探った。
ガサガサ……
「っ!」
奥の部屋から、かすかな物音が聞こえた。
思わず声が出そうになった僕に、ラパンは口元に指を持ってきて、静かにと伝えてきた。
そのまま僕を見て「そこで待っていて」と無言で指示を出す。
僕は、息を潜めたまま、黙ってうなずいた。
ほどなくして、ラパンが戻ってきた。その両隣りには、3匹の子うさぎが体をピタッと寄せ合いながら、ついてきていた。
「あ!」
「おにいちゃん!」
子うさぎたちは僕を見つけるなり、3匹まとめて胸の中に飛び込んできた。
僕は、しっかりとキャッチして抱きしめた。
「どうしたの?」
「うんとね、おっきなあながあいて、みんなみにいったの」
「でも、かえってこないの」
「すぐかえるよっていったのに」
子うさぎたちは一生懸命説明をすると、帰らない家族や街のみんなのことを思い出したのか、3匹とも泣き出してしまった。
僕は落ち着くように「大丈夫だよ」と言いながら、子うさぎたちの体を優しく撫でた。
「そうか。何か異変が起きているのは確かなようだな」
「どうしよう」
「大丈夫だ。とにかく原因を探らないとならないな」
「うん。大きなトラブルじゃないといいけど……」
ラパンは、プログラムの異常なのかどうか、何もわからない状態では対処のしようがない。そう言ってうーんと唸った。
「この建物の奥に、地下室があるのを発見した。シロは子うさぎを連れて、地下に隠れていて。俺はログインしていない蒼馬と連絡を取って原因を探ってみる」
「わかった。ラパンも無理しないでね」
「シロも、俺が来るまで絶対にここを出るんじゃないぞ」
「うん。気をつけて」
僕は、ラパンの手を取り、そっとキスをした。
「僕からのお守りだよ」
「ありがとな」
ラパンも、同じように僕の手にキスをしてくれた。こんな状況なのに、胸が高鳴ってしまう。
何事もありませんようにと祈りながら、建物を出ていくラパンの背中を見送った。
◇
どのくらい過ぎたかわからないけど、何もできないもどかしさを感じていた頃、ラパンがソーマを連れて戻ってきた。
「何もなかったか?」
「うん、大丈夫。うさぎさんたちは、疲れて寝ちゃったよ」
「そうか」
僕たちが来たことで安心したのか、子うさぎたちは今はぐっすり寝ている。心細かっただろうな。
僕は地下室で寝ている子うさぎたちの様子を話した後、ラパンの隣にいるソーマさんに声をかけた。
「ソーマさん、昨日はありがとうございました」
「昨日は、ちょっとちょっかい出し過ぎちゃったかな」
そう言ってソーマさんは、いつもと変わらない様子で笑った。
気持ちが滅入りそうになっている時に、変わらぬ笑顔でホッとする。
昨日ソーマさんが、あいつやきもちやくぞと言った通り、ラパンは僕とソーマさんが楽しそうにしているのを見て、やきもちをやいたと言ってくれた。
「お前だから良かったけど、他のやつだったら、確実に埋めてやったよ」
「ちょ、お前それは物騒だな」
「自分の恋人と、他の男が仲良くしているのを見て、何も思わない方がおかしいだろ?」
「そりゃそうだけどさー。あまり重いと、愛想つかれるぞ?」
「そんなことはない」
「うわー、すごい自信。その割にやきもちやいてたけどな?」
「うるさい」
親友だから、こんなふうに言い合えるんだろうな。
軽く挨拶代わりに戯れるように言い合う2人は、僕が割り入ることのできない関係のような気がした。
そんな2人を見ていたら、間に割り入って邪魔をしたいそんな気持ちになった。
この感情が「やきもち」なんだね……。
今まで、好きになった人もいなければ、恋人だっていなかった僕にとって、初めての感情だった。
ラパンは、僕に初めてのことをたくさん教えてくれる。
「あっちでも調べてるらしいけど、原因特定に至ってないそうだ」
「んで、俺たちがゲーム内から調べてみることになったんだ」
さっきまで楽しそうにやり合っていた2人は、急に真面目な顔になって、僕に説明をしてくれた。
もしかして、思ったより大変なことになってるんじゃないの? 僕は真剣に話し合うラパンとソーマさんを見ていたら、また少し不安になってきた。
「そんな顔するなって。大丈夫だ。俺たちは、ゲーム制作者側の人間だからな」
「そうそう。バラしちゃうとな、俺たちは一般プレイヤーにはない設定とか機能もあるんだぜ?」
「何かあっても対応できるようになってるから……だから、絶対大丈夫だから、シロはここから動かないでいてな?」
ラパンもソーマさんも、僕にこれ以上不安にさせないように、なるべく明るくなんでもないことのように振る舞おうとしてくれてるんだ。
だから僕も、心配かけないようにしないと……!
