皇帝になったので兄を手籠めにして嫁にした

末野みのり

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弟が旦那様になったので、全力で尽くした結果

3.♡やさしいおかあさんなんて、しらないのにね

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 カサ、と紙が床に落ちる音を聞いたのは三回目だったか。
 仕方ないか、とクレイヴェルは無理矢理に意識を切り替えた。フォルスの夫から、皇帝のものに。
 指先に魔力を乗せて、念動力で書簡を手元に引き寄せる。その全てが国務大臣からのものだった。

「……兄上、兄上。書簡、三通もきてる。一回、政王陛下になって」
「……や、だ……」

 掠れた声でフォルスがぐずる。
 かわいいな。クレイヴェルは率直に思ってフォルスのうなじにキスを落とす。ベッドに押さえつけられて散々にイキ狂った体は、その刺激だけで震えて、ため息もらした。

「こら、兄上。今やっておかないと後で兄上が困るんだから」
「うん……、でも、でも……ヴェル……、抜か……、抜かないで……」

 ぼろぼろとフォルスは涙を流してねだる。雄の本能がぐらついて、挿れたままの性器が膨らむ。ねだった通りに、ガバガバになるまでずぼずぼされて、種付けされて柔らかくなった雌穴は、膨らんだ性器を撫でるように抱きとめた。
 やっぱり俺だけのものにしたいな。どこにも出さないで、ずっと雌穴に嵌めて、褒めてやったら、この人、俺のちんこをよしよしするだけの生き物になってくれるんじゃないかな。
 欲望は空想で終わる。やろうと思えばいつでも出来るが、クレイヴェルは政王としての兄も愛していたので。

「抜かないから。お仕事終わったら、またいっぱい子宮に子種入れてあげるからね」
「うん……」

 ぐすぐすと泣きながらフォルスは筆を走らせる。手はぶるぶると震えて、筆跡も乱れているのに、文面は確かな聡明が宿っていて、この人ほんと真面目だな、とクレイヴェルは微笑ましく兄の勤勉を愛でた。
 後ろから陰茎を嵌めたまま、クレイヴェルはフォルスの指先をじっと見て、何行も続く文字を書き記す音を楽しんだ。
 一枚目、二枚目、三枚目。
 三枚目には、フォルスの手は何度か止まった。クレイヴェルはもし兄が相当に迷っているのなら、皇帝として決断の責任を負ってやろうかとも思ったが、兄の手がしばらくして再び動き出すのを見て、黙って見守った。
 そうして、ぱたり、と力尽きたようにフォルスの手が止まる。

「終わり?」
「うん……」

 フォルスのうなじにキスをして、クレイヴェルは指先に魔力を込めた。念動力でフォルスの書簡を畳み、ドアの狭間へと挟み込む。
 普段ならばやらない横着だったが、ぴったりとくっついて懐いた雌穴から抜きたくなかった。願われた通りにしてやりたかったし、クレイヴェルも離れたくなかった。

「ずっと、ずっとこのままがいいのに……」

 ぽつり、とフォルスは呟く。
 このところ交尾に溺れ始めた兄は、閨事の戯れの睦言ばかりではなく、時折こうして本心から甘えたことを言うようになった。
 繁殖期となれば尚更で、クレイヴェルはすっかり雌になった兄の精神まで愛でた。
 かわいい、かわいい俺のお嫁さん。

「俺とずっと交尾してたいってこと?」
「うん……、ずっと、ずっとヴェルと交尾して、ヴェルのお嫁さんでいたい……」

 最初の時と比べたら、兄は自分から快感に身を寄せるようになった。
 真面目な人ほど、気持ちいい交尾に没頭するっていうしな。クレイヴェルはそう推測して、閨事にも勤勉な兄の体をゆっくりとゆすった。

