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本編
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離れがたくなるから、王はクロードの倫理の内で収まる範囲しか触れなかった。唇、額、瞼、頬、首筋、手首、順番にキスをして、そうして再び唇に触れれば、ゼファー、と吐息で名前が零された。
ずっと触れていたかった。だが、篤実の辺境伯が好む王でいたいのならば、色欲だけに囚われているわけにはいかなかった。
「クロード」
「……はい」
「次にお前の寝台に招かれた時には、奥まで許されたいものだな」
笑って、王はクロードの体の上からその巨躯をどかせた。重さから解放されて、ベッドが軋む。
「時が許せば、もちろん……お招きします」
「時だけか? お前はユリウスの弟がいる時には、あまり乗り気ではないからな」
「その、何かあってはユリウス殿に申し訳が立ちませんから……」
「もうあれも十七だろう」
そう言いつつも、王は真面目な恋人の道徳心を愛でた。この男が年少の者に向ける、博愛や慈愛を見るのが好きだった。
「……まだ十七ですよ」
「最初にお前が私に手を出された年だな」
魔竜討伐後、戦勝を祝うべきその時に、口付けた。
そのことだとわかっているから、クロードも頬を染めた。
「……口付けまでしかしてくださらなかった年、でしょう」
「ほう。言うようになった」
事実そうだったので王は笑った。
あの頃、手籠めにして体の奥底まで触れるのは容易なことだった。
ただ王が、クロードの幼い恋がいつまで続いてくれるのか、不安がって踏み込めなかっただけだ。
「私とて弟子の前では見栄を張りたいですから。成人までは、同じ屋根の下ではよしましょう」
「ふむ。そのような節制も、いつか懐かしく思う日が来ると思えば一興か。あと一年のことでもあるしな」
「そうして頂けると、いずれお招きする日のことを思うと熱が入ります」
「……本当にお前は私を喜ばせるのが上手い」
王はクロードの右手を掬って手の甲に口付けた。その薬指には二十歳の頃より王が贈った指輪が嵌められている。
「陛下、出立のご用意が整いました」
「ああ。今出る」
護衛の兵の声が掛けられて、王はいよいよ恋人に熱を上げる男の顔だけをしているわけには行かなくなった。
「お見送りを」
「いや。お前が見送っていると思えば、後ろ髪を引かれずにはいられん。……だからここで、恋人の顔のまま送ってくれ」
わずかにクロードの目が大きく見開く。そして、その澄んだ青い目は緩く細められて、眉を下げて笑った。王が求めた、恋人としての顔だった。
「はい。……行ってらっしゃいませ、ゼファー」
「ああ、行ってくる」
十七の頃と変わらぬ笑みで笑うクロードにもう一度口付けて、王はその巨躯を翻して、恋人の部屋を辞した。
ずっと触れていたかった。だが、篤実の辺境伯が好む王でいたいのならば、色欲だけに囚われているわけにはいかなかった。
「クロード」
「……はい」
「次にお前の寝台に招かれた時には、奥まで許されたいものだな」
笑って、王はクロードの体の上からその巨躯をどかせた。重さから解放されて、ベッドが軋む。
「時が許せば、もちろん……お招きします」
「時だけか? お前はユリウスの弟がいる時には、あまり乗り気ではないからな」
「その、何かあってはユリウス殿に申し訳が立ちませんから……」
「もうあれも十七だろう」
そう言いつつも、王は真面目な恋人の道徳心を愛でた。この男が年少の者に向ける、博愛や慈愛を見るのが好きだった。
「……まだ十七ですよ」
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そのことだとわかっているから、クロードも頬を染めた。
「……口付けまでしかしてくださらなかった年、でしょう」
「ほう。言うようになった」
事実そうだったので王は笑った。
あの頃、手籠めにして体の奥底まで触れるのは容易なことだった。
ただ王が、クロードの幼い恋がいつまで続いてくれるのか、不安がって踏み込めなかっただけだ。
「私とて弟子の前では見栄を張りたいですから。成人までは、同じ屋根の下ではよしましょう」
「ふむ。そのような節制も、いつか懐かしく思う日が来ると思えば一興か。あと一年のことでもあるしな」
「そうして頂けると、いずれお招きする日のことを思うと熱が入ります」
「……本当にお前は私を喜ばせるのが上手い」
王はクロードの右手を掬って手の甲に口付けた。その薬指には二十歳の頃より王が贈った指輪が嵌められている。
「陛下、出立のご用意が整いました」
「ああ。今出る」
護衛の兵の声が掛けられて、王はいよいよ恋人に熱を上げる男の顔だけをしているわけには行かなくなった。
「お見送りを」
「いや。お前が見送っていると思えば、後ろ髪を引かれずにはいられん。……だからここで、恋人の顔のまま送ってくれ」
わずかにクロードの目が大きく見開く。そして、その澄んだ青い目は緩く細められて、眉を下げて笑った。王が求めた、恋人としての顔だった。
「はい。……行ってらっしゃいませ、ゼファー」
「ああ、行ってくる」
十七の頃と変わらぬ笑みで笑うクロードにもう一度口付けて、王はその巨躯を翻して、恋人の部屋を辞した。
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