それ、どんなチケット?~売られたチケットは、50%オフでした~

ハル*

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それを、ざまぁという。



喜んでくれたならという感情が後押ししたのか、それとも呪いじゃないのかと予想していたのが合っていたのか。

その両方だったのか。

試した魔法は、きちんと発動が出来たようだ。

マンガでいうところの変身が解ける時のエフェクトが目の前で起き、ボフンという音とわずかな煙っぽいものがスノウのまわりに舞った。もうもうと立ち昇る煙が、スノウの今の姿を覆い隠している。

数秒後に煙っぽいそれが、サーッと引いていくかのように消えていく。

「……うわ」

スノウを隠すものが無くなったベッドの上に、裸の男が足を崩した格好で座っていた。

思わず、そんな声が出た俺。

俺の目の前には、自分の手のひらを見つめ、人の姿に戻ったことに驚くスノウなのだろう人物がいる。

ひとまずで壁にかかっていた長ったらしいパーカーみたいな服を取りに行き、彼に放り、着ろと伝える。

傷一つない、無駄に長い脚。腹が立つほどに長い。

そして、銀に近い白髪の長い髪。パチパチとまばたきを繰り返すその目は、やはり金とも黄色とも銀とも見えそうな不思議な色合い。光が当たらなきゃ、金が一番色合いとしては近そうだ。

まじまじと彼を観察すれば、蛇の獣人らしく手の甲には細かい鱗っぽい模様があり、目は瞳孔が縦になっているのが見える。

そこまで蛇に詳しくはないので、そんな瞳孔だったっけと首をかしげもしたが。

くっきり二重の、切れ長の目。薄めの唇は、ほんのりピンクに色づいている。

(わかりやすいくらいにイケメンだな)

俺の指先には、さっきまでスノウの尾に結ばれていたリボンがある。(元・呪いのリボン)とか書かれていそうな代物。

それを手のひらに乗せ、もう一度鑑定をかけてみた。

さっきまでは、『解けば、解ける』だけだったそれに。

「…ダメか。じゃあ、他の使えそうなのは」

鑑定をかけてみても、ただ”リボンとして使えるもの”としか表示されない。

現実的に、それで正解なんだろうけど。

「それじゃ、俺が納得できるはずがないんだっての」

解けた呪い。

それの仲介になっていた媒体。それがこの、何の変哲もないリボン。

魔女が着けたのか、どこぞの村の子どもが着けたのかが定かじゃないとしても、蛇の獣人のはずのスノウが人の姿になれなくなったアイテム。

物理的にも、間接的にも、彼を縛っていただろうリボン。

(分析と解析の違いってなんだったっけ)

それらしい項目があったなと思い出し、その違いを説明文なしで考えてみる。

分析って、分ける…とか見えるようにするもんだっけ。整理するっていうか。把握するためのもの、か?

解析はもっと、こう…細かいイメージがあるな。解析、解析……。解明の文字とも同じじゃなかったか?

こうなんじゃないかって明確にはせずとも、読み解くのは。

「解析の方?」

原因や理由を知るって意味合いでなら、解析の方でいいような気がしてきた。

「ま、間違っていても、困ることはなにもないしな」

ただの鑑定じゃ知り得ないことを、解析でなら文字として出てくることを期待して…っと。

リボンを手のひらに乗せ直し、それを反対の手の指先でそっと押さえて心の中で呟く。

このリボンを持っているだけでまたいつか何らかのキッカケで呪いの効果が出るような仕様なら、棄てるか燃やすか他の方法ででも処分した方がいい。

(スノウに同じことが二度と起きないためにも)

誰にだって、生きるための縛りは少ないに越したことはない。

アザーよりは信用できるという程度の付き合いかもしれなくても、俺のことを本気で心配してくれたスノウのためにと思えた。

そうして試しにかけてみた解析の結果はというと、目の前にあるリボンはただの紐と同じ扱いになっていた。

ただし、そうなる前のリボンの情報については、解析をしてみてよかったと思える内容が多々あり。

魔女の趣味嗜好だけが理由で、リボンに姿を固定する呪いにも近い魔法がかけられていた。現状は、解除済みだからいいんだけどな。

細っこいリボンに、よくもまあそんな仕掛けを施したもんだなと思いながら、指先でリボンを摘まみあげて目線の高さよりも高めに掲げ振ってみる。

「ただのリボンにしか見えないよな、マジで」

スノウが蛇の姿で眠っていた時に、その下に魔方陣を発動させ、魔方陣ごとリボンに吸収させて魔方陣をリボンの中に固定。

魔女以上の魔力と能力がある人物ではなければ、解くことは不可能だった。

(まあ、俺の魔力だなんだと、数値だけは∞ばっかりだし。その魔女がどの程度の奴か知らんけど、とにかく俺が上回った結果が解呪できたってことに繋がったんだな)

俺が元の世界での知識で記憶している範囲だと、呪いを解いた場合には呪いをかけた方に呪い返しみたいなもんがあった気がするんだよな。

呪い返しがなくとも、解呪したのが相手にバレたりするんじゃないのか?