「うん、わかったよ。絶対ここから出ないって約束する。……だからラパンもソーマさんも、絶対無理しないで、ここに戻ってきてね」
僕は、2人に神様のご加護があるようにと祈った。魔法として使えるわけじゃないけど、きっと僕のこの思いは2人を守ってくれるはずだ。
その後ろ姿は、手の届かないところへ行ってしまいそうで、思わず手を伸ばしかけた。
けれど、きっとまた戻ってくる──そう信じて、遠ざかる背中を静かに見守った。
まるで泥棒みたいで申し訳ないなと思ったけど、もし悪い奴が潜んでいたらまずいし、ごめんなさいって心の中で謝りながら、中の様子を探った。
ガサガサ……
「っ!」
奥の部屋から、かすかな物音が聞こえた。
思わず声が出そうになった僕に、ラパンは口元に指を持ってきて、静かにと伝えてきた。
そのまま僕を見て「そこで待っていて」と無言で指示を出す。
僕は、息を潜めたまま、黙ってうなずいた。
ほどなくして、ラパンが戻ってきた。その両隣りには、3匹の子うさぎが体をピタッと寄せ合いながら、ついてきていた。
「あ!」
「おにいちゃん!」
子うさぎたちは僕を見つけるなり、3匹まとめて胸の中に飛び込んできた。
僕は、しっかりとキャッチして抱きしめた。
「どうしたの?」
「うんとね、おっきなあながあいて、みんなみにいったの」
「でも、かえってこないの」
「すぐかえるよっていったのに」
子うさぎたちは一生懸命説明をすると、帰らない家族や街のみんなのことを思い出したのか、3匹とも泣き出してしまった。
僕は落ち着くように「大丈夫だよ」と言いながら、子うさぎたちの体を優しく撫でた。
「そうか。何か異変が起きているのは確かなようだな」
「どうしよう」
「大丈夫だ。とにかく原因を探らないとならないな」
「うん。大きなトラブルじゃないといいけど……」
ラパンは、プログラムの異常なのかどうか、何もわからない状態では対処のしようがない。そう言ってうーんと唸った。
「この建物の奥に、地下室があるのを発見した。シロは子うさぎを連れて、地下に隠れていて。俺はログインしていない蒼馬と連絡を取って原因を探ってみる」
「わかった。ラパンも無理しないでね」
「シロも、俺が来るまで絶対にここを出るんじゃないぞ」
「うん。気をつけて」
僕は、ラパンの手を取り、そっとキスをした。
「僕からのお守りだよ」
「ありがとな」
ラパンも、同じように僕の手にキスをしてくれた。こんな状況なのに、胸が高鳴ってしまう。
何事もありませんようにと祈りながら、建物を出ていくラパンの背中を見送った。
◇
どのくらい過ぎたかわからないけど、何もできないもどかしさを感じていた頃、ラパンがソーマを連れて戻ってきた。
「何もなかったか?」
「うん、大丈夫。うさぎさんたちは、疲れて寝ちゃったよ」
「そうか」
僕たちが来たことで安心したのか、子うさぎたちは今はぐっすり寝ている。心細かっただろうな。
僕は地下室で寝ている子うさぎたちの様子を話した後、ラパンの隣にいるソーマさんに声をかけた。
「ソーマさん、昨日はありがとうございました」
「昨日は、ちょっとちょっかい出し過ぎちゃったかな」
そう言ってソーマさんは、いつもと変わらない様子で笑った。
気持ちが滅入りそうになっている時に、変わらぬ笑顔でホッとする。
昨日ソーマさんが、あいつやきもちやくぞと言った通り、ラパンは僕とソーマさんが楽しそうにしているのを見て、やきもちをやいたと言ってくれた。
「お前だから良かったけど、他のやつだったら、確実に埋めてやったよ」
「ちょ、お前それは物騒だな」
「自分の恋人と、他の男が仲良くしているのを見て、何も思わない方がおかしいだろ?」
「そりゃそうだけどさー。あまり重いと、愛想つかれるぞ?」
「そんなことはない」
「うわー、すごい自信。その割にやきもちやいてたけどな?」
「うるさい」
親友だから、こんなふうに言い合えるんだろうな。
軽く挨拶代わりに戯れるように言い合う2人は、僕が割り入ることのできない関係のような気がした。
そんな2人を見ていたら、間に割り入って邪魔をしたいそんな気持ちになった。
この感情が「やきもち」なんだね……。
今まで、好きになった人もいなければ、恋人だっていなかった僕にとって、初めての感情だった。
ラパンは、僕に初めてのことをたくさん教えてくれる。
「あっちでも調べてるらしいけど、原因特定に至ってないそうだ」
「んで、俺たちがゲーム内から調べてみることになったんだ」
さっきまで楽しそうにやり合っていた2人は、急に真面目な顔になって、僕に説明をしてくれた。
もしかして、思ったより大変なことになってるんじゃないの? 僕は真剣に話し合うラパンとソーマさんを見ていたら、また少し不安になってきた。
「そんな顔するなって。大丈夫だ。俺たちは、ゲーム制作者側の人間だからな」
「そうそう。バラしちゃうとな、俺たちは一般プレイヤーにはない設定とか機能もあるんだぜ?」
「何かあっても対応できるようになってるから……だから、絶対大丈夫だから、シロはここから動かないでいてな?」
ラパンもソーマさんも、僕にこれ以上不安にさせないように、なるべく明るくなんでもないことのように振る舞おうとしてくれてるんだ。
だから僕も、心配かけないようにしないと……!
「うん、わかったよ。絶対ここから出ないって約束する。……だからラパンもソーマさんも、絶対無理しないで、ここに戻ってきてね」
僕は、2人に神様のご加護があるようにと祈った。魔法として使えるわけじゃないけど、きっと僕のこの思いは2人を守ってくれるはずだ。
その後ろ姿は、手の届かないところへ行ってしまいそうで、思わず手を伸ばしかけた。
けれど、きっとまた戻ってくる──そう信じて、遠ざかる背中を静かに見守った。
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