「あは♡すっかり交尾大好きな雌になっちゃったねぇ、兄上♡」
「好き……♡ヴェルとする交尾好き……っ♡だって交尾してる時……♡ヴェルのお嫁さんになれるから……♡♡♡」

 くちゅり、とフォルスの雌穴から水音が漏れる。もうどちらが出した淫液かもわからぬそれは、クレイヴェルが男根を揺らせば、とろ、とろと溢れてベッドを濡らした。

「交尾してない時だって、兄上は俺のかわいいお嫁さんだよ」

 ほんのゆっくり、あやすような動きでクレイヴェルはフォルスの背中から揺らして攻める。

「ほん、と…….?」
「そうだよ。いつだって、兄上は俺の、かわいいかわいい、お嫁さん。どこにいたって、誰と話してたって、俺と一緒じゃない時も、ずっとずっと」

 ちゅう、ちゅう、とフォルスのうなじに吸い付いついて甘えて、クレイヴェルは兄で妻の、白い肌に痕をつけていく。

「政王として仕事してる時も、いつだって、兄上は俺のお嫁さんだよ」
「っぁ、あ……」

 フォルスの声が溶けて、その手が空を掻く。クレイヴェルがぎゅ、とその手を掴めば、縋るように湿った手で握り返される。
 甘えて甘えられて。そこには二人しかいなくて、クレイヴェルは心底から幸せだった。
 俺も、ずっと、ずっと、このままがいいよ。
 交尾すれば、兄上が、いっぱい甘えてくれて、甘やかしてくれるから。
 でも、交尾だけじゃ足りないんだ。
 兄上の全部全部、俺のものだよ。逃さない。

「繁殖期が来なくなっても、交尾出来なくなっても……死んで骨になっても、ずっとずーっと、俺のかわいいお嫁さん」
「え、あ……あっ……♡♡♡」

 きゅうう、とフォルスの中が締まって、クレイヴェルは息を詰めた。
 クレイヴェルは驚いた。それほど激しく揺すっていたわけではない。そろそろ兄から、いやらしいおねだりの言葉でも聞かせてくれるかな、とそれくらいに思っていた責めで、こんな。

「あ、にうえ、今の」
「…っは♡……あ、ぁ♡♡♡ヴェル…っ♡♡♡♡♡」

 明らかにフォルスは絶頂している。
 きゅう、きゅう、と何度もフォルスの中は収縮して、クレイヴェルの性器をしゃぶって震えている。

「言葉、だけで、イッたの」

 振り向いた兄の顔が、どっと紅潮して溶ける。

「……っ、うれ…っ♡♡♡嬉しくて‥…♡♡♡ヴェル、ヴェル……♡♡♡♡♡おれっ俺のこと……っ♡♡♡♡♡さいごのさいごまでっ♡♡♡お嫁さんにして、くれる、の……♡♡♡」

 ボロボロと泣いて微笑んだ兄に、ぎゅう、と胸が締め付けられる。
 兄が、本当に、本当に喜んでいるとわかったから。
 クレイヴェルの愛を、執着を、本当に嬉しいと。

「する、するよ……、俺、おれ……兄上のこと、大好き、だから……」
「うれ、うれ、し……♡ヴェル、ヴェル、俺も、おれも……すき、すき……♡」
「ほんと、に?」

 こくこくと頷くフォルスに、たまらずクレイヴェルはキスをした。後ろ向きの姿勢では口の奥まで舐めてやることが出来なくて、口の周りを唾液で汚しながらめちゃくちゃなキスをして、惜しみながら一度性器を抜くと、兄の体を仰向かせる。
 フォルスの腕が、クレイヴェルの首に回る。まるで熱烈な恋人同士のようなキスだ。キスの合間に、フォルスは好き、好き、と囁いて、自ら股を開いて、足を腰に絡ませてクレイヴェルを促した。
 たまらず兄の熟れた雌穴をまた塞いで、クレイヴェルはゆるゆると腰を動かした。
 しあわせで、どうにかしそう。