「…ごめん。もしかしたらだけど、変態魔女…だっけ? その魔女に、姿が元に戻せたのが伝わったかもしれないよな。それって、スノウに都合悪いことだったりしないか?」

そのあたりもよく考えた上で、相手に伝わらない策を講じてから解呪すればよかったのかもしれない。

ポーッとしながら俺を見上げるスノウが、俺の話を聞いてどこかに行っていたっぽい意識を戻す。

「あ」

と言ったから、多分そうだと思う。

「…いろいろ大丈夫か?」

俺がそう問いかけたら、パカッと口を開けっぱなしていたスノウが口をキュッと結んでから、ゆるりと立ちあがる。

(長い脚だなとは思っていたが、俺よりも身長がかなり高いな。190くらいあるんじゃないか?)

俺が放り渡した服を羽織るだけで、前は開けっぱなしにしているスノウ。

「ちゃんと着ろよ、服。サイズが小さくても、前くらい閉められるだろ」

大事なところが丸見えだろうが。

親戚の子にしてやったように、服の前を閉めていろいろ見えていたものを隠す。

「ナギー」

俺の頭上から名前を呼ばれ、「なんだよ」と言いつつほぼ真上を見上げる。

マジでデカい。俺はというと、元の世界じゃ172くらいの身長はあったはずなんだが、この姿のスノウと比べてみると170はなさそうで。なので、彼の今の姿で顔を見るとなると、完全にことになるみたいだ。

「なんで」

主語、一切なし。

「何についてか、ちゃんと言え」

勝手に解釈して、会話をしたくない。

「いや。だって……俺…この姿に戻れるかもなんて、一言も」

その物言いに、リボンに自分の姿が戻れない秘密があったのを知っていたっぽい空気を感じた。

自力で戻せない。魔女以上の力がある対象者がいると思えない。現れるとも思っていなかった。ましてや、ただの魔法じゃなく呪いに近いそれを理解する誰かがいるとも。

「呪いって聞けば、嫌がる奴しかいないだろうなって……ところか?」

要約するとそんなところか? と腕を組み、俺を見下ろすスノウへとふんぞり返ってみせた。

「で? 魔女にはなんて言われてたんだよ。あの姿に変えられた後」

まずは情報の共有だ。さっき俺が謝ったことについて話が聞けそうにないのなら、先に聞き出せそうな方から手を付ける。

「解けるもんなら解いてみなさいよ、と」

どんな相手か知らんが、魔力や魔法に対して自信があったんだろうな。

「残念ながら、俺が解いたけどな。…ざまぁ」

ふふんと口角を上げて笑む俺に、スノウが呆気にとられた顔になって後でクシャッと表情を笑みに変えた。

「ざまぁって、何? すっごく楽しそうだな、ナギー」

ああ、そっか。この世界にない言葉なのか。

「ざまあみろってこと。相手の失敗をバカにするような時に使う言葉、って言ったらわかるか?」

端的に説明をすると、ふっ…と吹き出し、こぶしを口元にあてて小さく笑ってから。

「サイコーじゃん、その言葉」

そう言った。

「だろ?」

「会話しにくいからさ、ベッドに腰かけて話そうぜ」

「ああ、そうだな」

横並びにベッドに腰かけても、背の高さはありありとわかり。

「デカすぎだろ、スノウ。座っても、話しにくい」

「は? 文句多いな、ナギー」

「文句って文句じゃないだろ」

「でもよ」

「…スノウの方が文句多くないか」

「は?」

「なに」

「……別にー」

「なに」

「別に―」

「…なんだかなー」

他愛ない会話をしながら、このへんもやっぱりアザーの時とは違うなと知る。

チラッと横目でスノウを見てから、顔を正面に向け、呟く。

「ありがとな、スノウ」

と。

誰かを疑うのは苦手だけれど、スノウが見せてくれた態度で疑うことも自分を護ることにつながると知ったんだ。

なによりも、スノウが俺を護ろうとした上での行動と発言だったことも大きかった。

その経過が切なかったとしても、結果的に俺はスノウに命を救われたんだ。

「俺を生かそうとしてくれて、ありがとな」

だから、心をこめて伝える。

あの場所で死のうとしていた俺だけど、今、この場所には俺を生かそうとした存在がいたことに感謝したいと思いながら。




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