「っぁ、あ…っ♡ヴェル、ヴェル、また来てくれた…っ♡好き、好き…♡おれ、俺、いつでもヴェルのかわいいお嫁さんになるから……ずっと好きでいて……♡」
「ずっと、すきだよ、ずっとずっと、兄上のことが、好き、なんだ。好き………大好き……」

 返って来なくていいと思っていた愛で、恋で、醜い執着だった。
 兄が、義務として、公務として自分の妻であれば、それだけでいいと思っていた。真面目で勤勉な兄は、一度そうなればしかと役割を全うする男だと知っていたから。
 それだけでいい、と。ずっと側にいてくれればいい、と思っていた。
 けれど。
 この人、本当に俺のことが好きなんだ。
 交尾を盛り上げるためのリップサービスじゃなくて。本当に、心の底から。俺の、甘えきった欲望を、嬉しいと思ってくれるほど。
 ぼた、と流すつもりもないのに涙が溢れ出る。
 絶頂の耽溺からようやく抜け出たフォルスが、クレイヴェルの頬を撫でる。

「ヴェル……、ヴェル……?泣いてるの……」
「俺も、うれしくて……」

 本当に全部、兄が教えてくれた。
 人でいる方法を。
 恋をして、情けを乞うということを。
 そして、恋に応えてもらえる喜びを。
 
「……よしよし……、ヴェル、いいこ、いいこ……だいすきだよ、泣かないで……」

 ちゅう、ちゅ、と小さく音を立てながらフォルスがクレイヴェルの顔にキスをする。頭を撫でて、優しい声で、クレイヴェルが一番欲しいものをくれる。

「あは……うん、兄上、もっと俺のこと撫でて……」
「うん……、おいで、ヴェル……」

 クレイヴェルがフォルスの肩口に頭を埋めれば、フォルスは腕でクレイヴェルの頭を抱きしめて、額に、髪に、キスを落として撫でてくれる。
 俺の、俺の大好きな兄上。俺を、好きになってくれた、兄上。

「ヴェル、ヴェル、おれのかわいい弟」

 とろりと溶けた兄の声。その声は少年の頃の舌足らずにもよく似て、初恋の始まりを思い出す愛おしさで。

「かわいくて、がんばり屋で、かっこいい、おれの旦那様……」

 そうして、続いた言葉は、皇帝となった自分を支える皇妃で、閨では妖艶に甘える妻のもので。

「兄上、兄上……」

 たまらずクレイヴェルはフォルスの体に縋った。兄の柔らかな手が、クレイヴェルの髪を何度も撫でる。

「……フォルス」

 名を、呼ぶ。
 この世で一番大好きな名前を、呼ぶ。

「おれの、賢くて優しいおにいちゃん……」

 甘えて少年の頃の呼び方で呼べば、フォルスはふふ、と小さく笑った。

「おれの、えっちで、かわいくて、やさしいおかあさんみたいな、お嫁さん……」

 おかあさん、なんて幻想だ。クレイヴェルは母の顔すら知りもしない。
 ただ、幼い子どもを撫でて抱きしめる手の平に母性が宿るというなら、クレイヴェルにとって兄のそれだけがそうだった。

「ふふ、やさしいおかあさんなんて、俺たちよく知らないのにな……」

 兄だって同じだった。王でなければ価値がない、とまで兄を追い詰めた、兄を産んだ女がいるだけだ。

「はは、ほんとに。……でも、俺、もし産まれ変わるなら、兄上に産んで欲しいよ。兄上、俺のこと、産んでくれる?」
「……いいよ。だからちゃんと、まちがえずに俺の胎の中に来るんだぞ」
「うん。その時は、全部、入れて……」

 そうして繁殖期の最中、クレイヴェルもフォルスも一時の穏やかな眠りに落ちて、一人と一人は、まるで二体一対の双頭の竜のように魂の底から身を寄せ合った。




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